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舞台裏

 色々考えた末に出た案は『とりあえず文献を参考にする』ということになりました。

 ゴルドの体験談を聞き始めると途中で誰かが口を挟んで話が進まないのと、ゴルド本人のお願いもありました。


「英雄ミッドは自身の命と引き換えに岩の地……後のミッドガルフ貿易国の平和を守った……ですか。実際とは異なりますが、こう言い伝えられているのでしたら、ミッドも報われるでしょう」


 ゴルドの目は少し悲しげでしたが、とりあえず依頼をこなさないことには進みません。パムレットの代償がここに来るとは思いませんでしたが、食べてしまった以上はやらないといけませんよね。


「それで、何故私が『悪役』なんだ。ミッドガルフ貿易国の騎士団長だぞ?」

「その方が面白いじゃないですか。普段街を守る人間が悪役って、盛り上がると思うのですよね」

「む……」


 黒いマントに身を包んだ騎士団長キューレは不満な顔をしていました。あ、ミッドガルフ王の許可は取ってます。

 そして他の人も役割はあります。

 ゴルドは岩の地に訪れた冒険者の男性。つまり本人ですね。

 シャムロエは同じく冒険者の女性。

 フーリエは英雄ミッドと親しい女性。マオがