94.ブラックあうと ① (槙村 視点)
「......ふぇ?」
肺の空気が情けなく口から漏れでた。
え、なんで......嘘だ......だって、俺が発信器を確認した時点でも、戻ってくるのに三十分はかかる距離だったぞ。
走って帰って来たのか?いや、でも警官と金見がいるのは......あ、てか金見はいてもおかしくないんだった!
葉月の家に入ってからその後、金見がやつの部屋から出たかどうかは知らない!
いやいやいや、違うだろ!!それにしたって、警官までここにいるのはおかしすぎる!!
これは、一体何が起きている......!?
「......あの、何か説明を......槙村さん?」
「あ、ああ。 そうだな......まず、誤解をしないでほしい」
そう、誤解。
この状況、一見すれば俺が葉月の部屋へ忍び込み、何かしらの怪しい行動をとっているかのように見えるだろう。
しかし実情そうではない......これは悲劇を食い止める為の行為なのだ。
葉月の行ってきた悪事、それはまだ証拠として確立できていない。これでは奴を罪と罰の監獄へと叩き込むことができないのだ。
となれば、何よりも証拠を手に入れる事、それが重要となるのだ。
「......誤解とは?」
「まず、君たち......女性のお二方。 あなた達はこちらの葉月という男に何か言うべき事があるんじゃないですか?」
そうだ、自分の口から......はっきり言われれば葉月も目が覚めるだろう。
そうなれば、話が早い。一気にチェックメイトだ。
「え、っと......葉月さんにと言うか、槙村さんになんですけど」
俺に?......え、もしかして告白かッ!?
おいおいおい、まずいって!今そんな時じゃないだろ、やめろよ~。
葉月の呪縛から解放されて、俺への思いが止まらなくなったか?
ふふ、まったく仕方のない奴だ......。
「槙村さん、なんでここにいるんですか?」
なんで、か。そりゃお前の涙を止める為だろーがッ!!
「ああ、安心しな。 すぐに決着をつけてやるさ......俺に任せろ、金見」
「え、な、何が」
「知ってるんだよ、お前らがコイツに......葉月 一樹に弱味を握られ、言いなりにさせられている事を!」
「!?」
警官が目を見開き驚愕した。
やっと気がついたか。そうさ、お前の捕まえるべき男は俺ではない......そこの男こそが悪の根元。
理解できるか、あんたは致命的な間違いをしている。それゆえに正義と悪の定義がずれている......俺をみろ。この俺の背中を!
正義の体現者であるこの俺が必ずお前を追い詰める。
「......君は、すごいなぁ」
ふ、やっとそれに気がついたか。
「この状況でまだそんな事を言ってられるとは......立場的にこんな事を言うのはどうかと思うが、スゴいよ君は」
「いえ、俺は単に女性に仇なす男が許せないだけですよ、ははっ」
「いや違うよ! 犯罪者君だからッ!!」
な!!?
「なッ!!?」
「思い出してごらん、君は何故前に私にマークされていたのか......それはストーカー行為と、独身女性の住む部屋の扉をガンガン蹴っていたからだよ?」
「ち、違う! あれは全て葉月を」
こいつ!何もわかってなかった!!俺が犯罪者......だと?
ありえーぬ!!
「いや、あれから僕君のこと調べてたけども、色々すごいみたいじゃない。 色んなお店を出禁になってるんでしょう? 女性絡みでさ......そのせいでお店やめちゃったなんて子もいるし」
「え、嘘......そんなバカな、だってそれは」
いや、それは......え、え?
「あの女性達は俺の事が好きで......」
「「「ええぇ......ッ」」」
な、なんて目でみるんだよ......まるで汚ならしいモノを見るような。
「槙村さん」
葉月が口を開いた。
「それ、あなたの勘違いですよ......?」
ええぇ......ッ。
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