34.お礼
ピンポーン......
教えて貰った部屋番を押し、インターホンを鳴らす。
『――あ、やほやほ! あがってきて』
「あ、うん!」
エントランスのドアロックが解除される。押し扉をぐいっと開き中へと入った。
相変わらず、すげー綺麗なマンションだな。家賃いくらなんだろう......。
エレベーターが真城さんの部屋がある三階へと上昇し始める。
ああ、ヤバい......緊張してきた。前に会ったことがあるとはいえ、あの時は真城さんは俺が葉月だと知らなかった。
だから一線を引いて、他人として接することができたからまだ余裕があったけど、今回は違う。
いつも仲良く遊んでる友達としての来訪。嫌われたくない気持ちと、万一へまして嫌われるのではないかと言う恐怖がのし掛かっている。
チーン!
到着を知らせる音が鳴り、扉が開く。
「......あ」
「――あ、こんにちは~」
真城さんがいた。
手に吐息をかけて、すりすりと合わせてる。手の甲の半分まで袖で隠れてる。寒いなか部屋から出て待ってたのか?
白いフードつきのパーカーにスカート。急いで出てきたのか、薄着だ。
「......?」
「こんにちは。 あ、あの......真城さん」
「......はい?」
「えっと、遊びに来たんだけど」
目が合う。それから数秒、時が止まったかのようにピタリと動かなくなって、次の瞬間、その綺麗なつり目が大きく見開かれた。
「えっ!? ......葉月さん......?」
なにその反応!?あれ!?
「え、え、来たらダメだった? あれ?」
「違う! 前に会った時と別人なんだけど!? 誰かと思った~」
「あ、そっか」
そうだった、俺あの時から変わったんだ。そうか......。
「うん、ダイエットとかしたからかな......ごめん」
「なんで謝るのさ! 凄く良いよ! カッコいい!」
うおっ、やば......嬉しいいいいい!!!
にやけ顔になる、やべえ......堪えろ。
「さーさー、入った入った! 外は寒かったでしょう」
「うん、寒いね~、あ、前の配信で好きな鍋の話してたよね」
「あー、うん......でも鍋じゃないやつ言い出すリスナーさんいて」
「「――麻婆豆腐!」」
「ぷ、あははは」
「ふふふ、ははは」
あかん、こんな幸せええんか?笑い顔素敵過ぎるんだけど!
話してる感じの子供っぽさと、美形の顔のギャップがヤバい。無邪気さと掛け合わさって、唯一無二の美人さんになってる。
あえて一言で言うなら「女神」。現場からは以上です。
真城さんが部屋の扉を開けてくれて、先に入るよう促される。
「お邪魔します~」
「おお、きたかっ!! 葉月さん!!」
真城(兄)さんが、わざわざこちらへ来て出迎えてくれた。
「あ、こんにちは、真城さん......お久しぶりです」
「久しぶりです、あの時は助けてくれてありがとう! む、何だか感じが......お痩せになったか?」
「あ、ええ。 太りすぎだったから、ダイエットしました......あはは」
「おお、努力家ですね! 流石作家さんだ、根気強い! さあどうぞ、こちらへ来て座って下さい」
「あ、すみません」
なんかむっちゃほめられるんだが!こそばゆいな。すると姿が見えないところから真城(妹)さんが続ける。
「そーだよー。 葉月さん、スッゴいがんばり屋さんなんだから~! ねー」
「え、あ、うん」
脱いだ上着を、お兄さんがハンガーで掛けてくれた。
「すみません」
「いえいえ」
キッチンから真城(妹)さんがお盆にお茶をのせて現れ、コトっと目の前にお茶が差し出される。
「......ありがとう」
「ん? あ! 紅茶とかのが良かったかな? なんも考えんで緑茶だしちゃったよ」
「ううん、大丈夫! いただきます」
「ごめんね、あはは」
? 真城(兄)さんが驚いてる。なんか変なことしちゃったかな?
「あ、あの。 真城さん? 何かありましたか?」
「あ......。 いや、何でも」
そう言った真城(兄)さんは、笑みを浮かべていた。なんなんだ、一体?失礼な事しちゃったか?笑われてるのか?
「あ、葉月さん、ようかん食べる~? 美味しいよ~」
「食べる!!」
「あはは、ようかん好きだもんね! お兄ちゃんもいる?」
「うん、貰おうかな」
「了解!」
パタパタとキッチンへ戻る。
「葉月さん、すごいですね」
「え?」
「妹があんなに......前に話しましたよね、人見知りが激しいと。 それが貴方の前ではあんなに楽しそうに」
「そ、そうなんですか?」
彼はメガネをくいっとあげた。
「ありがとうございます、葉月さん」
そのありがとうには、何か別の意味合いが含まれているような、そんな気がした。
「いえ、こちらこそ」
でも、真城(妹)さんに多くを助けられてきたのは、俺のほうだ。だから。
「ありがとうございます」
やっと面と向かって話せた。
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