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97.さよなら槙村くん

 


「......ッ......うぅ......」


「あ、気がついた......大丈夫ですか、槙村さん?」

「......頭、痛ってぇ......一体何が......って、な!!? なんで縛られて!!?」


 俺はあの時、槙村がスタンガンで二人に襲いかかった瞬間に奴の腹を蹴り飛ばした。

 そのまま後ろの壁に頭をうちつけ気絶した槙村を暴れないよう縛り上げ、今の状況へ至ったのだ。


「槙村さん、残念ですがもうこうなってしまった以上は......」

「お、俺は......頼む! 許して! お願いします!! 葉月さん!! 俺が......いや、僕が間違ってました! 許してください!!」


 俺は突然豹変した槙村に驚き言葉を失う。先程までとはまるで別人の彼は二重人格かと思われる程の変わり様だった。


「俺が許す許さないじゃないんですよ......」


「まって! わかった!! じゃあ靴を舐めます!! 屈服の証として土下座で靴を......!!」

「えぇ」


「何でも!! 何でもするからッ!!!」


 目が......血走ってて怖いな。体も小刻みに震えていて、みていて悲しくなってくる。

 そんな事を考えていると、槙村は静かに頬を涙で濡らしはじめた。


「......うっうう......ひっく......うあっ、ああ......葉月さん......ぐすっ、僕は、ぼ、ぼぼぼ、くに......うああーん」


 そこには号泣し、地面へと頭を擦り付ける男がいた。槙村くん、26歳。彼はあれだけ俺を目の敵にし、正社員さまは偉いんやぞ!!とイキリ散らかしてた彼は今や地面がへこんでしまいそうなくらい擦り続けている......。


「ねえ!! 葉月さん!! わかりました!! 今までの無礼をお詫びすれば......そういう事ですか!?」


「え、いや違......そういう事じゃ」


「すみませんでしたすみませんでした、僕なんかが楯突いていいお方ではありませんでした、タメ口きいてすみませんでした、陰湿な嫌がらせしてすみませんでした、もう二度としません......あ、そうだ僕の給料、ボーナスを何割かお渡ししますので、どうかどうか」


 こ、怖ッ!顔面から汁という汁が垂れ流されていて、どろどろだ。

 後ろにいる雪と金見さんを見ると、雪は幽霊でもみたかのように青ざめていて、半笑いのまま......つーか、引き笑い?ドン引き?のまま固まり微動だにしない。


 金見さんに至ってはスマホをいじっている。あれもう槙村くん居ないものとされてるのかな?存在消された?


 とか槙村が不憫すぎるなあ、と考えていたら金見さんがいじっていたスマホを槙村へ見せた。


「槙村さん、これ......見えますか?」


「ひ、ひょえっ......? な、なんでしょかこ、こりは?」


 もう呂律が......槙村、しっかり!頑張って!


「これは葉月さんが今度出す小説なんですよ」

「し、小説......葉月様が......ですか?」


 いや、様て!


「そうなの。 この小説って、ネット上で大人気なんだ。 あるVTuberも大ファンで多分たくさんの人達が買ってくれる......わかる? 葉月さんはあなたにいくらお金を積まれようと、その提案を受け入れてくれはしないですよ?」


「う、あ? う、うそだ......葉月だぞ......無能でなんの力もない」


 お、槙村が息を吹きかえしたか!?よし、がんばれ!!


「......無能はあなたの方では?」


 雪さん!?急に喋りだした!!


「逆に考えてみてください......葉月さんはお仕事をしながら、帰れば小説の執筆をずーっと頑張って来たんです。 あなたは? あなたはこれまで、何かしてきたんですか? 無能で空っぽなのは......どっち?」


 いやなんてオーバーキル!!?


 雪の鋭い言の刃が槙村の心を深く刻む。あ、ああ......精神的にたえられなくなったのか、槙村の顔が青白く......ってかまた気絶してね?


 あれ......嘘だろ、床に染みが......槙村、おまえ......失禁して......。

 俺は震えた。この後、あれ掃除するんか、俺......泣きたくなってきた。


 すると隣でここまでの会話を聞いていた警官が、静かに頷いた。


「......うん。 あの葉月さん、あとはこちらでやりますから」


「え、あ......そうですか。 お世話になります」


「いえ、礼をいうのはこちらです。 あなた方のお陰でこのとんでもないストーカーを捕まえる事が出来ました......ここまでの映像と音声があれば、もう槙村をぶちこめるでしょう。 本当にありがとうございました」


「いえ......あ、あの」


「はい」


「これだけは、お願いなんですけど。 雪と金見さん......この二人に危害がくわえられる事のないように、そこは間違いなく......よろしくお願いします」


「はい、勿論です」



 こうして槙村は口から泡をふいたまま連れられていった。救急車呼ばないで大丈夫かな?とか思ったけど......まあ良いか。


 で、でも思いっきり俺の蹴りが腹に入っていたんだけどな......骨とか折れてないと良いんだけど。




 まあ、何はともあれ......さよなら、槙村くん。



 多分、お別れだ......。





そろそろ最終回付近です!読んでくださっている皆様、いつもありがとうございます!


そして告知。


次回作はハイファンタジーを投稿します。最強チートもの、主人公はヒーラー、ダンジョンも有り、ざまぁも有ります!

タイトルはまだ決まっては無いですが、ただいま執筆中です。


なので、もし興味のあるかたは作者ページからお気に入り登録をして通知を待っていてくれると嬉しいです。よろしくお願いします!!

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