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【書籍完結&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく当たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)  作者: シンギョウ ガク
南部辺境都市ユグハノーツ編

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22:やっぱり父娘の関係は難しい

誤字脱字ありましたら誤字報告へ


グライド大峡谷を南下しながら、遭遇した黒角山羊(ブラックホーンゴート)睡眠羊(スリープシープ)、火喰い鳥などの魔物を魔法を駆使して退治していた。


 剣だけでも倒せない相手ではないが、やはり魔法を使うと遠距離からも攻撃ができて危険度がグッと下がるし、攻撃の選択肢も増えるので戦いやすかった。



「フリック様は接近されても剣術で対処できるので、有り余る魔力を攻撃魔法に特化できて羨ましいです。わたくしの場合、魔物に接近されたら近接戦闘能力は皆無なので敗北は必至ですし、接近させないため物理障壁(プロテクトガード)や飛来物避けに空気壁(ウィンドバリア)を併用するので魔力の消費も馬鹿になりません」



 魔法をかいくぐって近寄ってきた睡眠羊(スリープシープ)の群れの一部を、剣で退治した俺の様子を見ていたノエリアがそんなつぶやきを口にしていた。



「ノエリアは白金等級だけど、今まで誰かと組んでやってきたのか?」



 通常、魔術師は近距離戦闘ができない人が多いので誰かと組んでいることが多かった。


 ノエリアも近接戦闘能力は皆無と言うからには、誰かと組んでいたのかもしれない。



「いいえ、わたくしはソロ冒険者です。領主の娘ということもあり、他の冒険者の方は遠慮されるので」



 たしかにノエリアはユグハノーツの領主である辺境伯ロイドの娘なので、庶民である冒険者たちが彼女とパーティーを組んで一緒に依頼を受けるにはちょっと気が引ける身分なのは分かる。


 けれど、そういった状況でありながら、ソロの魔術師で冒険者として最高実績を積んだ白金等級まで到達したとなると、彼女は本当に優れた魔術師なのだと思われた。



「魔術師のソロで白金等級まで……改めてノエリアのすごさを感じるな」


「幸いにしてフリック様ほどではないですが魔力も一般の魔術師より豊富で、魔法の知識も多少ありましたし、使える魔法の種類も多めなので……。それらを駆使して魔法の実地検証作業として強めの魔物討伐を続けていたら白金等級になっておりました」



 ノエリアはいつも通り抑揚のない声で、淡々とすごいことを言ってのける。


 彼女が白金等級まで達したのは、色々な依頼を受けたのではなく、単純に魔物討伐依頼の高難度依頼をいくつも達成したことで与えられたようだ。



 見た目は幼くて俺よりも年下に見えるんだけどな……。


 実力は本物ということだ。



「なるべく近寄らせずに先制攻撃で魔物を倒し切るとかすごいよな。俺はどうも剣の間合いで戦う癖が抜けきってないのもあって魔法で倒し切るという発想に至らない」


「フリック様は両方の才能をお持ちですし、ご自分が戦いやすい距離で戦われる方がいいと思います。魔法が使えるからといって魔術師の立ち回りをする必要はないかと。魔法は剣の間合いで届かない相手を攻撃する手段だと割り切っていいかと思います」


「そういうものか」


「そういうものです。フリック様は魔法も剣も使える珍しい素質を持たれているので、わたくしの立ち回りの真似は必要ありませんよ」



 ノエリアはそう言うと、俺が倒した睡眠羊(スリープシープ)の毛を討伐の証として持ち帰るためナイフで切り取り始めた。



 魔剣士として剣も魔法もバランスよく使う戦い方をこれから模索していくしかないな。



 ノエリアの言葉を心に留めると、すぐに俺もナイフを取り出し睡眠羊(スリープシープ)の毛の切り取り作業を手伝い始めた。彼女にだけやらせるわけにはいかない。




 その後、俺たちは順調にグライド大峡谷を南下する行程を踏破し、昼前には目的地に近いヤスバの狩場に到着していた。


 前方にはヤウェハ山麓、その左手にヤスバの狩場がある。なだらかな丘と草原が続く見晴らしのいい場所であった。


 その奥の方にこの前調査隊と一緒に行った魔境の森がチラリと見えた。



「ここがヤスバの狩場か。やたらと見晴らしがいいが」


「ヤウェハ山麓から湧き出す水分が豊富すぎて木が育たないため、大半が湿地か草地になってますし、水場も多いです。ここが狩場と言われるのは別の理由があって――」



 ノエリアがそう口にしかけた時、遠くの方で咆哮が聞こえた。


 そちらに目を向けると、上空をドラゴンが飛んでいた。



 あれは翼竜のワイバーンかな……かなり遠いけど、あの距離であの大きさだとかなりデカいサイズだよな。


 足になんか持ってる。


 ああ、餌となった魔物か。


「なるほど翼竜たちのエサ狩場って意味か」


「はい、そういうことです。水場に集まる魔物を狙って魔境の森から翼竜が餌を狩りにくるのでそういった名前が付いたそうです。青銅等級の方はあまり奥まで行く人はいませんね。翼竜に襲われる危険性が高まりますし」



