第肆話 期待の新人
催促されたので、少し早めに書きました。疲れちゃいました。
「…それで、事件の概要を知りたいのだけど」
「えぇ、一応資料としてまとめておきました…平泉、例の資料を出してくれ」
平泉と呼ばれたもう一人の刑事は自分の持ってきたブリーフケースから、ホチキスで留められた紙束を取り出した。表紙には『本署における捜査資料窃盗事件の概要資料』と書かれている。
「ちょっといいかしら」
捜査資料に目を通す前に楓が声をあげる。
「どうして、捜査資料が盗まれたと断言できるのかしら?普通なら、まずはただの紛失事故を想定するはずなのだけど」
楓の疑問はもっともだ。確かに、一番最初に疑うのはただの紛失事故や記載漏れなど、ヒューマンエラーを疑うはずなのだ。
「えぇと、詳しいことは資料に書いたのですが…なくなったのが、鑑識課で保管してた時でして…」
「…なるほどね。それなら、確かに窃盗事件の可能性が一番高いわね」
そう言いながら資料に目を通す。すると楓は、その捜査資料に違和感を感じた。
「この資料見やすいね。横溝警部、これは誰が作ったんですか?」
紫苑が横溝にそう尋ねると、横溝は少し誇らしげに返答する。
「えぇ、この資料を作ったのはここにいる平泉でしてね。こいつは今年入ってきた新人ですが、とても優秀な刑事なんですよ」
話を聞いてみると、次の情報がわかった。
【平泉 遼 22歳 階級は警部補】
「こいつはいわゆるキャリア組ってやつですが、とても骨のあるやつですよ」
「いえいえ、自分はまだまだ横溝先輩にはお世話になりっぱなしです」
横溝に褒められた平泉が照れながら謙遜をする。見た目は若く、明るいイメージをもったいい刑事だ。
「では、事件の概要を説明しますね」
平泉は、楓たちに渡した資料と同じものを手に取り、説明を始める。
「…ふふっ、わかりやすい説明をお願いできるかしら、期待の新人さん?」
いたずらっぽく微笑む彼女は、意地悪くも期待を込めた言葉を平泉にかける。
期待を込められた本人は、僅かに資料を持った手が震えていた。




