17.怪物狩人 ③
始まった怪物狩人は、しばらくゲームをしていなかった俺には結構な難易度であった。もしかして前にやっていたし体が覚えてて結構やれるんじゃないか?と言う淡い期待は、突如現れた赤いドラゴンに消し炭にされ消えた。
俺が昔から使っていた双剣は空を切り、カウンターで火球を浴びてダウン。拠点に運ばれた。
「な、な......まじで」
『あれは今の私達には無理だと思う......多分、乱入してきたモンスターだよ』
「ぐ、ぐぐぐ」
『ターゲットのあの襟巻きついたピンクの鳥倒そう! 地道にいこう! ね?』
何してんだ!出だしで躓いてんじゃねえか!!良いところ見せようとしたら見事に返り討ちにされてしまった。
何かで挽回せねば!!!
『ど、どうしたの? なんかさっきから変じゃない? 口数も少ないし......私が敬語なくそうって言ったから?』
「いや! 違うよ、多分緊張してるんだと思う。 真城さんのせいじゃない!」
『そ、そっか......うん、わかった! 楽しくいこーね!』
急いで拠点から真城さんのいる場所へ戻ると、「しー」と口許に指をあてる。見ると、すぐそこに目標のモンスターがいた。
「あいつだね。 イヤーンクク」
『うん、キョロキョロしてる。 ふふ、なんだか可愛いね』
「可愛い......?」
『えっ、あ、か、可愛くない? あれ?』
イヤーンククは鳥の様なドラゴンで、大きな襟巻きとしゃくれた嘴が特徴だ。ちなみにこのモンスターは怪物狩人プレイヤーから先生と呼ばれ愛されている。
「いや、可愛い! とっても!!」
『力強い!?』
「しかし、そんな可愛いイヤーンクク先生だけども、狩らねばならない! 可哀想だけどね!」
『ど、どーしたのテンション』
「え? 普通ですが!!」
『いや、普通じゃないよーな......って、やば! イヤーンクク逃げそう!』
「あ!!」
『葉月さん、行くよっ!!』
「ういっす! 真城さん!」
真城さんの武器はハンマー。リーチは短いが、威力が高く頭に当てればスタン値を蓄積させ、気絶状態にすることも出来る。
気絶状態のモンスターは隙だらけになり、弱点部分を狙えるので上手いハンマー使いは重宝されたりする、らしい。聞いた話では。
ぶん!と、真城さんがハンマーを振り抜く、が、頭どころか羽の先にもかすらない。
『――あれ!?』
恐らく真城さんにもかなりのブランクがあるのだろう。間合いが全然掴めていなかった。そして、イヤーンクク先生は体を回転させ、勢いの乗った尻尾を鞭のようにして真城さんに当てた。吹き飛ぶ真城さん。
「おおっ!?」
『おおっ!?』
そのテクニカルな尻尾攻撃に驚く二人。気のせいかイヤーンクク先生は得意げなように見えた。なんならニヤリと笑ってるようにすら見える。
「......やるね」
『うん。 なんか急に可愛くなくなってきたよ......でも!』
ハンマーを構え直し突っ込んでいく真城さん。俺も彼女が攻撃しやすくなるように、サイドから攻めこむ。しかし、ゲームのブランクはお互いに相当なもので、なかなか上手いこと攻めこめない。
『ぎゃっ!!! あーっ、私ぴよった(気絶状態)ああああ!!』
「――真城さん! くっ、お!!」
連続でイヤーンクク先生の体当たりをうけた真城さんはスタン値が溜まり、ついには気絶状態に陥る。プレイヤーもモンスターと同じく気絶状態になれば無防備で、さらに攻撃されダウンさせられてしまう可能性が高くなり危険だ。
「こっちだ! 先生! 俺の方へこい!!」
『お、お願い......助けて! やめて!!』
「そうです、やめてください先生! 体罰はダメです!」
『え!? いや、私たち散々先生に攻撃しかけてるけども!!』
「――っっっっ、確かにッ!!!」
『ちょ、無駄に凄むのやめてよ! 笑っちゃうから! ぷっ、ふふっ......あははは』
俺は生徒になりきり更に続ける。
「先生、僕達の......我々生徒の声が聞こえますかっ!? お願いです、先生! 思い出してください、体育祭で僕らのクラスが負けたとき、学園祭で失敗したとき、いつも先生は励まし助けてくれた......僕はそんな優しい先生がっ――ぐふ!!?」
ふざけていると先生に大きな嘴でガツン!!と頭をぶん殴られた。心なしか「しらねーよ!」って聞こえた気がする。
『あははは!!! おこっ、怒られてる!! あはは!!』
「先生!! やめて、やめっ」
『あ、気絶なおった......! よし! ふふっ』
「真城さん、ヤバい! 先生完全にキレちゃってる!」
『なんとかしないとだね!! ふっ、くく』
「いや、笑ってる場合じゃない! 先生も激おこだから!!」
『だって、あはははは! だめだ面白い! あはは』
この後イヤーンクク先生は倒せなかったけど、真城さんがとても幸せそうに笑っていたので俺は満足です。
ちなみに怪物狩人はパーティー全体で三回ダウンするとクエスト失敗で、俺が一回ダウンして真城さんが二回。何これ俺下手すぎだろ。
しかし、今度またリベンジしようと真城さんが言ってくれたのがせめてもの救いであった。......次誘ってくれるかわからんけども。
でも、楽しいな。真城さんと遊ぶのは。
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