38.本気の本気 (真城雪視点)
「――てなわけなんだけど......お兄ちゃん、どうしたらいいと思う?」
葉月さんの書籍化にあたり、私が絵師をもしかしたら、担当することになるかもしれないと、お兄ちゃんにはいってあった。
お兄ちゃんは「そんな簡単にはいかないだろうな」と言っていたがまあ、その通りだった。
しかし、担当の白田さんと言う方から提示された条件、イラストのレベルをあげろ!を実現できれば、あくまで可能性の範疇ではあるが、私が葉月さんのイラストを描くという夢が叶う。
今、その条件の話をお兄ちゃんにしたところだった。
「......無理だろうな」
ですよね。
「あー......」
と、私が説得に転じようとした時、あれほど「VTuberをしっかりやれ」と言っていたお兄ちゃんとは思えない、意外な事を言い始めた。
「まず1ヶ月でお前の技術力をあげるというのが難しい。 その上お前にはVTuberの仕事もある......だから無理、だ。 しかし......」
にっと笑うお兄ちゃん。この顔は......何か策がある顔!
「俺が協力すれば、お前の人気をほぼ落とさず、イラストの練習もすることが可能だ!」
まじ!?
「え、いいの......だいぶ自分勝手なことだと思うんだけど」
「そうでもないさ。 葉月さんには沢山、助けられているからな。 恩をかえすってわけでもないが、俺もやれるはやりたいだけだ」
そうか、確かに。葉月さんにはいっぱい私もお兄ちゃんも助けてもらってるんだ。なにかしたいって気持ちは私だけじゃない。
「とりあえず、雪、お前はこれからイラストの練習にはいれ」
「うん......わかった」
にっと、笑うお兄ちゃんに私も笑顔をかえす。
「それと、お前はこれから、月、水、土の夜に配信をしろ。 イラストの練習で忙しいときは最悪水曜日は休んで。 俺の知り合いにラノベイラストも担当したことがある絵師がいる......そいつに連絡してやるから修行してこい」
えええ、まじで!?
「えええ、そんな都合の良い話あるの......?」
「ある。 ......ちなみにそいつは女だが気が強い。 頑張れよ」
え、なまらこええ。お兄ちゃん私の人見知りな性格忘れとらんよね?
......いや、違う。忘れてるとかじゃない、本気でなんとかしようとしてくれているんだ。
「わかった、ありがとう。 でも、VTuberの方、それだけの配信じゃ登録者数減るよ、絶対。 いったい何やる気なの?」
ふふん、と眼鏡をあげるお兄ちゃん。得意げだ。
「俺は今仕事が長期の休みに入ったからな。 時間があるからやれる手法、そして兄である俺だから培えたセンス......それで勝負する、つまり......」
「つまり......?」
「切り抜きだ!」
切り抜き!そっか、成る程......!
生配信では様々なハプニングや奇跡的な笑いが生まれる。その場面を切り取り、その面白い部分だけをショートの動画にしてアップする動画の事を切り抜きという。
そして、それをたくさんアップしてるプロ達の事を「切り抜き師」という!
お兄ちゃんは切り抜き師になるのか!
「これなら、やりようによってはお前の好感度をあげつつ登録者数を増やすこともできる。 そしてお前を間近で見てきた俺ならではの視点が加わり、他の切り抜き師とはまた違ったテイストで人気をだせるというわけなのさ! あと配信日の合間の繋ぎにもなるし」
「な、成る程ー!!」
さすがお兄ちゃん!
「でも......私、出きるかな、イラストのレベルをこの短期間であげるなんて」
技術力を磨くというのは、本当に時間がかかるしかなりの根気がいる。
VTuberをここまでやってきた私にはわかる。それが簡単に叶う事ではないこと。
「雪、お前はなんで葉月さんのイラストを担当したいんだ?」
理由......。
「私は......でも」
失敗したら、ラストファンタジアの売上にも影響があるはずだ。
「怖いのは皆おなじだ。 それに、今一番不安なのは葉月さんだ......支えてあげなくて良いのか?」
たしかに。葉月さんは私の比じゃない程の重圧に......そうだ、だから私は。
「......支えたい。 頑張る」
お兄ちゃんは笑顔でうなずいた。
「お兄ちゃん、絵師さんと話をさせてほしいんだけど......いいかな」
「......!」
絶対に条件はクリアしてみせる。そして、私は葉月さんを支える。その隣で、ずっと!
絵師になって本気出す!
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