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10.雪となろう小説 (白雪ましろ視点)

 



 真城 雪、高校2年生。




「あの、真城さん」


 振り向くと、頬を赤らめてたっている同級生の男の子。


「......はい」

「真城さん、僕、あなたの事が好きです。 お願いします、僕とお付き合いしてくれませんか!」

「あの、ごめんなさい、私は誰ともお付き合いする事はできないんです......ごめんなさい」

「それは、どうしてですか? せめて理由を教えてください......!」

「勉強しなければいけないので......その、余裕がないんです」

「......そう、ですか」


 そう、勉強。私には最高のボカロ曲を作るという目標がある。その為にはボカロの勉強しなければならない!!

 そして必ず登録者1000人を突破してやる!(今はまだ325人だけど)

 だから人とお付き合いしている時間はないのだ。


 これまで三人の男の子に告白をされたが全て断ってきた。決して恋愛に興味が無かった訳じゃない。でもボカロに時間をつかうために断ってきた。私は「好きな事」に全力を尽くしたい。


「お兄ちゃん、ここって」

「んおー? ああ、そこはな、こうして......」


 ボカロはお兄ちゃんから教えてもらった。私はそれまで全然知らなかったのだが、お兄ちゃんはボカロPとしてかなり有名らしく、作った曲は再生数が鬼高く、最高で1000万再生のものが1つあった。私はここにきて初めてお兄ちゃんを尊敬した。なまらすげえ!と。


 そして次第に思うようになる。私もこんな風に、沢山の人の心をつかみたい!想いを音に乗せて伝えたい!


 それからお兄ちゃんにボカロの作り方を教えて貰い、やっと登録者が300人を越えた。ここまで二年かかった。

 初めて作った曲は一週間で約100再生だった。グッドが24くらいで、お兄ちゃんは「初めてなのに凄いな」とほめてくれたし、びっくりするくらい嬉しかった。初めて自分の考えて作った物が評価されている事に今までに感じたことのない高揚感と喜びがあった。


 でも、それと同時に心の片隅に感情が芽生えた......「悔しい」。私もお兄ちゃんとまではいかなくとも、もっともっと上手にボカロ曲を作って評価されたい。そう思うようになった。



 しかし、私はあまりに夢中になりすぎていたようで、回りが見えていなかった。



「ねえ、あんたさ」

「......な、なに?」


 同級生の女の子が怒りを露にしながら話しかけてきた。


「西城くんの事、ふったって本当なの?」


 西城くん?あ、この間の男の子か。


「う、うん......私、習い事とかで忙しくてさ、お付き合いしても、あんまり――」

「うぜー。 なんだよそれ、じゃあそんな男に愛想ふりまくなよなー」


 え、まいてませぬが?ふつーに生活してますが!


「まーじ調子のってんね? 覚悟しときなよ」

「な、なにが? 私、別に調子になんて」

「ふん」


 後から知った事だが、その女の子は西城くんが好きだったらしい。それから腹いせか、私へのイジメが始まった。始まったイジメは炎のように燃え上がり、やがてクラス全体での物になった。


 物を隠され、机に花瓶を置かれ、ノートを破かれ、まあ、色々とやられた。先生は厄介な事になってるとは感じていたみたいで、私に皆と仲良くできないかな?と相談してきたが、その言葉をそっくりそのまま返したかった。


 それから程なくして私は学校へ通うことが出来なくなった。


 要するに引きこもりだ。両親はなげいた。また失敗した、と。




「雪、久しぶりにお兄ちゃんと外でないか?」

「......嫌。 怖い」

「でもそろそろ髪切らないとさ。 腰まであんじゃんか」

「いいよ。 私は家の中で一生終える......終えてみせる」

「なんだその覚悟は! う、うーん......」

「なんでそんなこと言うの? お兄ちゃんだって今は外に出たりしているけど、引きこもりニート穀潰しだったじゃん。 私の気持ちわかるでしょ?」

「あ、ああ......(そこまで言うか)」

「私は好きなものに囲まれて、好きな事をして......それで」


 それでどうなるのだろう。


「わかった。 なら、お兄ちゃんは何も言わない。 でもお兄ちゃんが何も言わなくても、母さんや父さんはお前をそのままでは置かないだろう」

「でもお兄ちゃんはずっと引きこもりクソニートだった」

「......(そこまで言うか)」

「私も引きこもりクソ穀潰しニートになる」

「いやまて、お前は勘違いをしている」

「勘違い?」

「俺はニートだったが、金を稼いで家にいれてたぞ」

「......は?」

「ボカロとか動画を色々作って収益化してたからな。 ただ、母さんと父さんはそういうのに理解がないから、そんな仕事は恥だと思ってるが......」

「でも、お兄ちゃんはあたま良いし......私になんか上手くできない」

「......まあ、あたまがどうとかは関係ない気もするが。 ただ、俺はそろそろこの家を出る」

「!?」

「この部屋はこのままにしとくから好きにして良いぞ」

「なんで!? お母さんとお父さんに追い出されたの!?」

「いんや」

「じゃ、じゃあなんで!?」


「俺は仲間と一緒に夢を追いかける。 ネットで知り合った仲間達だ......だからコイツらの所にいくのさ。 一緒に曲を作る」


 夢を......凄い。曲を仲間と......。


「雪、お前もそれで生きていくなら、証明してみせろ。 出来るんだって所を」

「......私には、出来ないよ」


 だって、私、頑張ってきた。これまでだって沢山頑張ったんだ。でも、再生数だって伸びないし批判コメントだってくるし、登録者も全然伸びなくなって......あれ?


 苦しい?なんで私、これ続けてるの?




 それからお兄ちゃんは少しして居なくなった。私はお兄ちゃんの部屋を貰い最早要塞と化した部屋に引きこもって、アニメやらゲーム三昧の日々を過ごしていた。ボカロは曲作りが辛いと感じてしまったあの時、辞めた。


 そんな時、あるアニメに出会う。死んだら世界が戻るある男の子のお話。その主人公は死に戻りを繰り返し大切な人を救っていく。


「すごい......よくこんな話思い付くな。 原作漫画もみたい」


 そう思い調べると、これが漫画原作では無いことを知った。





「小説家になっちゃう?なろうよ!......え、何これ無料なん!? なまらすげえ」




 これが私、真城 雪となろう小説との出会いだった。






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