57.腰痛
――その時、俺の腰に稲妻が走った。
「――うぐっ!? がっ!!」
ドサッ
「え」
「......お?」
「は、葉月さん?」
配達車へと荷物を運びいれていた時にそれはおこった。
その運びいれていた荷物と言うのは、米25㎏。全部で二十袋あるのだが、十二袋目で腰が悲鳴をあげ、俺は崩れ落ち地面とハグ&キッスをした。
嘘だろ......このくらい、これまで何度もこなしてきたのに。
ぐあっ!?なんだ......この凄まじい痛みは......ぐうう。
「葉月さん!」
駆け寄ってくる金見さん。不安げに視線を寄越す彼女へ心配させまいと強がる。
「......だ、大丈夫......ちょっと休めば治ります」
「いや、大丈夫なわけないじゃないですか! 顔真っ青になってますよ!?」
いや大丈夫じゃないのはわかってるけど、配達あるんや。いっ......!!!
え、何じゃこら、ちょっと動こうと下半身に力を入れたら物凄い痛みが......!?
「......ぐっ、く」
死ぬ!!!痛すぎて死ぬ!!!
「とにかく病院いかないと」
「や、配達おわらさないと......仕事終わらせてから......」
「アホなこと言ってないでください!」
「......アホ」
「はい、私の肩使って! 移動しますよ! ゆっくり......ゆっくり」
「ご、ごめん......うぐっ、あっ」
けど、仕事が......。自分の身体が痛みでちぎれそうになっていると言うのに、そればかり考えてしまう。
全てが会社に染められ、「責任感」と言う綺麗な言葉を被せた、洗脳を施されている。例え、それに気がついても......どうにもならない。
「あの」
?
見ると女性社員が後ろに立っていた。
「あの、大丈夫ですから! 配達のフォローみんなでしときますから、心配しないでください」
え......。
するとまた他の誰かが声をあげた。
「うん、心配しないで病院いってきてください」
「気をつけてね~!」
「......あ、ありがとうございます」
痛みで頭が回らなかったが、おそらくこうして皆が助けてくれる環境になったのは、金見さんのおかげなんだろうなと、そう思った。
◆◇◆◇◆◇
金見さんが連絡してタクシーを呼んでくれた。病院を指定し、ゆっくりとシートへ乗せてくれる。マジで何から何まで......ありがたい。
「葉月さん、気をつけて! こちらはなんとでもなるので、気にしないでください!」
「......ごめんなさい、たくさん......色々してくれてありがとうございます」
「いえ、気にしないでください......では!」
そうして病院へと行き、ぎっくり腰だと診断を受けた。まあ、そうだとは思ったけど、しかしこれ程辛いとは......俺も歳かなぁと思った。
帰宅し、安静にしてはいるけれど、病院にいき処置をしてもらったからと言って、勿論すぐに痛みがひくというわけではない。
「......これ、ちゃんと治るんかな」
明日には、痛みがひいていれば良いんだけど。さすがに明日も仕事に穴をあけるわけにはいかないよな。
それにしても、職場の人達にあんな言葉をかけてもらえるなんてな。
嬉しかったけど、痛みでちゃんとありがとうが言えなかった。
明日あったらお礼言おう。
......そういや、槙村がからんで来ないな。今日、いたよな?
なんか怖いな。最近、独り言が多いような気もするし。
大丈夫か槙村......いや槙村の心配してる場合じゃないな。とりあえず、あれだ、今日はゲーム出来ないって雪にメッセージででも連絡しとこう。
心配させても悪いから、ぎっくり腰の事隠すか......いや、逆に隠すのもあれか?無駄に嘘なんかついても良いことないからな。
『こんにちは。 今日はちょっと腰を痛めてしまって、療養するからゲームできない。 ごめんね。 通話は出来るからね』
送って五秒後、すぐに返事がくる。
『まじで!? 大変じゃん! え、ご飯とかどーするの?』
あー、確かに......まあ買い置きのカップ麺でも食えば良いだろ。動くのキツいけど、それくらいは出来る。
『まあ、大丈夫。 心配してくれてありがとう』
雪が心配してくれていることに幸せを感じる。
『私、ごはんつくろーか? 良かったら、お家おしえて』
......え?
【とても大切なお知らせ】
少しでも面白い、先が気になる!もっと更新して!と思って頂けたら、広告の下にある
☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援していただけると励みになり執筆へのやる気につながります。
「評価まだ入れてないよ~」というかたがいらっしゃれば、良かったらお願いします!
ブックマークもと~っても嬉しいので、よければお願いします!
皆様、いつも読んでくれてありがとうございます!m(_ _)m




