20.月夜のハーデンベルギア ①
「......できた」
眼鏡を外し、背伸びした。......おお、いつの間にか真っ暗。時計は19時を指している。カーテンしめねば。そう思い、ふらふらと窓へ向かう俺。
「今日も1日終わってしまう。 また明日から仕事だ......」
どんよりとした気持ちがじんわりとわきでる。
「明日は何時に帰れるのかなぁ......定時には帰れないと思うけど」
まあ、でも今日は作業捗ったから良いか。一応最終回までのプロットは組めた。あとは足したり削ったり、盛ったりバランスを調整したりだな。
なんだろう、前なら疲れきって寝て作業が全く進まずに休日を無駄に消費してしまうことが多かったのに。
......これもあれかな、やっぱり真城さんと金見さんの二人のおかげ?真城さんとのゲームで良い感じに息抜きができて、金見さんとの運動もあって頭の働きが良くなっているのかも。作業能率があがってる気がする。
こんな充実感のある休日は久しぶりだ。
ブブブッ
「うおっ!? びっくりした! つ、机のスマホか......暗闇の中で急にガタガタされたらマジでびびるわ。 誰だろ」
まあ、真城さんか金見さんだろうけども。
見ると画面に表示されていたメッセージは真城さんだった。
『やっほー! ねえねえ、今お時間あるかな? あったらお話しませんか? 小説の作業中だったら返信しなくて良いからね!』
幾度となく重ねた通話と、動画の視聴でもう脳内再生余裕となった真城さんの声。
イメージの向こうに天使が見える!!
「プロットも一段落したことだし、通話しようかね。 憂鬱な明日のために真城さんに元気貰っとこう」
『良いよ~』っと。......なんか「~」とか30のおっさんには、ちょっと似合わなくね?かといって「良いよ」で終わらせたら冷たい印象が......難しいな。
『わー! ありがとう~! んじゃ、かけますよいよい!』
かかるコールの振動。手早く通話のマークをスワイプする。
『もっしもーし! ごめんね、忙しく無かったかな?』
「うん、大丈夫だよ。 真城さんはもうご飯とか済ませたの?」
『うん! 食べたよ~。 カレーライス食べた! 葉月さんは?』
「俺はまだだよ。 ちょっと通話しながら作っていい?」
『いーよ、いーよ! さてさて、本日は何を作るのかな~?』
? なんだろう、真城さん。気のせいかな。元気が無い......?
「んー......何があったかねえ。 冷蔵庫」
『さー! 葉月選手、冷蔵庫チェックのコーナーが始まりました~! 今日の夕食選抜にはいったい誰が選ばれるのか~ッ!?』
「あはは、ちょ、なんだそれ! 実況つきとか!」
『ふっふっふ......あ、ごめん。 もしかして、鬱陶しかった?』
「いや、楽しいよ......ふふっ」
『よ、良かった......私、結構懐くと調子に乗っちゃうから。 あはは......』
「そうなんだ。 面白くていいね」
えーと、さらっと流したけど、真城さん俺に懐いてくれてるってこと?マジで?
『えへへ、褒めてもろたで』
喜ぶ真城さん。けれどやっぱり気になる。真城さんは今や俺にとって大切な人だ。だから気になる。悩み事であれば聞いてあげたいし、解決できる事ならしてあげたい。まあ、俺なんかが出来る事なんてたかが知れてるが......話すだけでも楽にはなれるだろ。
「真城さん」
『ん? 選抜決まった!?』
「あ、いや、夕食の代表選手はまだなんだけど......なんか今日、元気ないね?」
『え』
......あ、あれ。この反応は、やらかしたか?もしかして聞いたらダメな感じだったか?
『すごいね......何でわかったの』
「あ、いや。 何となく、雰囲気と声の出し方? 頑張って明るくしてるような気がして」
『......へえ。 やっぱりすごいね。 これが人気小説家の力なのかな?』
「え」
いや、あんま関係ないよーな。
『私ね、今日......家族とケンカしちゃって。 お兄ちゃんなんだけど』
「ああ、そう言う事か」
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