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ガルフの日記

 翌日。

 ミッドガルフ王の自室に似た書物があるということで、僕達は再度ミッドガルフ貿易国の城へ足を運びました。


「これが似た文字が記載されている本だ」


 渡された本は『ガルフの日記』とかかれてありました。


 心なしかゴルドは少し落ち込んでいます。予想していたものとは異なったのでしょうか。


「ですが不思議ですね。この本には『ネクロノミコン』について何か書いて有るのですよね?」

「うーん、まあまずは読んでくれれば分かると思うぜ」


 そう言って本をパラパラと開くと、僕の読める字で『ネクロノミコン』と書かれている頁にたどり着きました。


『この世界とは異なる世界の書物がこの世界にある。名は『ネクロノミコン』。これは奇妙な男が私に託した物だった。私はその不気味な本を持つことに耐え切れず、ある男に安価で売ってしまった。まさかそれが『岩の地』の災厄につながるとは当時思っていなかった。

 その本の影響は間接的にミッドへ襲いかかってしまい、彼の死は紛れも無く私の責任だ。彼を咎めるのではなく、彼を称えて無事に『あの世』でも安心して居られる世界にするのが私の役目だろう。



 この地をミッドという名にすることがようやくできた。私の持つ知恵とを全て使い、この地に繁栄をもたらすことができた。



 私はもう『この世』で生きてはいけない。手も動かない。すでに後継者も決めている。だが何故だ。何故この国の名が『ミッド』ではなく『ミッドガルフ』となった。

 私はこの世界に名を残して良い存在ではない。『ネクロノミコン』も使者を使ったのに見つからない。

 世の中計算通りには進まないとは、理不尽である』


 読んでいてあまり良いとは思えない内容ですね。

 ミッドガルフ王が英雄ミッドの真実を知っているのも、この日記のおかげかなとも思いました。


「ミッドガルフ王はこの本から英雄ミッドについて真実を知っているのですか?」

「うーん、ここに書いてあるのは俺の先祖のガルフの心情だ。ここに書かれていない状況やその時の災厄については言葉で両親から教えられたよ」


 パラパラと本を読むと『災厄』という単語はあるものの、内容までは書かれていません。


「内容を書けばおそらく『英雄ミッド』は英雄ではなくなるから書かなかったのだろう。必要最低限の情報だけを書き、息絶えるまで心情を書いたんだろうな」


 そしてガルフは不本意ながら自信も偉人として名を残してしまった……ということですね。


「もう一つ気になったのですが、『あの世』や『この世』という言葉ってなんですか?」


 文字の殆どは僕の分かる言語で書かれてあり、『ネクロノミコン』の隣に読めない単語が書かれてあります。おそらくこの文字が『ネクロノミコン』と読めるのでしょうが、『あの世』『この世』という単語の意味がわかりません。


(トスカ)


 小声でゴルドに呼ばれました。


「?」

(もしかしたらフーリエなら知っているかもしれません。あの子はボクが寝ている間も生きていましたから、ガルフと出会った可能性はあります)

「!」


 ゴルドの提案に首を縦に振り、本を閉じました。


「少なくともこの『ねくろのみこん』というのがとても危険な本ということが分かったわね」

「そうですね」

「ところでゴルド、どうしてこの本について何か調べたくなったのかしら?」


 シャムロエの質問にゴルドの動きが停止しました。


「『ネクロノミコン』は特殊な書物です。マオの故郷に関係すると言っても過言ではありません。だから気になっただけですよ」


 苦笑いをして何かをごまかそうとしています。マオの目が光っているということは『心情読破』を使っているのでしょうか?


「……嘘は言っていない。でも、本心ではない。いつか話してもらう」

「助かります」


 そう言ってゴルドは軽く頭を下げました。精霊にも色々と事情は有るのですかね。


 少し疑問が残りつつミッドガルフ王の自室を出ると、使用人がミッドガルフ王を呼びました。


「ミッドガルフ様。まもなくガラン様との打ち合わせが始まります。そろそろ」

「ああ。では皆、俺はここで」

「すみません。急に押しかけて」

「いや、また来てくれよな。歓迎するぜ」


 そう言ってミッドガルフ王は手を振って去っていきました。つい最近までの楽器商人から今では王様ですからね。人生何が起こるか本当にわからないものです。


「では僕たちも一度戻りますか」

「そうね」

「……ん」

「はい」


 皆賛成し、一度『寒がり店主の休憩所』へ戻ろうとした瞬間でした。

 中途半端な終わり方ですが、次話の良い場所が見つからなかったため、少し強引に切らせていただきました。

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