―一瞬の孤独
――――れなちゃん! 見てみて新しい小説作ったの! 読んで読んで〜
……よく作る気になれるわね。
――――だってれなちゃんが読んでくれるから作る気になれるんだよ! れなちゃんのおかげだって〜
私がいなかったら誰に読んでもらうつもりよ?
そういうと、雛霧は顔を伏せた。
そして、しばらくして見てるほうまで悲しくなるような笑顔を向けて、
――――作って破いて捨てちゃう、かな?
◇
「こ、ここ!?」
「ええ、気に入りました?」
レイに案内されたのは、賑やかな住宅街的なものが並ぶところ。
そこにある一軒を指差されて、どうでしょうかと意見を促される。
「気に入ったというか……」
「他にもあるんですが……どうします?」
どうします?
といわれても。私は自分の家がいい。ああ、何か無性に愛着がわいてきたよ自分の家に。
目の前にある家は確かに私の家よりは綺麗だ。新築だな、見た感じですぐにわかる。
まあ、少々小さいが。
「よし、ここでいいですね! 貴女様にぴったいですわ」
えええ。
どこがぴったりなのか。大体、中学生がここに住めと? 一人で? 無理があるだろ。うん、ありすぎる。
そんなことを考えてるとぐいぐいと背中を押される、凄い強い力で。
まさか、とは思ったけど振り返るとレイがいる。いや当たり前だが。レイにここまでの力があるとは。
「れ、レレレイ! やめてよ、何すんのよ! 訴えるわよ!?」
「ふふ、どこへ訴えるのですか? 貴女様のいたところにある『警察』はここにありませんけど……」
こ、このやろー!!
ふざけるな、どこへ訴えればいいんだ。
そんなことをしているうちに私は、中にいた、家の。
香水、じゃないけどいいにおいがする。何だ? このにおい。
それより、家具がある。凄いな、意外に。まるで人が住んでいたみたいに…
「そんなことありませんよ。貴女様が来ることを想定して家具を配置しましたの。ふふ、気に入りましたか?」
「え、私がここへ来るのは必然だったの? そういう運命だったの?」
私がその言葉を言い終わって、気づく。
何であんなすんなりと、『運命』とか『必然』とか……。出てきたんだろう?
「ええ、必然です。貴女様がここへ来るのは必然の運命なんです。病院にいって寝るのは絶対なる必然。
けれど、運命はここまででこれから先、この国でどのように生活するのは運命に縛られてませんわ」
よくわからなかった。
だけど、わかったのはここにくるのは私が言った通り、必然だってこと。
必然、か。
「じゃあこの家はれなさんの家なのでご自由にどうぞ」
「え、ちょ待ってよ!! レイ、レイ? レイ!? おい、待てえええええっ」
レイはにこやかにお辞儀をした後、出て行った。
……私はこの国に一人きりだということかしら?
最悪だ。何でいきなり一人にさせられなくちゃいけないのよ。全く。
ため息をつき、家の中を物色することにした。