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【完結】陰キャデブな社畜、知らぬ間に美少女VTuberを救う。   作者: カミトイチ《SSSランクダンジョン〜コミック⑥巻発売中!》


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51.寒さと

 


 ――白い結晶が、目の前に落ちる。


 ああ、道理で。めちゃくちゃ寒いと思ったわ。


「......雪さん、これ」


 部屋を出るとき持ってきた雪さんのマフラー。


「......ありがとう」


 ん......あれ、もしかして泣いてたのか?目が赤い。

 いや、雪さんの気持ちを考えれば、泣きたくもなるか。



 ~家を出る前~



「雪さん......どこに」


 俺は部屋をきょろきょろ見渡していたが、家に居ないことは何となく察していた。


 あれだけ感情的になってる彼女を見るのは初めてだ。


「一樹」

「......!」


 頭を抱えガタガタ震えていた太一が、落ち着きを取り戻し隣に立っていた。

 まるで何事もなかったかのような、涼しげな表情。


「雪はなぜあれほど感情的になったと思う?」

「え......なぜって、俺と太一が仲良くしてたからでしょ?」

「そうだが、それがなぜ雪を激昂させたか」

「それは、仲間外れに思えたからとか......違うの?」


「まあ、それもあるだろう」


 それも?他に何かあるってことか......


「おそらく長年あいつの兄妹をやってる俺の予想では、このケンカは一樹にしか解決できない」

「おれ!?」

「そうだ。 これはハッキリいって俺は関係ないまであるからな。 多分」

「......太一が関係ない(いや、関係はあるような)」

「とりあえず、雪おっかけてくんない? 部屋にマフラーあるはずだから、それもってさ。 雪の部屋、そこな」


 太一が指を指し示す。


「わかった。 って、部屋入っていいの!?」


 にこっと笑う太一。太一が取って来てくれれば良いんじゃ?と思っていると、彼は言葉をついだ。


「いいよ。 むしろ見るべきだ、雪の部屋を」


 本当に良いのかと、扉の前でためらう。


 雪さんの......部屋。勝手に入ったりして嫌われないか?これ以上嫌われたら、俺はもう、辛すぎておかしくなりそう。


「はよせーよ!!」

「あ」


 ――ガラッ!と太一が扉を一息で開けてしまう。


 雪さんの部屋は、全体的に白とピンクを基調としたシンプルな感じだった。

 ベッドの大きなぬいぐるみと、本棚には沢山の漫画とラノベ。いたって普通の女の子の部屋だ(良い匂いする)。


 しかし、PCがある机。そこがすんごい事になっていた。

 おそらく見るべきって言うのはこれの事だろう。


「......これは」

「うむ。 凄まじい資料の数だろ」


 人の模型や、植物図鑑、動物......分厚い本に囲まれ、付箋が至るところにはられ、おそらくはPCにだって詰め込まれているであろう、資料データ。


 これは彼女の努力の跡......しかも、これは多分ほんの一部に過ぎない。

 PCの中には、練習で描いたような膨大なイラストがあることをそれらは容易に想像させた。


「そうか」

「......」

「俺、わかってるつもりだったのかも......雪さんがしてきた事」

「ああ。 でも、仕方ない部分はあるだろ。 一樹は一樹で忙しかったからな」

「それは、理由にはならない......」


 だって、だってそうだろ。


 俺の小説だぞ?俺が彼女に描いてほしくて、こんなに頑張って貰ったんだよ。


 なのに、俺は彼女に、雪さんに何かできていたか?



 そうだ、俺......知らないうちに、甘えていたんだ。


 いつも明るく照らしてくれる彼女に。


 寄り添ってくれる、ひだまりのような暖かな雪に。



「......太一」

「ん」

「俺、迎えにいく......どれ、雪さんのマフラー」

「あれ。 掛かってるやつ」

「ありがとう。 ちょっと行ってきます」


「うん。 頼んだぞ、一樹」




 ~



 くちもとを押さえ、俺が持ってきたマフラーを受けとる。


 さっきの一件で気まずいのか、視線を合わそうとしない。


 けれど、潤んだ瞳と寒さに赤く染まる頬。そんな場合ではないけど、やっぱり雪さんは綺麗だなと思った。


「雪さん、ごめんね」


「......なに。 なにが」


 努力に気がつかなくて?......違うな。それは見えていたハズだ。あれほどの成果をあげて、イラストの上達速度に見た目の技術力があって気がつかないなんてない。


 つまり、俺の鈍感さ......ひいては無神経な所を謝るべきなのか、本当は。


 なぜもっと、ありがとうの気持ちを形にしなかったんだ。


「......えっと、俺」


「いいよ。 私が子供だったの......変な空気にしてごめんなさい」


 強がる彼女に、かけれる言葉が見つからない。口が動かない......何も言えない。






「へっ!? え、え?」

「――あ」


 気がつけば、雪さんを感情のままに抱き締めていた。





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