60.二人
三人分のお茶を淹れた金見さんは、それをお盆にのせ俺の部屋へ運んできた。
「勝手ながら台所つかわせてもらいました~......はい、葉月さん、と、真城さん」
寝床にある小さなテーブルへと手際よく置かれる緑茶とお菓子。
お菓子は和紙のような包み紙にくるまれていて、おそらく和菓子だろう。多分、金見さんが持ってきてくれたものだ。
「す、すみません、ありがとうございますね、金見さん」
「いえいえ」
「ごめんなさい、気をつかわせて......」
「大丈夫ですよ、葉月さんこそ気をつかわないで......ゆっくりしていてください」
「......」
雪がまるで借りてきた猫のように大人しい。やっぱり難しいかな。
......でも、あれだよな。こんな感じでよくイラストの練習とはいえ面識のない人のところへ習いに行けたな。本当に頑張ったんだな。
カチカチにかたまり、目が点になっている雪の横顔を眺めながら俺は微笑んだ。
それに気がついた雪は、「はっ!Σ(゜ロ゜)」とした顔になり、口パクで、「な.に.わ.ろ.て.ん.ね.ん!」と伝えてきた。
それが可愛くて余計に笑ってしまう。
普段、何気ない時に気がつく仕草の数々。
驚いた時に目を二、三回ぱちくりさせる仕草。嘘をついたときに明後日の方に視線を泳がす仕草。
その小さな、ほんの小さな仕草や挙動の数々が愛しく感じる。
「ふふっ」
金見さんが小さく笑った。
「あ、笑ってごめんなさい。 仲良いんだね、二人とも。 ふふっ」
「う、あう......」
「な、なんかすみません......」
は、恥ずかしいな。でも良いのか悪いのか、もうこれがフツーになってるからなぁ。
「ううん。 なんだか、いいなって思って......」
「え」
「......?」
話の飲み込めない俺と雪は不思議に金見さんの顔をみつめる。
すると彼女は雪へと体を向け、話しかけた。
「ねえ、真城さん。 私とお友達になってもらえませんか?」
「......ふぇ?」
突然のお友達申請に呆然とする雪。
「私ね、真城さんの事好きになっちゃった。 ダメですかね?」
「わ、わわ、私......こんなんですけど? まともに話とか出来ませんが! な、なんで、私なんかと......?」
「それはですね~、真城さんがとっても可愛いからです!」
成る程、それは確かに。雪は可愛い、それはこの世界の真理である。
みろよ、このキョドりまくってる彼女を。
マジで何しても可愛いんだよな、この人。
「か、可愛い!?」
「可愛いですよ」
「どこがですか! こんな挙動不審な女、キモいですよ!」
「キモくないですよ! 可愛いです! ね、葉月さん?」
急に振られて動揺する俺。
「は、はいっ! そういうびくびくしているところも、とっても可愛いです! 人見知り故の、恥ずかしがり屋さんな反応も見ていて護りたくなってしまう程の可愛さですね! あとは美形な顔だけど、子供っぽい性格な所も本当に可愛いく――むぐっ!?」
べらべらと滑るゆるゆるの俺の口に、雪が菓子を突っ込み黙らせた。
おい、何すんだよ!これからもっと可愛い所言おうと思ってたのによ!?
そんな事を思っていると、赤い顔した彼女がジロッと睨みをきかせてきた。
しまった!動揺しすぎたか!?
「ほーほー、成る程~。 うんうん」
「あ、そうだ」
俺は思い出す、この二人の共通の趣味を。
「雪、怪物狩人すきだろ?」
「? うん......」
「金見さんもプレイヤーだよ」
「え、そうなの......?」
雪が金見さんを見ると、頷いた。
「もしかして、真城さんも好きなんですか? 怪物狩人」
「好きです! いつも一樹と遊んでます!」
「ふふ、そうなんですね。 武器は何を使ってますか?」
「私はハンマーですね! ぶん殴ってます!」
「あはは、ぶん殴ってるんですか!」
「主に一樹をね! ぶっ飛んでくのが楽しい! へへ」
「!?」
どさくさに紛れて割りと吹き飛ばされるので、あながち間違いではないな。
あれはやはり狙ってたのか......雪、覚えてろよ。
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