91.追跡者 ① (槙村 視点)
――え、えええ、えぇー......。
葉月とNo.1の追跡をしていた俺は驚きと共に嘆いた。
いやいやいや、葉月の家ついたと思ったら二人で入っていったんすけれども?
これ同棲してません?
いや、帰りに寄っただけの可能性も......あるか?
これは調査せねばなるまいよ。
えーと、どうすっかな~。とりあえず二人が出かけるタイミングまで待って、どうにか忍び込む......そして盗聴機を仕掛ける。
長期戦になるな。一旦張り込み道具をとりに家に帰るか、寒いし。
あいつらも帰ってきたばかりだから、すぐにはどこに行くこともないだろう......まあ、行ったら行ったで良いんだが。
つーかさっき人混みに紛れた時、発信器つけたんだった。それ確認すりゃいいか。
まあ、俺なら、ピッキングして盗聴機つけて出てくるのに5分あれば済むから問題ないんだけどね。
さて、そうと決まれば帰るか。
草葉の影から立ち上がり、家へ向かうために振り返ると一人の女性が俺を見ていた。
「......え、な、何してるんですか、槙村さん」
同僚であり、職場の華......麗しの金見嬢であった。
「いや、えっと......散歩。 金見、あ、いや、金見さんこそどうしたの? こんなところで」
「私は葉月さんに用事があって。 って、いや誤魔化せないですよ。 散歩なのになんで草むらに溶け込んでいたんですか......マジでビビった」
「ふふ、惚れるなよ? 俺の隠密追跡能力に。 気配を消すのは勿論、景色と一体化するとんでも技能! ......惚れてもいいぞ」
「いや、どっちだよ! 惚れるとか惚れないとかそんなレベルじゃないですが......」
そんなレベルじゃない!?......ふふ、そんなレベルじゃ無かったか。そうか......ふふ。
葉月、悪いが金見は俺の意外な才能の前に惚れなおしたみたいだ......金見の心、取り返させて貰ったぞ?(※槙村の彼女だったことはありません)
てか、ふつーに金見と遊んだ方が有意義なのでは?葉月の家を張るより楽しいだろ。
「金見、どうだい? もし時間があるなら今から遊ばないか?」
「いや葉月さんに用事があるって今言ったじゃないですか!? つーか呼び捨て!?」
「ははっ、そんな事は別に良いさ」
「は!? え!? いや良くないですが!?」
「葉月が絡む用事など大抵大したことじゃない」
「どゆこと!? なんであんたにそんな事わかるの!?」
「だから行こう、俺と遊びに......あ」
そういえば、誘っといてなんだが、俺って出禁になってないお店が少ないんだよな。
ボーリング、カラオケ、カフェなど遊べるところやデートに使えるお店は軒並み全滅してるし。
家しかないな。......まあ、俺に気があるみたいだし、くるだろ?くるでしょ!
「ごめんな、金見」
「いや呼び捨て......え、ごめん?」
「ちょっと事情があってね。 誘っておきながらで申し訳ないんだけれど、お家デートでも大丈夫?」
「......」
こんなこともあろうかと、いつも部屋を綺麗にしといて良かった。
俺のような良い男はいつ彼女が出来てもおかしくないからな。日々、準備は怠らないのさ(奇跡的に彼女出来たことないけど)。
って、あれ!?金見!?
彼女の表情がひきつった笑みを浮かべたまま固まっている。
や、ヤバい!!これは......そうか、そうだよな。
今日はかなりの気温の低さだもんな。くそ、俺としたことが気を遣えずに......まあ、こういう少しぬけた所も俺の可愛いポイントなのかもしれないけどね。
しかし、やはり金見を早く家へ連れていってあげないと!このままでは風邪をひいてしまう!
俺はキメ顔で頷く。
「金見、行こう」
「......え、いや......きもちわ」
? どうした?なんだ?声が小さくて良く聞こえない。
「すみません、私......行きますね......」
「え、あ......」
金見は葉月の家へと足早に向かっていってしまった。
......どういうことだ?今、確かに彼女は俺に心をひらいていた。
なのに行きたくもない葉月の家へと行ってしまった......
あの、ひきつった笑み
はっ! そういう......事だったのか!?
金見、お前......
葉月に、脅されているのかッ!
俺は改めて奴に鉄槌をくだすことを心に決めた。そして、金見の心にと平穏を取り戻すことを、誓った。
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