とある少年の記憶
ラジオアプリSPOON内の企画「ボイドラDICE」に投稿したボイスドラマ「少年達の革命」のサイドストーリーです。
僕は動かない脚を抱えて、つまらない毎日を過ごしている。
生まれつき、僕の両足は麻痺していた。
だから車いすの操縦はお手の物。
近所の子供たちのからかわれても、猛スピードでタイヤを回して突進すれば、次の日からは僕を見て逃げるようになった。
学校では勉強を頑張った。
スポーツの授業に、僕は参加できない。
せめて勉強ではトップになってやると机にかじりついて、視力が悪くなった。
今度は瓶底眼鏡をからかわれるようになった。
テストはすべて100点。
どんなに難しいとされる問題も、僕には簡単すぎてつまらない。
僕に合わせて、テストの最後に挑戦問題が用意されるようになった。
120点は、僕だけじゃなかった。
2クラス向こうのでかいあいつ。
1人だけ頭一つ飛びぬけてるからすぐにわかる。
そいつはいつも一人でいるようだった。
誰も近づかない。
僕と同じだ。
僕はほかの全員から見下ろされているけど、あいつは逆に見上げられてるんだろうな。
とたんに親近感がわいて、観察してみることにした。
毎日一人で投稿し、一人で休憩し、一人で昼食をとって、一人で帰っていく。
同じことの繰り返し、何のイレギュラーも起こらない。
まるで機械のようで、つまらん男だった。
ホリデーに入ると、観察の続行は不可能になった。
と思いきや、家が思いのほか近くだったようで、窓の外を眺めていると、家の下の道路を走っていくヤツの姿をたびたび目撃するようになった。
毎朝息せき切って、かけていく。
なあ、お前毎日何しに行ってるんだ?
そんな顔、学校じゃ見たことなかった。
夕方になると、今度はゆったりとした歩調で戻ってくる。
朝見た白いシャツは、夕方になるといつも汚れていた。
いつの間にかヤツが道路を行き来するのを眺めるのが日課になった。
毎日8:35に家の下の道路を横切り、帰りはまちまち。
走って行って、歩いて戻ってくる。
明日でホリデーも終わりというころ、8:35になってもヤツは現れなかった。
しばらく待つと、15分後に姿を見せた。
いつも荷物らしい荷物など持っていないくせに、大きなリュックをしょっている。
毎朝あんなに急いでいたのに、なぜか歩調が重たく見える。
前を向いて疾走する顔は、その日だけは地面を見ているように見えた。
そんな姿勢も、学校では見たことなかったな。
顔が見えないのは惜しいが、学校で尋ねてみればいい。
「走っていくお前を見かけたが、いったい何をしていたんだ?」と。
つまらない作業の連続に見えた学校生活で唯一、楽しみだと思える予定ができた。
ホリデー明け、ヤツは来なかった。
遠くへ引っ越したらしい。
僕はまた、つまらない毎日を過ごす羽目になった。




