93.追跡者 ③ (槙村 視点)
――葉月の部屋の中が見えない。
時間も時間なので、カーテンがひかれていて双眼鏡で覗こうにも、何も見えない。
つーか、やっぱりあれだな。No.1も脅されているのだろう、一向に部屋から出てこねえ。
これはもう監禁、立派な犯罪行為だぞ......わかってるのか、葉月。もはや俺は「葉月 一樹を救いたい」動画でも作りそうな勢いだ。
ん、てか俺が家戻ってる時にNo.1帰ってないよね?......一度発信器でも見てみるか。
「......えーと、発信器は」
え、あれ?
見ると部屋の位置には光がひとつも電灯していなかった。
「部屋に二人とも居ない!!?」
確認を......いた!!コンビニに行ったのか!!しかしここから結構遠いコンビニにいったんだな。
なんで......?
けれど、これは好機!!
今やるしかねえ!!
ピッキングツールOK!ライトOK!万一があったときのスタンガンOK!進行開始ッ!!
――葉月宅、扉前到着。
何気なく、あくまで葉月の部屋へ遊びに来た友人を装うんだ......ッ!
「――おーい、寝てるのか~?」
ドンドンと扉を叩き、友人を起こすふりをする。そして、もし通行人がきても良いようピッキングしている部分をからだで隠す!
カチャカチャといつもやっているように鍵穴をさぐり、形状を確認。
(ふむふむ、なるほど......)
いつものように、手慣れた作業。リズム良く進める解錠の手順。
カチャカチャ......ガチャン。
(――! よし、あいた!)
お邪魔しゃしゃ~っすよ、っと♪
カーテンはかかっていたが、電気はついてない。エコやねぇ、良いことですわ。ここだけはほめたるわ。
えーと、スイッチ、スイッチは~?......あった。
パチン
すぐに部屋が明るくなる。時計に視線をうつし、発信器をみる。
? まだコンビニ......遅くねえか?何選んでるんだ?酒?カップ麺?お菓子?
まあ、せいぜい偽りの幸せを楽しんでくれよ葉月くん。もう少しの辛抱だぞ、No.1......そして金見よ。
このミッションがコンプリートされれば解放への大きな一手となる。
彼女らの笑顔が、俺の背中を押し続けている。
コンセントの蓋を、こうして......カパッとな♪
さ、盗聴機つけるか。ちゃっちゃとやんねーとな。
ふんふん~ふふん~♪
――
『――......え、葉月さんが逮捕?』
何者かによって、葉月 一樹の罪が暴かれた。
彼は何ヵ月もの間、No.1と彼の勤める職場の美女、金見 春音を脅迫し、監禁まがいの事をおこなっていたのだ。
某日、彼が警察に捕らえられた日。
そこにいた彼女ら二人、そして銀髪JKの表情は葉月という悪魔的大罪人から解放された喜びに涙し、呆然としていたらしい。
罪人、葉月の最後の言葉は「だ、誰が俺の完璧な美女ハーレム生活を......ま、まさか、あのイケメン槙村......? いや、きっとそうだ。 あいつは賢く鋭い......そしてイケメンであり、カリスマの塊。 あとイケメンだ......くそ、してやられた! 悔しい! 悲しい! 絶望パンデミック!!!」だったそうだ。
悲しい事件だった。
俺はその事件を解決し、No.1と金見、銀髪JKの笑顔を取りもどせはしたが、いくら醜悪な所業をなしていたとはいえ、葉月は大切な同僚だった。
一抹の哀しみが俺の心を薄く切りつけた......彼も元は優しく良い男だったに違いない。
この不況と荒んだ人間関係により、産まれた怪物だったのだろう。
しかし、罪を憎んで人を憎まずだ。
「――気にすること、ないですよ?」
No.1が僕の体を抱きしめ言った。
「あなたは正しいことをしたんです......だから、こうして私は救われてる」
「......そう、かな。 ありがとう」
No.1は事件の後すぐになんやかんやで俺が事件を解決したとわかったようだ。
救世主であるのを知った彼女は俺へ交際を申し込んできた。
俺の答えは勿論、yes。
君の心の傷を癒し続けよう......この生涯をかけて。と、返事を返してやった(とろけるNo.1の笑顔。 ふふ......)
あ、あと金見も銀髪JKも俺と付き合いたいって言ったから付き合う事になった。
傷心した彼女らを癒すのも俺の仕事だ。これは浮気ではない......優しさだよ。
こうして俺と葉月の戦いは幕を閉じた。しかし、全てはこれから......これから俺が彼女らとの幸せをどう築くかが
「――さん」
うるせえ、まて今いいとこ!
「――槙村さん」
あん!?
「――いや、うるせえよ! 今から俺はNo.1と......かな」
振り返ると葉月とNo.1、金見、そしてあの時の警官が背後にいた。
「俺の部屋で......なにしてるんですか、槙村さん?」
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