33.思いの中
――まあ、気づかれていても、不思議はないよな。
俺が彼女を真城(妹)だと声で気がついたんだ。彼女だって俺が葉月だと気がついてもおかしくはない。
「......うん」
『なんで、教えてくれなかったの......あの時』
「それは......」
それは......なんと言う?ありのまま劣等感を感じてしまったから、と言えば良いのか?
あの姿の俺は君に受け入れてもらえないと思った。だからあの出会いは無かった事にしたかった。
カチン......カチン......
時計の音が聞こえた。
「会ったときに話すよ」
『......!』
「週末はどうかな。 場所は......」
『家に来なよ! お兄ちゃんも会いたがってたし』
「真城さん家か。 お邪魔じゃないかな?」
『いやいや、住人の私とお兄ちゃんが来て欲しいって言ってるんだよ? 邪魔なわけ無いじゃんか!』
「まあ、確かに......」
でも、それって......あ、
――ネガティブ禁止、です!
脳裏に金見さんが見えた。
うむむ、危ない。すぐマイナス思考へおちいるな。この歳までずっとネガ男だったしもう染み付いてるんだよな。
でも、彼女との約束だ。何も返せないけど、せめて約束くらいまもっていこう。
「うん、わかった。 じゃあ週末に真城さん家いくね」
『うんー! やった! たくさん遊ぼうね!』
「了解!」
『そう言えば、聞いときたいんだけど』
「ん、なに?」
『葉月さんが小説書いてるって、お兄ちゃんに言ってもいいの?』
「あー、まあ隠す事でも......ないかな。 うん」
言いながら考えた。バレてもたいした事ないよな?なんかまずいことになるか?特に思い当たらん。なら大丈夫だろ。
『あ、嫌ならちゃんと言って』
「うん、嫌じゃないよ。 大丈夫」
『そか。 わかったよ、ありがとう!』
「いえいえ」
『さてさて、今日は何を狩りましょっかね~』
「あ、俺あれ行きたい! シンオウガ!」
『良いよー! じゃあ氷武器だね、こないだ作れたヘリオロス武器が丁度いいね』
「だね、あのヘリオロスさ」
『うん』
「地面に牙めっちゃ突き刺す攻撃あったでしょ」
『あるある、痛いやつね』
「何もしないでもあれで勝手に牙折れる気しない?」
『あはは、確かにスゴい威力だしね、あの攻撃』
「ね」
『うん』
クエストが始まると、側にある箱から回復薬等の支給品アイテムを取り出す。ここは雪山だから、「熱飲料」なるドリンク系アイテムも支給されていて、これを飲まないと寒くてスタミナがすぐ無くなる。
みるからに極寒の地であるこの雪山でドリンク一本飲んだだけで平気な顔して歩き回れるのは、この飲み物にヤバいものがたくさん入っているからじゃないかと思う。でなければ狩人の自己暗示によるものか。多分、そう言う訓練をうけてきたのだろう......「冷飲料」も同様。
心頭滅却すれば火もまた涼しってやつなのかもしれない。
そんな事を考察しながら歩いていると、奴の姿が見えた。
シンオウガ。奴は雷を纏う四足のモンスター。目が合う、威嚇の咆哮......くる!しかし、いま気がついたけど、
真城さんの姿がいつの間にか無い!
おそらく、途中で見つけた環境生物(ペットとして連れて帰れるフィールドにいる動物)を捕獲してるのだろう。このパターンは絶対そうだ。
その証拠に通話してるのに『......』だ。恐ろしく集中しているのだろう......え、何いたんだろう?気になるんだけど。
俺はシンオウガを一人相手取りながら真城さんに聞いた。
「あの......真城さん?」
『あ......ご、ごめん。 珍しいの居たから』
「......何いたの?」
『白くてふわふわの丸っこい鳥』
「!!!」
そ、それは......レア環境生物、そしてそのシマエナガのような見た目の愛くるしさから狩人達の癒しの象徴として、ペットにされている......!
「フンワリクイナ!!!!!」
それを聞いた俺は全速力でシンオウガの反対方向へ走り出した。早くタゲ切れろ!うおおお!!!
『なんまら、可愛い』
「ずるい! 俺もほしい!!」
『私、捕まえれたからシンオウガやってるね』
「ありがと!」
シンオウガのタゲを切り、フンワリクイナのいたと報告のあったエリアへ走る。すると向こうから走ってくる真城さんのキャラクターに出くわした。
ぴょんぴょん飛びはねフンワリクイナをゲットできた嬉しさを爆発させていた。
『捕まえるときは、そーっとだよ!』
「うん! ありがとう、わかったよ」
――いた!みつけたフンワリクイナは十匹以上の群れだった。
鹿みたいな草食動物にフンワリクイナ達が乗っている。鹿もあれだけの数が乗っていると、フンワリクイナがいくら小型の鳥とはいえ流石に重いのかしきりに背を見ていた。
そーっと、そーっと......
手に持つ網を勢いよく投げつけた。すると二匹捕獲する事に成功!
「やったー!」
『あ、捕まえられたの!? やったね!!』
「うん、ありがとう!」
ん?
思わず拳を握り、喜ぶ俺の脇をガラガラガラと荷車が通りすぎた。ふとその荷台を見ると、幸せそうに倒れている真城さんが運ばれている。あ......
シンオウガにやられたのか!!
心なしかその手が親指を立てているように見える。ありがとう。
『あとは......頼んだ、よ......』
「くっ、真城さん......俺が、もっと早く戻れていたら......」
『私の、かたき、を......うって。 がくっ』
「真城さあああん!!!!」
『あははは』
「ぷ、はは」
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