6.VTuber白雪ましろ
VTuber、白雪ましろ。俺の小説ラストファンタジアを宣伝してくれたであろう、彼女を動画サイトで検索してみた。
すると、とんでもない事が発覚する。
「えーと、この人だよな......白髪猫耳。 すげー可愛い」
白雪さんのホームを開くと、背景やサムネイルに目のとろんとした愛らしい猫耳少女がずらっと出現した。
「おお、めっちゃ動画あげてる......とりあえず何か見てみるか」
再生リストをクリック。歌枠、オリジナル曲、雑談アーカイブ......え、ボカロPでもあるのか!しかもこの名前見たことあるな。おなかすいたP。多才なんだなぁ。すげえ。
そして下へとスクロールしていくと、気がついた。まず視るならこれだな。
再生リスト、「ラノベ朗読」1。中にあった作品はまだ俺の「ラストファンタジア」しか無かった。
「......まじでか。 89話まである」
1話あたりの分量は2000から3000文字。けれど、これだけの話数を朗読するとなると、とんでもない時間がかかるぞ。
サムネイルはファンタジー要素を取り入れた感じのもので、ラストファンタジアのキャラクターと思われるディフォルメされたノア達が可愛らしく描かれている。
そのいずれもが俺の想像していた通りの姿で思わず涙が溢れた。
自分のキャラクターがイラストになるってこんなに嬉しいものなのか......つーか絵上手すぎでしょ。白雪さんが描いたのか?だとしたらまじで才能の塊だな。小説ひとつでしっくはっくしている俺とは天と地の差。まさに雲の上の人。
とりあえず、1話見てみよう。
動画を開くとBGMが流れ出した。
「......これはフリーの曲だよね? まさか自作の曲あててないよな?」
そんな訳無いのに口にだして確認をしてしまう。ボカロPで作曲もしているとわかっていたからか、妙にどきどきしてしまう。
俺の小説にイラストと更に自作の音楽までつけてくれたのか?と。
『――ここは荒れ果てた辺境の地』
え?
『全ての民は、突如としてあらわれた紅い月に困惑した』
この声は......!
続くその可愛らしいくも力のある声音に心臓がどっどっと激しくなる。やべえ血圧が......!
なんてボケてる場合じゃない。この人の声、すげえ!
一つ一つの言葉が、からだ全体に染み込む!地文とセリフの発声も全然違う!
『......僕は、必ず取り戻して見せるよ』
小説の主人公、ノアが――
『例え、この世界の果てに有ったとしても!!』
生きている!
彼女の力によって、命が吹き込まれていた。
BGMが激しくなる。クライマックスだ。1話から始まる俺の小説は読みやすく短めの文字数で投稿されている。だから1話ごとに起承転結はしない。
けれど、この動画は違った。1話から2話に続く。おそらくキリの良いところまで収録されている。
「話の流れをちゃんと理解してくれてる......綺麗に物語として流れてく」
しかし、この白雪ましろさんの声......本当にすごい。人の心を惹く魅力がある。
こんな......これ程に、声だけで人の心を掴める人がいるのか。
ちらっりと登録者数が目にはいる。
登録者数143万か、なるほど。
え?
1430000!!!!!?
まじでか!?い、いや、この白雪さんの力なら納得はできる......けれど、理解できないのは何故俺の小説を朗読しているのか、だ。
嬉しい。それに本当に感謝している。けれどなんで俺の小説なんだ?
なろう小説は高い評価を受けている小説が多くある。俺の小説はその中に埋もれている底辺中の底辺だったはずだ。
......スコッパー?
なんにせよお礼が言いたい。この動画をみた今、その気持ちが大きくなっている。どうやってこれを伝えたら......良いんだろう。
T☆itter......とか?
あ、ある。彼女のT☆itter。これでダイレクトメールとか送ったら良いのかな?うーん他に思い付かん。
......。
てか、なんて書けば良いんだろ。えーと、まずは初めまして、かな?
「......なんだろすげー緊張すんだけど。 お礼言うだけなのに」
あれだけ小説で文字を打ってきた指が動かない。まるで方向を見失って動けない船のように、思考がゆらゆらする。
感謝を伝える......感謝、感謝。どうすれば伝わる?想いを込めて打ち込むのは勿論、何かそれとプラスになるもの無いかな。
......よし。
◆◇◆◇◆◇
メッセージを送った翌日、出勤前。俺は白雪ましろさんからの返事がきている事に気がついた。
【大切なお知らせ】
少しでも面白い、先が気になる!続きはよ!と思って頂けたら、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると励みになり、喜びむせび泣きます。
ブックマークもよろしくお願いします!