28.さっぱりと
「――さてさて、どういう感じにカットしましょうか」
ヘアカット用のハサミをチャキチャキさせ金見さんが言う。心なしか目がきらきらと輝いてる様にもみえる。
「えっと、とりあえず短ければいい......すかね」
「短ければどんなでも?」
「うーん......ちなみに、どんな風にカットしようとかあったりしますか?」
「あります! えーと、こんな感じを考えてます」
そういうとスマホを操作し、ヘアカタログ代わりに画像を見せてくれる。
そこに映る髪型はどれもこれもわりかし派手な感じで、それで歩くには勇気が入りそうだった。俺的に。
だってこんなウェーブかかってるのなんてイケメンしか似合わないじゃん。
「は、派手すね、はは......」
渇いた笑い。これで察してくれるか。
「ですね、すこし目立つかも? で、どれにしますか?」
あかん、伝わってねー!!どうするか。あんま目立つのはあいつに絡まれネタにされる可能性がある。
それがちょっと嫌なんだよな。
「えと、会社もあるし、もう少しおとなしめなのは難しいですかね?」
「あ、そっか」
金見さんは、そう言いぽんと手を打った。
「葉月さんの似合うものをとしか考えてなくて。 すみません、あはは」
「あははは......」
え、似合わないでしょ?俺やぞ!
「そしたら~、これとかは?」
見せてくれた髪型は普通な印象。短過ぎず、長すぎず。ちょっと髪が耳にかかるくらいで、前髪も眉くらい。うん、これが良い。
「これでお願いします!」
「了解! ではでは、カットしていきますね」
金見さんは俺の髪を軽く撫でると、衣服に切った髪がつかないようにマント的な奴を被せた。
「では、いきます!」
そして俺は見逃さなかった。鏡に映る金見さんの背後、扉の隙間から見ているご両親の満面の笑みを。......なんでそんな笑顔全開で見てるの?
「――できたー!!!」
ビクッ
仕事の疲れもあり、うとうとしていた俺は、彼女のその嬉しそうな声で目が覚めた。
「はっ――! ......あ、そだ。 髪切ってたんだ」
「ふふふ、寝てましたね。 お疲れ様でした、終わりましたよ~」
鏡を見ると、パーマがかかった俺がいた。
「ええええええー!!!? パーーーーマッ!!!!!」
「あははは、カッコいいでしょ! 葉月さん髪で隠れて顔みえにくかったけど、やっぱり少し顔立ちが女性っぽいんですよね。 イケメン完成」
いや、イケメンじゃ......え、これ俺?なんかよく見たら眉とかもいじられてる。これ、俺の顔だよな?こんな変わるの?
驚きを隠せずに、目を見開き鏡を見ている俺に金見さんが言う。
「あ、ちなみにこれ、パーマじゃなくてワックスつけてるだけですよ。 なので、落とせばフツーにさっき指定された髪型になります! まあ、これで出社しても問題ないと思いますけど」
「......あ、そう、なんですね。 いや、なんか......別人に見えますね、これ」
「ふふん、この為にタイミングを見計らってたんですから! 痩せて一番カッコ良く見えるタイミングをね! あいつに見せつけるために!!」
あいつ?......誰?
「?」
「あ、こっちの話です。 あはは......あ、そーだ今日家でご飯食べてってください。 遅いし」
「え、いや、さすがにご飯まで......悪いですよ」
「でもさっき親が作りすぎたから食べていって貰ってって......逆に食べるの、協力お願いできませんか?」
なんか作為的なモノを感じるが、まあ。髪も切って貰ったしな。
「わかりました、ごちそうになります。 ありがとうございます」
「わー、やった! それじゃあお風呂先にどーぞ」
「え?」
「シャワー浴びたらスッキリしますよ~。 疲れてるみたいですし......あ、湯船もはってるので浸かっていただいても大丈夫ですから」
「......あ、えー」
俺の頭のなかには「汗臭い」が浮かんでいた。このまま食事?きっとそれは嫌だろ、金見さんが。しかし、お風呂までいただく......ちょっと図々し過ぎない?でも臭い......。
「お風呂とご飯冷めちゃいますよ! さささ、お風呂へゴー! 案内しますね~」
「あ、はい」
作為的なモノを感じる......!!
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