 剣だけの時、翼竜にはアルフィーネとともにかなり苦戦した記憶がある。


 上空を自由に飛ばれるので、剣での攻撃が当たりにくい存在なのだ。



 けど、今の俺なら魔法があるのでそう恐ろしい存在というわけでもない気がする。


 地面に叩き落せれば、ドラゴネットよりも容易な相手だ。



 とはいえ竜種であることには変わりなく、そんな魔物が飛び交う場所に青銅等級の冒険者は近寄らないだろう。


 そんな場違いな場所へ行くとなるなら、普通冒険者ギルド側が止めるはずだが……。


 止められた記憶は一切ない。



「レベッカはヤスバの狩場に行く俺を止めなかったが」


「もっと危険な魔境の森から余裕で帰還した人にとっては、ここは危険でもなんでもないということですよ。フリック様は剣の腕だけでも白金等級に至るでしょうし、おまけに魔法の才能もあるのでユグハノーツの冒険者ギルドも一目置き始めてるということです」



 ああ、そういうことか。


 冒険者ギルド側も辺境伯様たちから、魔境の森での俺の戦いの話を聞いていたようで止めなかったらしい。



「なるほど……」


「父上が実力のある冒険者を積極的に騎士へと採用しているせいで、ユグハノーツの冒険者ギルドは、魔物討伐系の白金等級冒険者が慢性的に不足してますからね。戦闘能力が高い人の昇級は他の都市の冒険者ギルドよりも早いかもしれません。あまりに不足して高難度の魔物討伐依頼を騎士たちが代行してることもありますので」


「同行していた護衛騎士たちが実戦から遠ざかってなかったのはそういう理由もあったのか」


「ええ、今も冒険者ギルドから騎士隊に依頼されてますし」



 近衛騎士団の騎士とは違い、辺境伯ロイドの家臣の騎士たちは、騎士となった後も冒険者としての魔物討伐依頼を受けていたようだ。


 だが、冒険者ギルド側も次々と能力に優れた冒険者を引き抜かれたら困るだろうに、なんで何も言わないのだろうか。



 俺は思った疑問をノエリアにぶつけてみた。



「冒険者ギルドは辺境伯様の引き抜きに何も言わないのか?」



 ノエリアが少し考え込むしぐさを見せた。



「ユグハノーツの冒険者ギルドは、父上が最大で唯一となっている出資者なので文句が言えないのかと」


「えーっと、ユグハノーツの冒険者ギルドは辺境伯様の物ということか?」



 ノエリアはコクンと頷いた。



「父上は辺境伯となると、国王からもらった報奨金を投じ、ユグハノーツの冒険者ギルドを領主直轄機関にしてます。『大襲来』に備える人材を集めるのが目的だと言ってましたけど」


「それが今も続いていると」


「ええ、父上は『大襲来』に対しては病的なまでの心配性なので、今後も備蓄と騎士の採用はやめないと思います」



 ロイドが常日頃から『大襲来』に対する備えを怠らずにいるのは、昨日の屋敷を訪問したことで分かっていたが、冒険者ギルドまで買い取って備えているとは思わなかった。


 娘のノエリアは病的な心配性というが、二度目が起きない保証はどこにもないのだ。



 生き残った大人に聞いた話だが、『大襲来』はなんの前触れもなく発生したそうだ。


 二〇年起きなかったが、明日急に発生してもおかしくないのである。



「辺境伯様、二〇年もブレずに備えてるとはすごい人だな」


「わたくしもそれについては父上を尊敬しております」


「それを辺境伯様に言ってあげればいいのに」


「……さて、時間も迫っておりますし、お喋りはここまでにして、ガウェイン様の工房へ向かうとしましょう」



 ノエリアは話題を逸らすと、父親の書いた手書きの地図に目を落とし、ガウェインの工房に向かって歩き出した。



 ノエリアも色々と思うところはあっても、やっぱり父親のことは尊敬しているようだ。


 お互いに素直になれば、あんなにぎくしゃくはしないはずなんだけど。


 父娘関係ってのはやっぱり難しいみたいだ。


本日月間総合三位となりました。皆様の応援のおかげです。<m(__)m>


アルフィーネ、フィーン/フリック、ノエリアがどうなっていくか今後もお付き合いして頂ければ幸いです。


【読者の皆様へ】


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― 新着の感想 ―
[良い点] 硬い上に長距離攻撃もあり接近しても剣で戦える、…どこの機動戦士な白い悪魔っすか!
[良い点]  さすが師匠。強い強いと持ち上げ応用技の開発に専心させる環境を与えつつ倒しにくい相手を無力化する手段などもう見出している。  範馬勇次郎さんも麻酔で寝る。
[一言] 普段からサイレンスで口封じしてるから今更尊敬してるとか恥ずかしくて言えないんだろうなと言う乙女の恥じらい(を
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