ざまぁ1.槙村くんの悲劇 (12話の槙村視点)
俺は槙村。槙村 忠樹。この会社のエースであり、頭脳。そしてイケメンの最終兵器だ。
小包の配達は早いし、事務処理も早い。おまけにイケメン。
俺こそがNo.1配達員。俺がいるからこそこの会社は回り、機転を利かせているからこそ、重大な危機的状況を回避しつづけている。
クレーム処理能力も高いが、その腕を魅せた事はない。何故なら普段の仕事がパーフェクトだから......そう、未然に防ぐ力がこの俺にはあるのだ。
客ひとりひとりの特徴を覚え、それぞれにあわせ配達スタイルを変えていく。それにより効率アップがはかれ、能率もアップ!
この間も小包を玄関先に置いてきたが、問題なしノークレームだった。
そう、俺こそが最もスピーディーでクールな槙村だ!!
だから出来ない奴をみているとイライラしてしまう。しかもうちの会社には恐ろしいくらいの無能がいる。
それが葉月という豚だ!あいつは配達も遅ければ残業(まあ、しらないふりしてるから賃金発生してないけどね!)もしまくる無能中の無能!
ああいう出来ねえやつはしっかりしつけてやらねえとな!お、今日も眠そうにしてやがる。まったく、仕事も出来ねえくせに寝不足とか......救いようがねえな。
よし、この天然水を頭からかけてやろう。ドバドバと被れば眠気も吹き飛ぶだろう、流石優しい正社員槙村君。これは評価爆あがり間違いなしやな!
あ、葉月のやろう今あくびしやがった!
「おい、葉月! お前、あくびしてんじゃねえぞ」
すると葉月が返事をした。相変わらず目をあわしやがらねえけど。
「すみません」
ははん。またすみませんで逃げる気かよ!逃がさんッ!!
「すみませんじゃねえ! そんなだから仕事おせーんだろが! 頭から水かけ流してやろーか?」
ほーら、この水入りのペットボトル。ほれほれ、怖いか?
しかし、葉月は思わぬ事を言い出した。
「――すみません、それはやめてください。 風邪ひいたら仕事にならないです」
......へ?
え、いや。正論!!正論中の正論!くっそ、葉月のクセに......口答えしてんじゃねえ!
「風邪でも働けよ!」
「槙村さんは風邪でも配達行くんですか?」
え!?いや、え?えーと......
「はん! 俺は風邪なんざひいたことねえよ」
ふふん、風邪に負けねえ男、槙村!お前とは違うんやぞ!
「......ああ、何とかは風邪ひかないってやつね。 ――あ」
おおおおおおおおおおいいいいい!!!!!?今なんつったああああああああ!!!!!?
「ちっっっっげええよ!!? おま、俺が馬、馬......てめ、てめえええええ!!!!!」
考えるよりも先にツッコミが出ていた。今日の葉月なんなん!?おかしくね!?
「ふふっ」
はっ、背後から可愛らしい笑い声が聞こえる!?この......口に手を当て笑っている社内No.1の美人はッ!!金見さん!!!
今日もお美しい!!!!
「ええええ......え? ちょ、ちょっと、笑わないでくださいよ~金見さん」
「ふふふ、すみません。 だって、葉月さんがあんまりにも綺麗にかえすから。 漫才みたい。 ふふっ」
漫才!?いや、つーか何で葉月のが評価されてんだよ!
「くっ、葉月のせいで笑われちまった......ん? おい!葉月! なに見てんだよ、早く配達いけよ!」
「......はい」
ちっ、陰気なデブめ。あれで年上なんだよな。みえねーけど。
それより!このチャンスを活かさねえ手はない!!
「金見さん、朝からうるさくてごめんね。 あいつは後でしつけとくから! 所で今日お昼一緒にどうかな? 美味しいお店みつけたんだよね~!」
俺は知っている、金見という女を!こいつは絶対に俺に惚れている。なぜわかるのかって?そりゃわかるぜ!例にだすなら、さっきの一件だってそう!
