16.怪物狩人 ②
「よし、こんな感じで良いかな」
『私もできました!』
二人そろって同じタイミングでキャラクリが終わる。するとマイクから白雪さんの不思議そうな声がきこえた。
『ん? 名前が』
「名前?」
『はい、noranukoさんの名前......』
名前と言われて気がつく。
「え、ha......やべえ!? 本名つけとる!!」
久しぶり、っつーか数年ぶりにに人とするゲームだからか「葉月」って普通に本名キャラ名にしてもーた!
『えっ!? ほ、本名なんですか!? えーと、み、見てないですよ~......大丈夫ですから、あはは』
ああー、無駄に気をつかわせてる。ごめんなさい。てか本名って言わなければわからなかったのでは。後の祭りって程の事ではないけど、もう遅いな。
てか、バレても特に問題も無いような......いや、ないな。
「うん......まあ、別に良いか」
『いいんですか!』
「まあ、これといって困ることもないし」
『それはそうかもですが......』
「白雪さんの事は信用してるし、良いです。 葉月一樹と言います。 改めてよろしくお願いします」
『え、あ、はい。 ご丁寧に......えっと、よろしくお願いします!』
まあ、もう見られてバレた時点でどうにもならんしね。白雪さんの事信用してるってのは本当だけど。この人は大丈夫、まだ知り合って日は浅いけど、それでもじゅうぶんにわかる。
『えっと、じゃあ。――私は、真城 雪と言います! 二十歳です! よろしくです!』
「あ、うっす。 よろしくお願いしま......」
――ん、なんて?今、なんか言った?
「え、なんか言いました?」
『あ、私の本名です!』
「ああ、本名ね......本名!?」
『年齢も互いに公表しましたし、これでフェアですね! ふっふっふ』
どきりと心臓が鳴る。
「なんで!? って、あれ? 俺......歳って教えましたっけ?」
『? なろうのプロフィールに載ってましたよ?』
あああああ!!!!そーだった!!!馬鹿正直にかいとったあああああ!!!!
「って、事は......ああ、そうか」
『? どーしたんですか』
「いや、じゃあ俺が三十過ぎたおっさんだって知ってたんですね」
『いやおっさんて! あー、でも歳上さんっていうのもあるんですかねえ? すごく話しやすいのって』
「ど、どうかな。 って言うか嫌じゃないんですか? 俺みたいな十以上も歳の離れたおっさんと話すの」
怖い。聞いといてあれだけど、聞かなければ良かった。
いつだったかコンビニで若い子に「どけよおっさん!」と言われた事がある。あれはショックだったなぁ。
自分ではあんまり実感ないけど、三十だもんな。そら老けるよな、おっさんだよおっさん。
『いやいやいや、嫌だったらこんなに通話しないです! 好きじゃないとお話しませんよ!』
......好きじゃないと、か。あれ?俺の好きになって貰える所って――
「あ、ありがとうございます......」
『うん! とりあえず遊びましょ! せっかくキャラ作ったんだし』
――どこだ?
「そうですね、時間勿体ないし!」
『......』
「? どうしました?」
『あの、思ったんですけど......敬語外したらどうですか? もしよければですが』
「で、ででで、できませんよ! そんな偉そうに出きる人間じゃないし、白雪さんにそんなタメ口きくとか! 無理です」
『偉いとかでなくて、えーと、そう......』
彼女はこのおっさんに対して信じられない言葉をはなった。
『お友達! お友達になりましょうよ! 私も敬語なくすんで、フェアに同じ目線のちゃんとしたお友達に! ......あ、もちろん葉月さんが良ければなんですが』
「同じ目線で......」
まだ二十歳だぞ?こんな若い子と三十過ぎた俺が仲良くできるわけ......いや、出来てるんだよな、今んとこ。
でも、何でだ?何で......
――ああ、そうか。
これ、俺に合わせてくれてるだけなんだよ。......そうだ、俺なにも面白い話とか出来てないしさ。思い返してみても、好かれる所なんて無いだろ。
多分、好きな小説の作者だからって気を遣われてんだって......じゃなかったら俺なんて......こんな良い子と話なんてできるわけない。
――自分の心の奥から湧いてくる黒い物。溢れだし、視界を闇に染めた。
俺は、今の今まで、白雪さんに楽しい時間を貰っていたから目をそらし続けることができていた......けれど、白雪さんには俺の正体が知られていたんだ。なんて滑稽な話だろう、ずっと気を遣わせていたのか。
......うん。冷静に、冷静にいこう。期待すれば痛い目にあう。今までそれを沢山繰り返してきただろう?中三で告白したときも、高二で義理チョコを本命と勘違いしたときも、サークルで仲良くなったあの子も......他にもあるけれど、どれも、痛かった。苦しかった。
だから、期待するな。
でも、それでも
俺はまだ......この人と仲良くしていたいって思っている。この数回の通話で、彼女を離したく無くなってる。去られるのが恐ろしくてたまらない。せっかく色のついた日常が訪れたのに、それを失うのが怖い。
うん、だから彼女の望み通りやろう。彼女の望む通りの俺で......いつか俺がいらなくなるその時まで。出来るだけ長く、ずっと楽しい時間を貰えるように。
よし。
「......うん、わかったよ。 よろしくね、真城さん」
『! ありがとう、葉月さん! よろしく!! えへへ』
ゲームスタートの笛が鳴った。
《パァ~パァーッ♪
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