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2.小説家になっちゃう?なろうよ!

 


 清掃作業を終え、コンビニで弁当とお茶を買いよろよろと帰宅。

 こりゃ明日の休日も昼過ぎまでバタンキューだなぁ。などと思いつつ、洗濯を始めた。洗濯機はこのアパートに元からあったもので、最初みたときはありがてえ!と思ったが、使い始めるとおいていった意味が理解できる程ボロく、定期的にガタガタと音が激しくなる。


  これが隣人の部屋に聞こえるほどにうるさいので、鳴り出したら手で洗濯機を上からおさえつけなければいけない。


「これなら新しい奴を買った方が良かったな......つっても、もう家電リサイクルに出すタイミングもないからな」


 はあと、溜め息をひとつ。


 一人暮らしである俺はともすれば家事はひとりで全てこなさなければならない。もう十年くらいこの生活だが、配達業で動き回り体力の削られたあとの家事程しんどいものはない。なので大体の夕食がコンビニ弁当、もしくはファミレス。


 ファミレスは職場の人と会う危険性があるので、ほぼほぼコンビニ弁当になるのだが、ついお菓子やスイーツを買ってしまい食べてしまう。このままではいかんと考えられる頭はまだあるが、理性ではもう縛れなくなったこの膨大なストレスの前では無意味だ。


「からだが......キツい」


 ああ、もう実家にでも戻ろうかな。そうすればこの洗濯や食事の問題も解決できる。けど妹にいびられるだろうな......実家にいたときとは違う、この変わり果てたこの容姿を見れば、またキモいと言われキツイ目を向けてくるに違いない。


 実家は田舎で、戻り暮らすとなると今の仕事も辞めなきゃいけない。辞める......かあ。


 でも妹問題を置いといて、実家に帰ったとして仕事はあるだろうか?どうなんだろう。休みがろくにない今の状態では帰って確かめる事も難しい。かといって、電話で聞くにも妹に聞くのはもっての他だし、母さんにはそんな話で心配させたくない。


 ......まあ、あれだよ。休日出勤があんまり無いうちはまだマシなんだよな。だって休日も平日と同じように、働いてる人達だっているわけで。なんなら家に仕事持ち帰って作業させられている人だってこの世には沢山いるんだ。


 それに仕事があるだけ幸せなんだよな。そうだよ、甘えた事なんて言えない。ましてや30過ぎのオッサンだぞ。次の仕事がある保証なんてない......実家に帰りたいだなんて思っちゃダメだ。俺はここで頑張らなきゃ。


 母子家庭で育ててくれた母さんには心配かけられない。


「......風呂、入ろう」




 23時。俺はようやく一息つくことが出来た。もう既に眠気に頭が支配されつつある頭。しかし俺にはまだやることがあった。

 それは、三年くらい前から始めた「小説家になっちゃう?なろうよ!」での小説執筆。この無料投稿サイトに俺は自作の小説を投稿しているのだ。


 それを始めたきっかけは単純で、そのサイトのランキング上位へと登りポイントを稼いでいれば書籍化する事ができると言うのを知ったからだ。小説は好きだったし、ラノベは学生の時たくさん読んできた。だから自分にも出来る気がして投稿を始めた。


 もし、これが上手くいき成功すれば書籍化し、本を出版してもらえる。そうなれば、もし大ヒット作になったならば印税がたくさん入ってきてこの苦しみしかない仕事や生活からも逃げる事ができるかもしれない。


 そう、その本質は決して誇れるものではなかった。好きだからより現実から逃げたいから。それが目的だったのだ。

 印税を貰い夢の印税生活。執筆作業には追われるだろうけど、今の苦痛でしかない今の仕事よりは遥かにマシだ。何より人と接するのが苦手な俺には作家生活はとても良いものに思えた。


 けれどやはりその世界も甘くは無かった。人気作を研究すれば実力の違いを思い知らされ、簡単そうに書かれている文書は計算されて読みやすくなっている事に気がつき、自分が成功するビジョンはあっという間に霧散して消える。


 失敗し、更新の止まった作品は4つ。書籍化するのが宝くじを当てるより低い確率に感じ、モチベーションが低下したのち筆を折った。エタった小説、無理矢理完結させた小説、第二部をやるといい、そのままの物。

 書き終える度に、自分の力のなさに嫌気がさす。


 思うように書けない。他の人達のように上手く書けない、落ち込む日々。


 俺は何をしても、どこへも行けない。何をしても、成功しない。


 そして、5作目。もう読者のウケを狙うのはやめた。


 ただただ、自身の為の自己満足のハイファンタジー小説を書いた。


 夢を載せたその小説の主人公は、俺が投影されたかのように自信が無く、敵の命を奪う事にも恐怖をする。もがき苦しみながら、仲間もいない彼はたった一人、その二本の足で立ち歩き進む。


 けれど彼が歩みを止めないのは、辛くても苦しくても前へ進むのは、俺も心の底では前へ進みたいと思っているからなのかもしれない。

 ブックマーク、評価ゼロ、PVも二桁のどうみても初動に失敗し書籍化も出来ないような小説だけれど、この小説だけは自分の為にも、続けるべきなのかもしれない。そんな事を考えながら、スマホの画面に映る文字を指でなぞる。


 投稿し初めて3日がたったとき。PVは132。ブクマは2。評価は0。

 投稿話数は4。文字数は約3900。

 多忙の中、少しずつ1ヶ月もの時間をかけてやっと書き上げた3900文字の成果がこれだった。正直、また筆を折りそうになる俺がいた。


 けれど、主人公の必死に戦う顔が脳裏によぎる。やめられない。


 それから3ヶ月経ったとき、評価が10ついた。とても嬉しかった。まるでそれで全てが報われたような錯覚に陥った。いや、錯覚なんかじゃない。確かに俺は心を救われていた。


 ブクマは39、総合評価が88となった。



 そして更に5ヶ月が過ぎた頃。マイページに見慣れない赤いメッセージがついた。





 ~約5ヶ月前~


『感想が書かれました』



 かん、そう......だと?





【大切なお知らせ】


少しでも面白い、先が気になる!続きはよ!と思って頂けたら、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると励みになり、喜びむせび泣きます。

ブックマークもとっっっっっても嬉しいです!


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