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31.エピローグ

おはようございます!

 月の光が優しく降り注ぐ時間帯。

 レイストの南にある資材置場に、一つの影があった。


「予定通りとはいえ、本当にゲイリューダを倒してしまうとは。

 やはり私の目に狂いはなかったみたいですねぇ」


 クックッと沸き上がる喜びを噛み殺したように男は笑った。


 辺りには五つの男の死体が転がっていた。

 仮面の男はそのうちの一つ、ゲイリューダの死体へと歩み寄ると傍らにしゃがみこみ、自らが施した頭蓋骨のような刻印に触れる。


「殺しても誰も困らない悪人というのは、探してみると思っているほどいませんからねぇ。

 あなたの【戦士】は大切に使わせていただきますよ」


 ゲイリューダの中から光る玉のようなものが、手の刻印を通して仮面の男へと吸い込まれていく。


「さて、あの二人にはもっと強くなってもらわないといけませんねぇ。

 私の野望を叶えるためにも、ね」


 すうっと男の姿は闇へと溶けていく。

 夜風が静かに通り抜けた。


 ◇


 ゲイリューダを倒してから。

 俺は街の衛兵の元へ出頭した。

 状況が状況だったとはいえ、俺は四人もの人を殺したのだ。

 討伐許可が出ている盗賊とは違い、いくら悪人でも相手は冒険者である。

 償うべき罪は償わなくてはならない。


 ミリアには申し訳ないが、罪が清算されるまで待っていてもらうことにした。

 ミリアは自分も同罪だと主張したが、手を下したのは全て俺だ。

 強いて挙げるなら、ゲイリューダを殺すのに加担したことだが、そもそもゲイリューダの場合は特殊だ。

 魂を斬るという、俺にしか判断のできない殺害方法であり、俺の主張以外に証拠はない。

 それがどう判断されるかわからないが、必要に迫られない限り、明らかに被害者のミリアが償う罪などないだろう。


 罪の清算にいったい何年かかるか。

 もしかしたら極刑になるのではないか。

 だとしたら、死ぬ前にミリアと話がしたいな。


 そんなことを考えながら牢で過ごすこと数日。

 事態は思わぬ方向へと転がっていった。


 なんと、なんのお咎めもなく釈放されたのだ。

 釈放される前に衛兵に聞いた話では、ミリアを攫い拘束するという、明らかにゲイリューダ側に非があったこと。

 殺された者たちは各所で悪事を重ねていたらしいこと。

 そして、冒険者を守る組織である冒険者ギルドを含めた誰からもゲイリューダたちを擁護する声が上がらなかったことから、釈放するということになったらしい。


 俺にとってはありがたい話だが、あまりに都合が良すぎる気がする。

 悪党とはいえ人を殺しておいて無罪放免だなんて、そんなことあるのだろうか。


 どうにも釈然としない俺は衛兵に詰め寄ったが、納得できるような回答は得られなかった。

 ただ一つ、面倒臭そうに衛兵がこぼした言葉が、妙に頭にこびりついた。

「上からの命令なんだ」、と。


 いったい誰がそんな命令を出したのか。

 俺は知らないうちに、何かに巻き込まれているのではないだろうか。


 数日ぶりに見たレイストの街並みが、どこかよそよそしく感じた。


 ◇


「【斬魂】!」


 光の斬撃に魂を斬られた魔物が、光の粒となって消えていく。


「アレクさん! やりましたね!」


 光の向こう側から、笑顔のミリアが現れた。


「なんとか、な。だが、遠距離攻撃は厄介だな。

 今回は攻撃の間隔が広かったからどうにかなったが、連続攻撃してくる相手が出てきたら今のままだと倒せる気がしないぞ」


「確かにそうですね。

 それに魔物自体も強くなってきていますし、アレクさんが一人で牽制するのも、そろそろ限界かもしれませんね。

 私も一緒に前に出ればいいんでしょうけど、今の私の機動力だと相手の隙をつかないと接触なんてできないですし」


「まあ、反省会は飲みながらじっくりやるか。

 今は目の前の勝利を素直に喜ぶとしよう」


「そうですね」


 掲げた俺の右手に、ミリアの右手が重なる。

 パンッと小気味いい勝利の音がダンジョンに響いた。




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

当初の予定では第一章完という形にしようかと思っていました。しかし、想定以上にpvが伸びず、筆者のモチベーション的に本作を書き続けることが難しくなったため、ここで完結とさせていただきます。

回収できていない伏線など思うところはありますが、楽しく執筆できたので満足です。

ご縁がありましたら、次回作でお会いしましょう。


それからいつもの。

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