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4.革命

 


「葉月、おまえさー、配達の荷物忘れてったらダメだろう。 これだから使えないお間抜け眼鏡おデブちゃんは......はあ」


 言葉が過ぎるぞ!眼鏡デブではあるが、お間抜けってお前の事じゃないのか?

 それ槙村、お前が出し忘れた荷物だろ。


「......」

「いや、だんまりかーい! まあ良いや、とりあえず行ってきてくれよ。 悪いけどさ」


 槙村は自分のミスがあって仕事を押っつけるときは若干の良心が働くのかこうして地味にへりくだる。それが逆にまたムカつくんだけれど。言い争いしても意味がないし、時間も勿体ない......仕方ない行くか。って、完全に時間指定過ぎてるもんばっかだし。


 ん、そういや他の配達員は?あれ?まさか帰った......?


 すると帰宅準備を終えた様子の女性二人が更衣室から出てきた。なんというタイミングだ......いや、てか俺の配達応援なしかいッ!!


「いやぁ、本当に槙村さん応援していただいてありがとうございました! こんなに早く帰れるなんて」

「ねー! 流石槙村さん! 配達もできちゃうなんて!」

「ははっ、配達大変なの朝から知ってたからね。 手伝うのは当然だよ~」


 ......え?


 目の前で起こっているこれは果たして現実なのか?ここまでなのか、俺の勤めてる会社は。

 これどこに言えばいい?労基いく?まじで録音とかしてこんな会社ぶっつぶそうか?


「おーい、葉月、早く配達行ってきてよ。 俺もはよ帰りたいんだわ」

「......はい」


 しかし俺はここが潰れた先何処にいけば良いんだ?どこもない。そう、どこもないんだよ。怖い......無理だ。

 心を殺して耐えろ。やり過ごせ。槙村、あいつはファ●ビーと同じだ。ただ音を出すだけのちょっと目が怖いだけのオモチャなんだ。オモチャにキレても虚しいだけだぞ......落ち着け俺。


「......あ、そういや、給湯室に置いてあったメモ帳。 あれ誰のかわからんけどぼろぼろで小汚ねえから捨てといたぞ。 ゴミ置いとくのはダメだろ? ちゃんとゴミ箱捨てよう? これ一般常識だから」


 メモ帳。一瞬で血の気がひいた。それはおそらくいつも俺が持ち歩いてるネタ帳だ。忙しくて休憩もままならず、ネタを少しだけ書いて、急いで仕事に戻った時があった。


 俺、落とした事に気がつかなかったのか......!ていうか、え、捨てた......?それに槙村は誰のかわからなかったって言ってたけど、じゃあ何で俺に向かって俺のゴミを捨ててやったみたいな感じに言ってるんだ?......こいつ確信犯だろ。


 この数年間書き連ねたメモの数々が思い起こされる。必死に隙間の時間でちまちまと書いたアイデアと比喩表現、言葉の言い回し。

 それらを思うと体が勝手に動いていた。


 此方に背を向け通話中の槙村へと拳を振り上げる。その瞬間は何も頭に無い。ただただ、怒りに支配され物理的攻撃を加える事だけを目的に拳を振り下ろした。






 ――ハズだった。


 何故か拳が宙で止まっていた。疲れからの幻覚か、俺の手に誰かの手が重なっている様に見える。


 ぼんやり光っていたその手は傷だらけで、ぼろぼろ。幾つもの戦いを経たその手が俺の拳を止めていた。

 俺は彼の方を見る。真っ直ぐ見つめるその目は俺に「ダメだよ」と訴えてくる。



 ......ああ、うん。 そっか、そうだよな。こんな奴の為に人生を棒に振る必要無いよな。



 俺はノアへ頷き、「ありがとう」と心の中で呟く。そして配達へと戻った。





「――ふう」


 配達が終わったのは21時を回った頃。配達物に米や飲料水が多く腰が悲鳴をあげていた。

 事務室、槙村はきっと帰ってるだろうな。「あ、俺別に待ってる必要無くね?」とか言って。


 そんな事を思いながら、不在だったお宅の荷物をおろし、保管処理をする。

 冷蔵の物は冷蔵庫へ。翌日の再配達の物をわかりやすく配置して......。


 その時、スマホが震えた。


「ん?」


 俺のスマホは基本的に着信が無い。と言うのも余計な通知が来ないようほとんどのDMはブロックしているし、連絡先を知ってる人は家族と幼なじみひとりくらいしか居ない。


 その家族と幼なじみも滅多に連絡をしてこないので、何かの非常事態かと思い、スマホを取り出した。


「あれ?」


 しかし画面には着信の形跡もメッセージもない。気のせいか......と、俺は思った。たまにあるやつ。スマホが振動したかと思ってみてみたらなんもないの。あれか。


 その流れで宝物のスクショを開く。


「......」


 そうだ、俺はまだ頑張れる。俺の描いた夢を応援してくれた人がいるだろ。まだまだだよ。

 そう、この腰の痛みも、クレームで罵られた痛みも、槙村の心無い行為にも、一人だけサービス残業なのも、パワハラ、モラハラ、孤独......まだまだ、頑張れる。多分......。


 あ、やべ。心が......。


 誰も見ていないとはいえ、職場だぞ。頬をつたいポタポタと落ちる涙を急いで拭う。

 ダメだ、これは。感想欄......実物みて勇気貰おう。心折れそうだ。



 小説家になっちゃう?なろうよ!のマイページに飛ぶ。


「......ん? え?」




『感想が書かれました』




 感想が入っていた。俺はドキリとする。これは俺に頑張れって事か......更に涙が溢れる。そして、もうひとつ。

 涙が視界をぼやけさせているせいか、感想がふたつ?


 赤い文字で表示される二つのワード。


 いや、ちがう?もうひとつのこれ、感想じゃない?



『レビューが書かれました』



 ......。


 レビューって、なんだっけ。レビュー、レビュー......って曲なかった?そりゃ、ラビューだ。懐かしいなぁ。


 ちっげええええよ!?レビュー!?俺の小説にっ!?


 なんかおかしいぞ!?小説の詳細ページみてみよう......少し早いけど、今日のブクマ評価&PVチェック!!






『ラストファンタジア ~ノアの旅~』 作者 noranuko


 ブックマーク、8239件。

 感想、203件。

 レビュー、3件。

 総合評価、40400pt。

 評価ポイント、23922pt。





 カシャッ





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