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ただいま。いつのも場所(牢屋)

「ただいま。薄暗い牢屋」

「あはは、声に力が無いよ?」


 ミッドガルフ王の命令で、僕は今ミッドガルフ貿易国の牢屋に『帰ってきました』。

 この薄暗い雰囲気。そして微妙に入る太陽の光。なんだかもうすっかり慣れてしまっている自分がなさけないです。


「そんなに何度も捕まったのかい?」

「全て無実ですよ。今回ももとを辿ればキューレのせいです」


 いけませんね。牢屋に居る状況に慣れるなんて、自慢できる話でもありませんよ。


「それよりも今は『どっち』なのですか?」

「口調でわかると思うけど、僕は『カンパネ』だよ」


 ゴルドの姿で笑いながら自己紹介をする自称神の『カンパネ』。ミッドガルフ貿易国ではゴルドが何か本を持った瞬間憑依してましたっけ。

 そうなると今も少なからずゴルドは何かしら抵抗をしているのでしょうか?


「あ、鉱石精霊はぐっすり寝ているよ。精霊なのに寝るなんて体験、普通はできないからね」

「そうでした。だいぶ強く音を出してしまいましたね」


 とりあえず冷たい地面に座り、気になる点を話しました。


「まずゴルドは無事なんですか? シグレットが魔力を散布したとは言っても、その後無事を確認する前に寝させてしまいましたから」

「そこは逆に感謝して欲しいな」

「感謝?」

「僕が憑依したことで魔力が急激に供給されたはずさ。きっと寝起きはすっきり爽快さ」

「そう……ですか」


 とりあえず一番心配だった事が解消されて良かったです。


「キューレは一体何者なんですか?」

「ああ。キューレさんは僕の住む『カミノセカイ』の住人で、僕の同僚さ」

「同僚?」

「あくまで分かりやすい例えだよ。『女神様』に仕える天使の一人で、凄く強いんだ」


 淡々と答えるゴルドの姿のカンパネ。違和感しかありません。


「ゴルドが危険な状況に陥った理由も知っているのですか?」

「ああ、アレはむしろ『不幸中の幸い』だね」

「どういう意味ですか?」

「キューレさんは確かに記憶があった。そしておそらくどこかのタイミングで君達を襲撃しようと思ったのだろう。で、一つうっかりな失敗をしてしまったんだ」

「失敗ですか?」

「キューレさんは『魔術』を使えない。悪魔が『神術』を使えないのと一緒で天使は人間が作り出した『魔術』を使うことができないんだ」

「でも使った……ということですか?」

「どこで『心情読破』を使ったかわからないけど、『ネクロノミコン』の存在を知った上で『魔術』を使ったんだろうね。そして予想以上の威力が出てしまった」

「それほどキューレは強いのですか?」


 僕の質問にカンパネは両手を広げて、右手に小さな火。左手に大きな火を出しました。


「おお。精霊の体だと魔術が使えるのか。これは大発見」

「何を遊んでいるんですか?」

「ごめんごめん。この小さな火が鉱石精霊の魔力。そしてこの大きな火がキューレさんの魔力さ」


 ゆらゆらと揺れる火に、いまいちはっきりとしない答えだと感じました。


「まあ、これはあくまで魔力量の話だけどね。問題は『ネクロノミコン』を使って放った魔術が強すぎたことにあるかな」

「強すぎると問題が?」

「周囲の魔力が消し飛ぶのさ。精霊は空気中の魔力でなんとか生きている。だから鉱石精霊はその場で息が吸えない感じの状態になったのさ」


 空気が無くなった。そういう感じでしょうか。


「でももし転生したあの女の子がもう少し近くにいたら、あの子は確実に消し飛んでいたよ。それにあの転移した女の子もいなかったら大変だったろうね」


 偶然が重なって救われた。そう言いたげな様子ですね。


 とはいえ、シャムロエが苦しそうにしていたのは僕も見てなんとなく分かりました。

 牢屋に入れられるときも、ずっとマオの手をつないで歩いてましたからね。


「あ、アレは魔力を分けているんだよ」

「また心を……そうなんですか?」

「本当にあの子は凄いよ。魔術に関しては神を超えるかもしれない存在。それを『作り出した』人間は……っと、これはまだ教えられない内容だっけ」

「今重要なことを言いかけましたよね! 続けてください!」

「あ、鉱石精霊が起きました。うわー目が霞むーではまた会おうー」


 凄くワザとらしい口調でパタリと倒れて、すぐに起き上がりました。


「最悪の目覚めです」

「カンパネいわく、すっきり爽快じゃ無いのですか?」

「魔力的には最高です。問題は『アレ』に憑依されたという部分です」


 精霊や神の間にも溝はありそうですね。

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