5.色づく景色
「......うそ?」
帰宅し、風呂に入りながら思い返す。俺の小説の詳細ページ。
昨日まで二桁のブックマークだったはずだぞ?バグったのか?
確か、あれだよな......前に調べた時に何かに書いてあった。ブクマと評価、つまりポイントを伸ばすのには初動にどれだけ稼げるかが勝負なんだと。いかに総合ランキングへ入るか。
勿論、俺の作品は初動でランキングになんか入れなかったし、今の話数も既に120話にまでのぼる。連載期間も一年が過ぎ、ブクマも評価も動きが鈍くなり、もうこれがランキングに載るなんて事は無いな~と思い始めていた。
それがどうだ?ブクマはあれからまた更に増え、9238!書籍化の目安とされている10000へと届きそうな数字を叩きだしている。
「いや、てかこんだけポイント稼いでいるなら総合ランキングにも入ってるんじゃ!?」
風呂を後にし、スマホでランキングページをみる。
ある!す、すごい、日間総合ランキング4位?......やべえ。くそっ、伸ばしっぱなしの髪先が目にかかり邪魔だ。
「でも、これは......くるんじゃないのか!?書籍化の打診が!出版社から!!」
仕事で疲れているはずなのにどんどん元気が湧いてくる。寝ないでそのまま明日の仕事へ行けそうな勢いである。寝るけど。いや、寝れないかも。
何度も何度も自分の小説、『ラストファンタジア ~ノアの旅~』のページを見る。見るたびに、更新時に増加していくブクマと評価、そして誤字報告に感想。
とまらないのは自身の心の奥から涌き出る読者への感謝の気持ちと書籍化できるのでは?という、かつて諦めた夢へのワクワクする期待感。それと共に知る自分の誤字の多さ。
そして、ふと気になったことがあった。今、テーブルに置いた俺のメモ帳。
これは槙村が捨てたと言っていた物だ。しかし、仕事を終え更衣室へと向かうと小さな袋に入ったこのメモ帳がロッカーの上に置いてあった。地味に気になっていた汚れも綺麗にしてくれている。
槙村がゴミ箱へと捨てたのは本当だと思う。それは間違いない......前も会社で弁当をとって社員全員で食べていたとき、少し離席してかえってくると食べかけの弁当が捨てられていた事があった。あの時も槙村が捨てておいたよ?と言っていた。
だからこんなメモ帳くらい普通に捨てると思う。
いや、今はそこじゃなくて、誰が拾って戻してくれたのか。会社の人間だとは思うんだが。......まさか幽霊?なんて。
「......誰か知らないけど、お礼がしたいな」
お礼......あ!
感想に返事しなきゃ!スマホを素早く操作する。感想ページを眺める。
皆......応援の感想ばかりだ。こんな俺の小説が、こんなに感想書いて貰って。ああ、また......くそ、涙腺が弱くて嫌になる!けど、温かいなぁ。この温もりで安眠できそう。
たくさんの人に読まれるのは少し恥ずかしいけど、それでも俺の産み出したノアやキャラクター達が多くの人に見て貰えてることが、ただただ嬉しかった。
今、本当に幸せだ。そしてここが俺の人生のピークかもな。
するすると感想を見直す。一つ一つ返信し、読んでくれた人と心を通わす。
ちょくちょく、アドバイスやちょっと厳しい事を書かれているものもあって、反射的に拒否しようとしてしまう。けれど、よくよく考えてみれば良いアイデアだったり、指摘も的を射ていたりする。
勿論全てを鵜呑みには出来ないけど、ありがたく貰っておこう。
だって、これ俺の物語を読んでくれてる確かな証だし、それだけで幸福な気持ちになる。
甘いも苦いも今の俺には全部......生きる力に、気力になる宝物だ。
「皆が俺の話を読んでくれている......嬉しいな。 本当に」
......てか、感想で結構みるこの、白雪ましろさんて誰だろ?
大体の人が白雪ましろさんが動画を出していたので読みに来たとかって書いている。配信でも言っていたと。
配信......配信者?そっちには疎いからな。でも俺の小説がこれ程伸びたのは間違いなくその白雪ましろさんのお陰だろう。ほとんどの人が動画見たと言ってるし。
どうにかお礼を言いたい。......動画サイトで検索すればわかるのかな?
『白雪ましろ』
検索っと。
カチッ
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