48.雪さん
「――てな訳で、ラブコメのジャンルが何が良いかなと......真城(兄)さん、どういうのが良いかとかありますか?」
真城(妹)さんはきっとイラスト関係で鬼のように忙しいだろうから、お兄さんの方へ連絡をしてみた。
するとめちゃくちゃ喜ばれ、雑談が盛り上がり三十分たった今、やっと本題へと移ることができた。
『ふむふむ。 やはり、妹一択でしょう!』
さすが!予想していた通りの返答で逆に安心したぜ!
「妹ものですか」
『あ、いや、冗談ですよ。 流石にそれをお願いしたら妹に嫌われそうですからね! はっはっは』
線引きが確りしてる!流石やで。
『ところで......葉月さん、思ったのですが、あ、また少しだけ話が逸れてしまいますが、よろしいですかね。 大切な事なので』
「? ......大丈夫ですよ、なんですか?」
『えーと、まず、我々兄妹をどちらとも真城で呼ぶのは大変ではないですか?』
ああ、その事か!確かに二人とも真城さんで統一してたな。下の名前呼ぶのとか恥ずかしいんだもんっ(きもい)。
「あー、なるほど。 ......じゃあ、お兄さん?と、お呼びした方が良いですか?」
『それでも良いのですが......まあ、どちらかと言うと妹の事ですよね~』
「えっと、それでは妹さんは、妹さんで良いですかね」
『いや~、それは良くないですね~』
なんで!?
『いや、ほら、妹はさ......ね、わかるでしょ? あなたのことを、ね? ふふ』
なんかムカつく!?
「えーと、つまりはどうすれば?」
『わからないんですか!?』
「わからないです」
『あーもー!! 名前で呼んでよ! 雪って呼んであげてよ!!!』
「え!?」
え、とは驚いたものの、何となく予想はできた。つーかこれで言わんとしてる事が理解出来なかったら、鈍感キングだな。
でもさー、さっきも言ったけど、下の名前呼ぶの恥ずかしいでしょうよ。
それでもし、『は? 何お前、ちょーし乗ってるなぁ? しばいたろか!?』ってなったら俺は二度と真城(妹)さんと遊べなくなるぞ。
この真城(兄)さんならそれがご褒美になるかもしれないけれど......
「――ご褒美になるかもしれないけれど......え?」
『え?』
「あ、いや(あれ、今の口に出て......いや、そんなわけないよな)」
『いや、まあ確かに俺ならそれはご褒美として受け取れるけれど』
「あ......俺、なんか言ってました?」
『え、だから、その罵倒が俺のご褒美になるって話でしょ? 唐突に言われたからビックリしましたが』
口にでてーら!!
やべえ、めちゃくちゃ失礼な事言ってる!!早く謝って許してもらわなければ......!
「......あの、すみませんでした。 決して本心では」
『良いですよ。 普段の俺の言動的にそういう風に思われても仕方がないですから......でも』
「す、すみません......ん、でも? なんです?」
『さっきの話なんですが、妹の呼び名......雪と呼んであげて貰えませんか?』
ぐぐぐぐぐぐ......い、いや、流石にそれはハードルが高い!
「そ、それは......ちょっと、恥ずかしさで死んでしまう可能性が出てきますからね。 う、うーん」
『そう、ですか......』
声から明らかに元気が抜け出ている。けれど、俺もひけねえ......流石にそれは、ねえ?
『あ!』
あ?って、......どうしたんだ?
『......わかりました。 では、本人に直接は良いです。 まずは練習ということで、どうでしょう? 雪と口に出してみてもらえないですか』
練習、練習......まあ、確かにそんな日が来ることを望んでいるのも事実。なら、口に出してみるくらいなら、まあ。
「わ、わかりました」
......。
......。
『どうしました』
「えっと......」
『さあ』
......。
......。
――いや、緊張するんだけど!!これはマジで難しいかもしらん!!
『よし、ではカウントでいきますか? このままだと時間だけ過ぎていきそうだし......いいですか?』
確かに、時間がおしい!それで済むなら済ませて、本題のコミケの話がしたい!ってか、そーだよ、俺コミケの小説の話をしに通話してるんだった!なんでこうなった!!!!
『では。 スリー......ツー......』
ゴクリと喉がなる。いや、練習やぞ?これ、いずれは本人にいうんやぞ?
覚悟を決めろ......言え!!
『ワンッ......はい!』
「雪......!!」
よし、いえた!いえたじゃねえか!!!
『......』
ん?なんで無言......兄者?どーしたのお兄ちゃん?
『......えと、はい』
え!? あ、あれ......この声って......
「あれ、えっと」
『ゆ、雪、です。 なに葉月さん......?』
通話口の向こう。そこにいたのはまごうことなき妹の真城雪さんだった。
これは、あれか。成る程......ね。
「雪さん、お兄さんとかわって?」
『う、うん......わかった』
『はい、真城兄でございます! ぷぷっ』
「てめええええっ!!! はめやがったなああーッ!!?」
『あっはっはー!!! マジうけるー!!! はははwww』
この日以来、真城(兄)とはお互いタメ口で話すようになった。
【とても大切なお知らせ】
少しでも面白い、先が気になる!はやく続きみたい!と思って頂けたら、下にある
☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援していただけるととてつもなく励みになり執筆へのやる気につながります。
ブックマークもとてつもなく嬉しいので、是非お願いします!
皆様、いつも読んでくれてありがとうございます!心から感謝してます!




