11.あるなろう作家との出会い (白雪ましろ視点)
なろう小説を知った日から私は黙々と読み漁っていた。有名所を読みつつ、他にも何かないかなとランキングを眺める。
そしてそれから少しした時、新着欄という新しく更新された小説が出る場所に気がついた。
「......更新された作品が載る場所か」
沢山の作品。連載されたばかりのものから、中には数年連載されている物も。すごいな......なんで皆こんなに頑張れるんだろ。
多分、文書を書くのって大変だよね。本当にすごい。
新着欄をなんとなしにスクロールしていく。すると気になるタイトルに出会う。
『希望は闇の中にもある』
本当に?作者は......noranukoさんか。野良ってなんか良いよね。自由な感じがする。読んでみよう。
約1時間後、全14話あった話を読み終える。抱いた感想は内容は普通だったけど、文章が読みにくかった印象だ。あんまり小説を書いたこと無いのかな?しかもこれ、さっき更新された話で無理矢理物語を終わらせて最終回にしてる。
ちなみに評価は......ブックマーク2(1つは私)、評価0、感想0。
成る程......でも、頑張って書いてるのはわかった。よし、これも何かの縁ですよ。この人の作品を読み続けてあげましょう。
まあ、この作品で終わるかもしれないけれど......。
やっていた身だからわかる。評価も登録者も増えないのはかなり辛い。私は動画サイトだったからまだ日の目を浴びやすく、登録者も増やせたけれど、小説サイトはそうはいかない。割りとマニアックな場所だと感じるし、人気をだすのは厳しそうな場所だと感じる。
まあ、頑張ってね!
数ヶ月後、ふとnoranukoさんの新作が出ている事に気がつく。
「お、新しいのじゃん! 頑張ったね! どれどれ~?」
読んでみた感想は、前より文書が読みやすくなってる!あと内容が面白くなってる気がする。これは......文章力があがってちゃんと伝えたい事が伝えられるようになったからかな?
笑い部分もすんなり笑える。
......本当に頑張ったね。すごいわ。
しかし、途中で更新が終わってしまう。小説的にこれをエタると言い、完結してはいないけれど永遠に更新されない事をさす、永遠だ。
せっかく頑張っていたのに。うーん、もっと読みたかったなぁ。
そうこう思いながら時が過ぎ、ふと気がつくとまた新作が出る。そしてそれを読む度に私は思った。
この人、すごい努力しているなぁ、と。
どんどん質のあがる文章、表現力、アイディア。きっと真面目でがんばり屋さんなんだなと私は勝手にnoranukoさんのイメージを膨らませていた。
「......私、このままで良いのかな?」
ふと回りを見渡す。転がるゲームに漫画、作曲につかう機材。
そして、PCに映るかつてお兄ちゃんがくれたVTuberモデルの白雪ましろ。
彼女と目が合う。
私は、このまま終るのだろう。引きこもって、いずれおそらく不健康な生活で病気で死ぬ。
それでも良いと思った。だって、外は苦しいし、人は怖い。
『――でも、終わってない。 君を僕が支える!』
ふと、小説の一文が頭に過る。
『いいさ。 だったら......最期まであがくだけだ。 俺はそんな未来を受け入れない!』
新しく始まったnoranukoさんの作品、『ラストファンタジア ~ノアの旅~』の一文だ。
胸が、熱い。また白雪ましろと目があう。その時、見間違えかもしれないけど、彼女が微笑み頷いた気がした。
『出来るよ』
と言われた気がした。
私、出来るかな?こんな......ダメな私だけど、出来る?
ふと気がつくと、横でノアくんが手を差し伸べていた。間違いなく幻覚だ。引きこもり続けて精神的におかしくなってるんだ。
でも、私は――
ノアの手をとった。すると彼は消え、かわりに手にあったのはヘッドフォン。VTuber......うん。よし、わかった。
どうせこのまま朽果てるなら。やろう。
『......――もしもし、雪か? 久しぶりだな。 どうした』
「お兄ちゃん、私、本気で......VTuberになりたい」
『本気で......何かあったのか?』
「負けられない人がいるの。 その人は凄くがんばり屋で努力家で......私も負けられない。 だから教えて! どうすれば良いの!?」
『あー、うん。 それはお前が考えなきゃダメだよ......』
それは、そうだ。何でもお兄ちゃんに頼ってばっかりで......自分の力でやらないと意味ないもんね。
『けど、もし本気なら、お前も家を出てこっちこいよ。 アイディアはお前が出さなきゃ意味ないが、やり方や専門的な事は教えてやれるし、サポートできる......それで良いなら』
やっぱり、お兄ちゃんは優しい。
「ありがとう! 私、頑張るよ!!」
長かった髪を切り、再スタートをはかる。私は生まれ変わる。
それから数ヶ月、寝る間を惜しんで生配信や動画投稿、試行錯誤し、気がつけば登録者数が80万人を越えた。
やがて少しずつ時間がとれ始めた頃、頑張って連載を続けているラストファンタジアへ感想を送った。今度は途中で終わらないでと、願いも込めて。
『良い点』
『主人公のノアくんが勇気や知恵を振り絞り、果敢に向かって行くのが、とてもカッコいいですね! 魔物側にもそれぞれの物語があって互いに正義があり、退けないというのも私好みでした。 ぜひこれからもあなたの物語を読ませてください! 応援しています!』
それをきっかけに、noranukoさんの連載中の作品を朗読動画にしてため始めた。自作BGMをつけてみたり、イラストも友達に習って描いたりして、それを動画につけてみる。
「......何かすごい出来がいい気する」
思った以上に良い動画になった。あくまで趣味として始めたものだったが、こうなれば誰かに見せたくなるのは必然だった。
誰に?これって、普通に公開したらもしかしてラストファンタジアの宣伝になったりするのかな。
なるのなら、したい。何より私の好きな作品を沢山の人に知って読んで貰いたい。
よし、思い立ったが吉日だっ!投稿~ッ!!
ふっふっふ、これで反応をまつのみ!楽しみだなぁ。どれだけ反応してくれるか。って、そういえば......そういえば?
ふと気がつく。
「――って!!! ああああああああああーッ!!!!!」
自分でも信じられない程の大きな叫び声をあげた。その時私は気がついた。本来なら始めに気がつかなければならない事だったそれ。
そういえば。私、noranukoさんの作品......朗読してるの許可貰ってなくない?......や、やばい。これはヤバすぎる!?
プロフィール、男の人ってあるな。どうしよう、多分、作品をみる限りでは優しい人だと思うんだけど、今さら怖すぎる。こんだけ大量の動画あげておいて、好き勝手イラストとBGMつけて......ど、どどどど、どーしよう。
そんな事を悶々と考え、ベッドの上でばったんばったん暴れ悶えたりしながら数日が過ぎた頃。T☆itterにメッセージが届く。差出人はnoranukoさんだった。
「ぎゃあああああああああああーッ!!!!」
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