13.遠くて近い人
「お帰りなさい」
「あ、お疲れ様です」
お?もう誰も居ないかと思ってた。金見さんもまだ残っていたのか......いや、なぜだ?この人めっちゃ仕事早いはずだけど。
あ、忙しすぎて忘れてたけど、この人俺のメモ帳拾ってくれてたんだった。一応お礼言わないとな。
「あ、あの......俺のメモ帳、拾ってくれてありがとうございました。 すごく助かりました」
「いえいえ。 でもごめんなさい、中身を見てしまって......名前が書いてなかったから」
「それは別に大丈夫です......って、ん? 中身にだって名前書いてなかったはず? あれ」
「ぎくっ」
「俺のだってわかってて読みましたね!? あと、ぎくっとか口で言う人初めて見た!」
「で、でも、捨ててあったのは事実です! 拾って綺麗にして戻したからノーカンで! だ、ダメ?」
「......た、確かに。 ありがとうございました」
まあ、中身読んで捨てておいても良かったんだよな。それをわざわざ綺麗にしてくれて。いや、くっそイイ人じゃねーか。本当にありがとうございます!
「いーえ! でも、びっくりしましたよ。 最初にメモ帳みたときは、なんやこの妄想!? って引いてましたけど」
「あ......うん。 はい」
妄想に違いないから何とも返せない。小説は妄想、空想、夢や理想で出来ているから。
「でも作者名をネットで検索してみたら......びっくりしました。 あなた作家さんだったんですね」
「ま、まあ、一応。 底辺ですが」
「底辺!? あれほどPVとブクマ、評価ポイントを稼いでいて!? 総合ランキングにも載ってたし! スゴすぎっ!」
「あ、ああー......」
そうか、そうだった。多分この人ヒットした後のラストファンタジアを見たのか。ってか、妙になろう詳しくない?
「結構お詳しいんですね、なろう。 結構読んでるんですか?」
「いいえ! あなたの小説が初めてです!!」
「え!?」
「ラストファンタジア読んでみてあなたは天才だと感じました! あんなに感動したのは初めて! 私、映画とかドラマとか良く見るんですけど、あれほどボロ泣きしたのは初めてでした!」
「ぐはっ!!!」
「続きが気になって気になって! あと、ぐはっ!!!て口で言う人初めて会いしました」
く、やべえ!やべえよ!こんな面と向かってほめられるとか、これあれだよ、泣くよ俺!
こんなに嬉しいのか!顔を合わせて作品をほめられる事って、こんな......あ、やべ。
「――だから、なろうってサイトの事も沢山調べたんですよ! そしたらランキング入れるってかなりすごいって......え!? どしたの!?」
「あ、いや、気にしないでください」
「気にしないでって、かなり無理なんですが!? 何でそんなに泣いてるんです!?」
「本当、気にしないで......」
まるで今までの幸せがまとめて押し寄せてきたような、そんな風に思えた。
「と、言うわけで!」
「は、はい」
「作家としてあなたには長生きしてもらいたく思ってるんですよ! 私がずっとあなたの作品を読めるようにね!」
「? はい」
「だからあなたには痩せて頂きます!」
え?おん?
「あとそのうっとおしい前髪、切りますね! てか髪型かえましょ? そもそもうち配達業で接客業でもあるんです。 もっとさっぱりしましょ」
それは、まあ。いや、なに始まるんこれ?
「なに始まるんこれ? じゃないんですよ、葉月さん。 このままじゃあなた病気して死にますよ?」
「あー、まあ......ってか今、心読みませんでした?」
「あなたももっともっと作品を書いていたいハズです。 あ、はい読心術です」
読心術やば。一字も間違わずあておったぞ。やば。
「ぐ、具体的には? 何するんですか?」
「夜か朝、私とランニングしましょう。 あと暴飲暴食禁止。 出来なければ家に監禁(お仕事以外は)します」
はっはっは!なんか言ってるよ、金見さんは面白い人だなぁ!
「いや、本気ですから」
びくっ
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