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第5話 新しい日常

 目が覚めると見知らぬ天井だった。


 半ば本気で「え、ここどこ?」と思いかけたけど、そういえば陽彩の家に居候することになったことを思い出した。その過程でイヤなことも思い出してしまった。それを吹き飛ばすように勢いよく飛び起きた。


 時間はそれなりに早いようで太陽もまだ上がり切っていない。時間にして大体5時前といったところかな。


 一晩寝たおかげか、大分メンタルは回復していた。


「そういえばオレいつの間に寝たんだろ?」


 昨日陽彩の家に来たあとのことを思い出そうとしても何も思い出せない。あれ、何したんだっけ?


 あ、そういえば陽彩の家について少ししたら、眠気がヤバいくらいに襲ってきて、そのまま寝ちゃったんだ。


 少し離れた床にタオルケットをお腹の上に乗せただけの状態で陽彩が眠っていた。ここでオレが陽彩のベッドを占領していた事実に気付いた。でもなんであんなところで眠っているのだろうか。


「うう、トイレ……」


 起こしてしまっては申し訳ないので、足音を殺してフローリングの床を歩いていく。朝早いせいか、車の通る音も生活音もあまりなく、聞こえてくるのは鳩の泣き声と陽彩の寝息だけだ。それ以外の音はなく、静寂に包まれている。


 ――トゥリルルル ⤵ ルン トゥリルルル ⤴ ルン


 突如として謎の音楽が鳴り始めた。


「ひゃあ!?」

「朝っぱらから何騒いでるんだよ……」


 起き上がった陽彩が枕元に置いていたスマホの画面をスライドして音楽を止めていた。あの謎の音楽はどうやらアラーム音だったようだが、オレはそんなを気にしている場合ではなかった。


 足の付け根から太ももにかけて温かな液体が流れ落ち、ズボンを湿らせていた。それと同時に快感ともいえる解放感を味わうことになった。部屋中に濃厚なアンモニア臭が立ち込める。


「ち、違う……漏らしたんじゃない……勝手に出たんだ……」

「ん? あ、あー……俺が掃除しとくから、とりあえずシャワーでも浴びてきな」


 陽彩がやさし気に声をかけてくれることが、何よりも心を抉る。まだ茶化してくれた方が気が楽だったのに。妙に優しいせいで羞恥心を掻き立てられる。


 オレは陽彩にすすめられた通り浴室に向かった。浴室は玄関から入ってすぐにある、向かって左側の扉にある。洗面所兼脱衣所で尿で汚れてしまった服を脱ぎ捨てて、さっさとお風呂に入ってしまう。


「着替えここに置いとくぞ」

「え、ああうん。ありがと」


 オレは長湯するタイプではなく、いつも烏の行水ですませている。だから今日もさっさと体を洗ってしまって、陽彩が脱衣所から出ていったときを見計らってお風呂から上がった。


 陽彩が用意してくれた着替えは、半袖のパーカーと短パンだった。しかし今のオレと陽彩の身長差は目算30㎝以上はあるだろう。つまりサイズが全然合わないのだ。


 試しにパーカーを着てみれば、何と言うことでしょう、ただのパーカーがワンピースに早変わりしたではないですか。ただ、胸のあたりがかなりきつい。そして短パンは……ウエストの差がありすぎて、そもそも履けなかった。


 ふと洗面所の鏡に映る自分の姿が目に入った。


 熱めのお湯でシャワーを浴びたため、色白ということも相まって火照ってピンクに染まった肌、髪はしっとりと水気を帯びていて、かなり色気を感じる。体にぴったりと張り付き、体の線が見て取れる。


「うわっ、エッロ」


 オレは脱衣所を飛び出して陽彩に見せてやることにした。


「なあなあ陽彩! オレくっそエロくね?」


 オレの粗相の後始末をしている陽彩の背中に向かって飛びついた。陽彩は多少バランスを崩したが、それでも持ちこた。さすが運動部に所属してるだけのことはある。


「なあなあ、エロくね?」


 オレの質問に何も答えてくれない。それどころか頭を抱えている。どうした、頭痛か?


「……俺だって男なんだぞ」

「知ってるよ?」


 陽彩の言葉の意味が分からない。そりゃ陽彩は身長が高くてガタイがいいから、オレと違って女に見間違えられることはないだろう。……あ、オレ今は女か。


「何もわかってないな。とりあえず俺にくっつくな!」


 陽彩はオレを遠ざけるようにシッシッと手を振った。なんだよ、せっかく世紀の発見を見せてやろうと思ったのに。


 その後、陽彩が掃除を終えるまで部屋の隅で膝を抱えていた。頬を膨らませ見るからに不機嫌ですよアピールを全力で行いながら。


「お前そんなに子供っぽかったか?」

「はあ? 身長が小さいって??」

「そうはいってねえよ。そんな風にしてると……かなり可愛いぞ」


「今……カワイイって言ったか?!」


 陽彩としてはちょっとからかった程度だろうけど、それはオレにとって禁句である。


「死ねや!」


 陽彩の顔面目掛けてハイキックを繰り出す。身長が足りないから顔じゃなくて、腹までにしか届かないけど。


「なんでパンツ履いてないんだよぉーーーーッ!!」


 この日、初めて陽彩に一撃加えることに成功した。

さっそく毎日投稿がつらくなってきました。感想をもらえたらモチベが爆上がりするのになぁ|д゜)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 王道ts is 神、すご [気になる点] ただの願望ですが1話の文量を増やして欲しい。でも作者さんのモチベが下がるなら良いです(身勝手) [一言] 題名見た時から名作になると思ってました
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