俺にはわかるんだよな~。一見すれば葉月をほめたように見えたあれは、実は間接的に俺と会話をするためのものなんだよ。だってそうだろ、まず、葉月に好意を持つことはない。だってキモデブメガネだから!
と、なれば必然的に俺に話しかけたかったからという答えが導ける!
まーね、俺、イケメンだしね。なかなか金見さんから踏み出してこないし、ここは一つ俺から歩み寄るか。男、みせまshow♪
「美味しいし、ここから近いからさ......なんなら俺がご馳走す......」
「――あ、すみません、今急いでるんで......それでは!」
そういうと金見は足早に車庫へと走っていった。
え、あ......急いでるって言っても、約束するくらいできるんじゃ......。
いや、諦めるな!照れ隠しだろ!!まだ追いかければ間に合う!!
今、車庫に向かって走っていったよな?行くぜ槙村!とばしてけーッ!
――しかしそこで目の当たりにしたモノは。
......へ?
な、な、なんで?
そこには葉月の頬へキスしている金見がいた。※誤解
へ、へ?なに、これ?
あ、そ、そーか......これ、もしかして夢なのか?い、いや夢だろ100%。
だって、葉月に......き、キス?なんで?豚肉の香りに誘われたの?
葉月の乗った配達車が出発し、金見が手をひらひら振っている。え、なにそれ、俺にしたことなくない?
い、いや、何かの間違えだろ。話きいとこか。ついでに二人のこれからについて話し合おうじゃないか。
「――あの、金見さん」
「え......あ、ああ」
なにその嫌そうな反応?うそでしょ......あ、そうか!
いや、恥ずかしがんなって。イケメンだから照れてんだろ?大丈夫、お前もイイ女だぞ?自信もてよ。
えーと、そう、葉月をネタに話膨らませるか。たまには役に立てよ、葉月。
「いやあ、葉月は本当にトロいよね~。 皆より配達おせーんだから早く出発しろよなって感じだよね。 ね、金見さんも葉月に思うところあるんじゃない?」
――その時、ゾクッと背筋に悪寒がした。
「......知ってますか?」
「え、な、なにかな?」
心なしか金見さんの声色に威圧感を感じる。もしかして、お、怒ってる?
「なんで葉月さんが配達遅くなってるのか。 ......彼、困ってる人見過ごせないんです」
「??」
「前に家の近所へ配達しているの見たんです......お客様はお婆ちゃんで、耳が遠くて全然言葉が届かないけど......それでも頑張って根気強く伝えていて」
「そ、そーなんだ?」
「小包を玄関先に放置する人とは大違いですよね? ね、槙村さん?」
......あ、え。見られてたの?
「あの家、私の親戚なんですよ~。 葉月さんがクレーム処理してくれてたみたいですよ。 会社の班日誌に書いてありました」
「......あ、はは」
「無能と有能......葉月さん、どちらだと思います?」
「い、いや......でも、デブだろ。 キモいし」
ズズズズズと、黒いオーラが見えた。あれは触れたら死ぬ。本能が叫んでいる。それ以上踏み込むなと。
「葉月さん、痩せたら多分イケメンですよ? 誰かのように雰囲気イケメンじゃなくて。 よく見たら顔も整ってるし」
誰だその雰囲気イケメンて......もしかして、俺の事か?ば、馬鹿な。そんなハズはない......ないよな?
「決めた」
「え、な、なにを?」
にこにこしながら金見が横を通りすぎる。
「なんでもありません~」
な、何がなんだかわからん。これ、やっぱり夢だろ......?
金見は俺が好きなハズなのに、葉月の肩を持つなんて。
「うそだあああああああああッ!!!!」
そして俺を越えるイケメンだと?
「ありえねええええええええッ!!!!!」
――しかし、槙村はこの数ヶ月後、屈辱と敗北を思い知ることとなるのだった。
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