25.君の隣に
「――あ、家......ここです。 お兄ちゃん、起きて~......!」
真城兄妹の住んでいるマンションの扉前まできた。しかし一向に真城(兄)さんの起きる気配はない。
てか、やらしい話なんだけどこのマンションやばいんだが。家賃いくらなの?最早、高級ホテルやないの、これ。
「うううう、お、お兄ちゃん起きてよ~」
「......うーん、難しそうですね」
困り果て兄へと呼び掛ける彼女だが、あんまり大きい声だすとヤバイんではと俺は内心かなりはらはらしていた。
「あの、本当にごめんなさい、なんですけど......その、兄を、ベッドまで......」
上目遣いで申し訳なさそうにお願いする。
「あ、良いですよ。 そちらが大丈夫なら」
「ありがとうございます、なにからなにまでごめんなさい」
「いえいえ」
「扉あけますね」
ガチャンと開く扉。真城(妹)さんは先に部屋へ入ると、パチパチとスイッチを押して明かりをつけてくれた。
「どうぞ......お上がりください」
「あ、はい。 お邪魔しますね」
リビングくっそ広いなー......ってか、すげー綺麗にされてる。テレビと机、余計な物は何もない。兄妹の共有スペースだからかな?って、人の家の中をじろじろ見るもんじゃないな。
「......お兄さんの部屋はどこです?」
「あ、右手の部屋です。 兄とネームプレートがかかってる......そう、そっちです」
「あ、はい」
「あけまーす」
ガチャン
「......おお」
まず驚いたのはその音楽機材の多さ。もともとは広い部屋だと思うんだけど、文字通りところせましと機材が置かれまくっている。ベッド以外は機材とあとは少しのアニメグッズ。
「あはは、びっくりしました? すみません......兄は音楽関係の仕事をしていて......作業部屋はまた別にあるんですが、いつのまにか自室もこんな風に......あはは」
真城(妹)さんは困ったように笑う。
「しかも、だいたい作業中に寝ちゃうから......兄がベッドで睡眠をとるのは稀なんです......」
「すごい」
心の底から言葉がでた。
本気の形。
これは、これがプロなんだ。その道の果てにある、生活が「好き」と同化し、生きることが音楽制作と同義になっている。
俺とは全く別物だ......ダメだ、恥ずかしい。
俺は、この歳まで何やってたんだ?
ストレスと脂肪を蓄え、だらだらと小説を執筆する社畜生活。
本当にこれで、良いのか?
真城兄妹は本気で......だからここまで、こんな風にいられるんだ。
わんちゃん印税で人生逆転?書籍化は怖いから嫌?
俺は、何をしてるんだ?
「――......よし」
「え?」
「もう遅いので、俺はこれで......お兄さん、大事にしてくださいね」
「あ、はい......あの、今度お礼を......兄と一緒に」
お礼は......俺がしなければならない。二人に目を覚まさせて貰った。今日、今、ここで、ハッキリと理解した。
この夢が形となっている場所で......だから。
「いえ、それは気にしなくて大丈夫」
「え、でも、こんなに......何かさせてください」
「もう、じゅうぶんしてもらってる」
「......あ、うんと......ん?」
困惑する真城さん可愛いな。俺は笑いひとつ頷いた。
「それでは。 あ、外寒かったので、風邪ひかないように......お休みなさい」
「え......お、お休み、なさい。 本当に、ありがとうございました!」
帰り道、過去の自分を置き去ろうと俺は走り出した。
――だったら、やってやる。
「俺は......真城さんが」
――彼女が
「好きなんだ」
はっきりと、そして痛いほど理解した。なぜ隣にいると卑屈になってしまうのか。
――俺が、こんな身体だからだ。
なぜ悲しくなるのか。
――このままだと彼女は、きっと誰かのモノになる。あれほど綺麗な人だ、きっと。
なぜ失いたくないのか。
――大切だからだ、誰よりも。俺は彼女を守っていきたい
他の誰かではなく、俺が......俺がだ!
渡したくない、絶対
真城 雪さんを......!
今までの楽しかった会話と遊んだ日々が思い出される。やっと、やっとだ......俺は幸せの形を見つけた。
あれがほしい。でも、今の俺では無理なんだ!
だから本気で、俺は......
俺を変えてみせる!!
暗闇の中を駆ける。
隣に得意気な顔の相棒を連れ、薄く射し込み出した
――あの光を目指して。
~三ヶ月後~
社畜デブはスマート社畜へと進化した。
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読者の皆様いつも読んでいただきありがとうございます。後書き長々と申し訳ありません。




