58.雪と春
そもそも、雪を家に招いて良いのか?
若い女性が一人暮らしの男の部屋に訪れる。
いくらなんでも太一が心配するんじゃないんかな。うーん......。
『気持ちは嬉しいけど、太一が心配すると思うから。 俺は大丈夫だよ、ありがとう』
無難に、傷つけないように。
『そのお兄ちゃんも、一樹が心配だから行ってこいって言ってるんだけど』
お兄ちゃーーーーん!!
あなたシスコンでしたよね!?キャラ忘れたの!?
追撃とばかりに雪からのメッセージがきた。
『まあ、嫌ならいいけどさ』
え、あっ
『嫌じゃないです!!』
はっ、反射的に返してしまった!......う、うーん。
そして、後に退けなくなった俺は雪へ家の場所を教えたのだった。
でもまあ、せっかく来てくれるんだし......少しは頼っても良いかな。
とりあえず、玄関あけないとな......よっい、しょっ、と......いっっっっ!!!
がんばれ、おれ!
玄関の扉までなんとか辿り着いた。しかし、この移動ですらかなりの痛みを伴う。
これは、来てもらって正解だな......職場や病院にいた時は、気を張っていてなんとかなりそうに思えていたけど、これはかなりキツい。
鍵をあけ、よろよろと寝床に帰る。そのふらついた足取りは酔っ払いのようで、ちょっと笑えた。
雪さん、来るのか......迷惑かけちゃうけど、嬉しいな。
......なんか......眠気が
......すぅ......すぅ......
「――葉月さん、大丈夫ですか......?」
んむ......あれ、......おれ......
「葉月さん、大丈夫?」
「おはよう、ございます......ん? 金見さん?」
金見さんが何でいるの?......あれ、確かおれ......
「心配で来てみたら......玄関、開けっ放しでしたよ! 気をつけてくださいね! あ、ていうか勝手に家へ上がってしまってすみません」
「あ、いえ、それは良いんですけども......」
寝ぼけていた頭がゆっくりと覚醒していく。
おれ、玄関開けっ放しだったのか......なんで?
あっ
ピンポーン!
その答えに行き着いたと同時に、彼女の来訪を告げる音が鳴る。
......そっか、俺、雪さんに。
「あ、誰か来ましたね......私、対応しましょうか?」
って、この状況、不味くないか?
「あ、えーと......いや、えーと」
何もやましいことなんてない。けれど、彼女の目にはどう映る?
この男女二人がいる場を目の当たりにして、どう思うんだ?
これは、おれ、嫌われるかも......?
でも
「あの、お願いしても良いですか。 俺が来てとお願いした人なんで......」
「え、あ、そうだったんですね! わかりました」
扉が開かれた。
「一樹! 大丈夫? って、あ、あれ......?」
「あ......今晩は」
ここからじゃ声しか聞こえないけど、多分、びっくりさせてしまっているんだろうな。
「あの、金見さんありがとうございます! 雪、ごめんね、上がって!」
「......あ、う、うん......わかった」
そう言って俺のいる部屋へと来る雪。顔が強ばってる......多分人見知りを発動してるんだろう。
金見さんは金見さんで、目が点になっている。これは、ちょっとわからん。どういう気持ちなんだ......?
「えっと、雪、来てくれてありがとう。 こちら、俺の職場の同僚で、金見さん」
「あ、えっと......私、金見 春音です」
雪の方へ向き直る金見さん。雪は頷きはするも、緊張していて返事も出来ずに、目を合わせられないで下ばかり見ている。
「で、こちら俺の友達の真城さん」
「......ま、真城......雪、です......」
「真城さん......うん、よろしくお願いしますね」
「よ、よよ、よろしくお願いします......」
これは......果たしてこの空間で、雪のライフポイントは持つのか?
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