55.幼なじみ練習
突如始まった幼なじみ練習。
幼なじみの練習って、何するの?そう聞いた俺に太一は、「お前の持つ幼なじみ像を体現するんだ......そうすれば道は拓かれる」といっていた。
もうね、びっくりするくらい意味わかんない。体現て......それはつまり、どうするんだ?
まあ、練習を持ちかけた雪さんならば何かしらの答えを持っているに違いない。
彼女の出方をみてからだな。
ふと目があった雪さんは恥ずかしそうに目をそらし、うつむく。
そして小さな声で呟くように、俺へと話しかけた。
「......えっと、ああ、うん。 か、かか、一樹!」
呼び捨て!?あ、そうか、幼なじみ設定だからな。焦った......。
「な、なに? 雪さん......じゃないや、ゆ、ゆゆ、雪」
「はっはっは! 雪も一樹もマジうけるんだけどww」
いや、これは......結構キツいぞ!?まず雪さんなのがハードル高すぎる。
ただでさえ、俺は雪さんを好きで意識してしまうのに。
名前を呼び捨てしかまだしていない、が、緊張で手に汗が......手?
――先ほどの雪さんとの外でのやり取りが思い起こされる。抱きしめ、頭を撫で、手を握り、歩いたこと。
頭から、ボッ!と湯気があがったような音が出た(気がした)
「ええっ!?」
「一樹!?」
あまりの恥ずかしさと喜びに、精神が焼かれ、ダウンしてしまう。
机にそのまま突っ伏し、回復をはかる。
「だ、大丈夫......ちょっと待って」
「お、おう」
「うん、ごめんね......」
あ、いや、別に雪さんが謝る事でもないけど。俺が勝手に思い出してくらくらしてるだけだし。
けど、これは......先が思いやられるな。
「やっぱりやめよっか。 一樹さんの負担になっちゃうよ、これ」
「え......」
「お?」
「だって、一樹さんがもしこれでお仕事とかに支障がでちゃったら大変でしょ? 今なんて忙しい時期って話だったし」
雪さんはちょっと良い子すぎますねえ。こんなに俺の事考えてくれて......けど。
「あ、いや、待って......これはその、別、そう別なんだ」
「別?」
「......?」
「と、とにかく! 俺と太一が提案した幼なじみ設定なんだから、大丈夫だよ、ちゃんと頑張るから!」
「で、でも......」
「雪、一樹が頑張るって言ってるぞ」
雪さんが俺の目を不安げに見つめる。そして
「......うん、わかったよ。 一緒に頑張ろうね!」
「ああ、一緒に......頑張ろう、雪」
雪はきょとんとした後、すぐに笑顔を咲かせこういった。
「うん、一樹!」
それから、数日後。
「――あー! やっちゃったぁ」
「おおお!?」
「一樹、ちょっと殴りすぎ」
「いや雪こそもうちょい部位破壊狙ってよ。 無駄にHPけずれてるんじゃん」
「むむ!」
「ぬ!?」
俺と雪は怪物狩人をしていた。このクエストは怪物を攻撃し、弱らせて捕獲するというもの。
明確な捕獲ラインが見えないので、あまり攻撃しすぎると怪物を捕獲する前に倒してしまう。
しかし、角を攻撃し続けて折る等の部位破壊をすることにより、報酬である怪物の素材が多く手にはいる事から、それも重要でもあったりする。
「一樹がいけないんじゃん!」
「いや、雪だろ!」
「だって、一樹がもっと狙う場所教えてくれないからだもん!」
「それは、教えたら雪も同じとこ殴るだろ! ヘイト散らしたほうが良いだろ!」
「だ、だって......」
「?」
「一緒に居たいんだもん」
「がはっっっっっ!!!!!」
ディアクロスの突進よりも、ブラキィオッスの痛烈な拳よりも、もしかしたらネオ・テスカロルのスーパーノヴァよりも破壊力があるかもしれない攻撃が俺へ直撃した。
「......ぐ、ぐふ......さすが雪」
「ふふん! どう一樹、きゅんってした?」
「......し、しました」
バタリ
「か、一樹!?」
この幼なじみ練習が終わる頃に、俺は果たして生きていられるのか。
てか、これただのカップルじゃね?
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