配信 5. ある日の白雪ましろの配信 (白雪視点)
いつも通りのオープニングが終わり、画面には白雪 ましろがあらわれる。
『やほー、元気してた~?』
《――
《おす
《元気よ!
《やほ
《やほやほ~
《やっほい♪
《げんき
《――
『うんうん。 皆げんきそーで何よりだ! でも最近まじで寒くなってきたから、風邪気を付けてね。 インフルちゃんとか要注意だよ~』
《――
《がってん!
《あーね
《インフルも風邪もこわいよね
《ましろも気をつけてね
《――
『おー、ありがとう! 私も気をつけるよ! っと、そーしーたーら~......ちょっと、待ってね。 背景かえるから』
現れた背景は雪降る町。ましろの背には大きな一つの樹があり、クリスマスチックに飾り付けられている。
いわゆるクリスマスツリーというやつだ。
《――
《今日歌の日か
《お、背景クリスマスやん
《歌やったー
《なに歌うん?
《クリスマスソングか
《わくわく
《――
『うん、歌わくだからねい! さーて、オープニング曲は』
アップテンポなメロディが流れ出す
『《流星のダンス》だ~! いっくよ~』
《――
《おおお
《これ好き
《いいねいいね
《おどれおどれー!
《――
『♪~叶えてはまた次の~新しい物語~♪ ♪~終わりの無い夢をのせて~かけてゆく~♪』
《――
《かけてゆくー
《かけてゆく~!
《かけてゆくーーーー
《かけてゆく
《かけてゆく♪
《――
皆のコメントが流れる星のように上から下へと落ちて行く。
ひとつの物をつくる。
それは、作曲者と歌い手、演奏者......そして、一番大切な観客が織り成すことで生まれる、奇跡。
違う誰かではダメで、この場に居てくれる、この皆じゃなきゃ完成しない。
――だから、私は今日のライブも、ひとつひとつの曲に全力をこめるのだ。
想いが想いのまま消えぬように、彼女、彼らがいつまでも......この世界で己を肯定して戦えるように。
勇気を、愛を、幸せを、悲劇、悪夢、ありとあらゆる歌を歌おう。
私は、白雪 ましろ。
VTuber界No.1とうたわれた歌姫。
皆がいる限り、私は負けない。皆の存在が、私の歌に色をくれる。
『みんな! 輝いてるよーーーーー!!!!』
《――
《うめえええ
《いいねえ
《おおおお
《めっちゃうまいww
《ましろおおおお
《すげえええ
《8888888
《ましろーーーー
《だれがはげじゃああああ
《ましろ上手すぎww
《888888888
《――
『次いっくよーーー! 《あなたの心に溶けた雪》』
先ほどのアップテンポな曲とは変わり、ピアノの前奏が静かに始まる。
ゆっくりと進む音の運びに、溶けるようにましろの声がのせられた。
『♪~他の誰でもない~君の色~♪ ♪~悲しみとも喜びとも似たその時を迎える~♪ ♪~ああ、その時の為に私は叫び続けるのだろう~♪』
一滴の水のような命が、世界を巡りやがて運命とも言える出逢いを迎える。
そしてまた世界へと還って逝く。
けれど、悲しみも喜びも......やがてふたりと共に一つに溶けるのなら、またこの世界で二人は出逢える。
そんなバラード曲だ。
『聴いてくれて、ありがとー!!』
《――
《うまい
《すげえww
《88888
《歌唱力おばけ
《感動した
《好きだ
《88888888
《泣いた
《88888888
《8888
《綺麗な歌声ありがとー
《――
『こちらこそ! ほんとーにありがとー!! あとさっき誰がはげじゃああああって言ってたけど君のハゲにはひとつも触れてないから!! あははは』
二つ目の曲にして、盛り上がりは最高潮。
そして、この後アニメ、ボカロの曲を三つ立て続けに歌う。
白雪 ましろの歌声は静かなバラードから激しいロック、色々なタイプの歌にあわせられる。
これは、ほとんど人に誇れる事がない私が唯一胸を張り、がんばりました!と言えるアピールポイントなのだ。
『まだまだいっくよーーー!!!!』
《――
《うおおおおお
《まだまだ足りない!
《いえーい
《おーーーー
《よっしゃ
《がんばれーー
《おおおおおおおおおお
《――
白雪 ましろ、彼女の歌声は彼らの世界へと響く。
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