26.生まれ変わる
『時は来た』
たった一言、そう書いてあった金見さんからのメッセージ。
俺の体重は努力のかいもあり、この数ヶ月で85kgから53kgへと激減した(※身長は170cm)。その減量数値32kg......マジで頑張ったわ。これは自分で自分をほめてもいいと思うの。
甘いものを断ち、太りにくいメニューを用意され、毎日のランニング。おかげさまで腹に巻かれていた質量のある肉輪が消え、持っている服がぶかぶかになってしまった。嬉しい限りでござる。
そして、ダイエットを計画してくれた金見さんへ体重を報告して返ってきたメッセージがこの『時は来た』だった。
これはあれだ、散髪の話だと思う。前に言われてたからね。
私が良いと言うまで髪は切らないでくださいって。その時がきたのだろう......他に思い当たらんし。つーか、もっさもさになってていい加減切りたい。千円カットでサッと。
とりま仕事いこ。金見さんも出勤だって朝のランニングで言ってたからな。確かめるのは職場で会ったときで良いだろう。
そんな事を考えながら、もう毎日の日課のようになっている真城さんへ『おはよう』のメッセージをおくり、玄関へと向かった。
ガチャっと、扉をあけ外へ出る。ふと見上げた空は澄んだ青で、雲ひとつなかった。
真城さん、今日はお昼に生配信するって言ってたな......頑張れ。
――ブブブブ
マナーモードにしてあるスマホが鳴る。あ、起きたかな?と思い、メッセージを開いた。
『おはよ~、お仕事気を付けてね! 行ってらっしゃい!』
文字を指でなぞり、俺は笑みがこぼれた。
「――よし、頑張るか」
◇◆◇◆◇◆
がやがやばたばたと忙しない朝の職場。誰も彼もが目を白黒させ作業をしている。
そんな中、余裕そうに俺に近寄ってくる男が一人。そう、槙村だ。また面倒なのが来たな......てか、仕事しろよ!
「おーおー、葉月。 頑張ってんねえ? けど、お前、痩せたと思ったら逆に筋力が落ちて仕事になってねんじゃねーのか? はは」
うっせ!いいから、そーいうのいいから!
「痩せてても太ってても無能だなぁ。 相変わらず髪もボサボサできめーし! ははは」
いや髪はともかく、無能ってのはこうやって油売ってる奴の事で......。とか考えていたら意外な所から援護が来た。
「てめー、槙村ァ!! このくそ忙しいのに何をくっちゃべってるんだおめーはァ!!!」
上司、班長の坂田さんが鬼のような形相で槙村を睨み付けていた。
そりゃ怒るよなめちゃくちゃ忙しいのに一人悠々と雑談始めちゃうんだもの。え、やっぱりこの人、馬......?
「す、すみませんッ! くっ......お前、おぼえてろよ」
いや何を!?お前が勝手に怒られたんじゃん?そんなのアタシ知らなーい。忘れちゃいまーす、ぷぷぷ。
と、ふざけとる場合じゃねえ。今日はなるべく早く業務終わらせ、金見さんに言われたとおり髪を切らねばならんのだ。
......てか、心なしか槙村げっそりしてない?
~約三十分前~
「あ、おはようございます、葉月さん!」
にこにこしながら手をひらひら振る金見さん。社内No.1所かここら辺の町で1番美しいんでねーか、この人。......あ、いや1番じゃないかも。
「おはようございます! 今日も朝、ありがとうございました!」
「いえいえ~。 まあ、私の日課でもあるので気にしないでください。 あと一人で走るより誰かいた方が楽しいので! 葉月さんなら特に!」
「あはは、ありがとうございます。 所で、くれたメッセージ......時は来たって、これの事ですか?」
俺は自分のボサボサヘアーを指差す。すると、金見さんはうんうんと頷いた。
「そーです! 今日、どうです? 切りませんか?」
「今日、多分仕事終わるの遅いですよ? お店やってるかな......」
「大丈夫、私の家ならいつでもカットできるので!」
え!?
「家......金見さんの家で? あ、そっか、美容室でしたっけ」
「ですです! でもカットは私がする事になりますけどね! 大丈夫、私、結構器用なので! 友達のヘアカットもしたことあるし......どうですか? 嫌?」
嫌、ではないけど。うーむ、高そうだしな。美容室とか行ったことないし。どーするか......でも断って嫌われたくないし。
「あ、ちなみに私、素人なのでお金はいただきませんのでそこら辺はお気になさらず!」
「......え、それは悪いですよ!」
「悪くないです! だから切らせてください、お願いします!」
いや、なんでそこまで......なんかお願いされてしまった。立場逆転してるんだけど。
「あ......うん。 いや、こちらこそ、金見さんが良いなら」
「やった! ありがとうございます! 仕事終わったらそのまま寄ってください!」
「え、あー。 はい」
そのままって、汗臭そうで嫌だな。ソッコー家帰ってシャワー浴びよう。
~現在~
そんな感じで早めに終わらせる必要があるのだ。シャワーを浴びて着替える時間を捻出せねば。臭くて嫌われたくないしね。
てか、金見さんとこの美容室って結構大きかったよな。普通に入ってカットして貰ったらいくらくらいかかるんだろ。金見さん、もしや美容師の卵......?
「よし、出発準備オッケー! 行くぞ!」
葉月はひとり気合いをいれ、足早に車庫へと向かった。
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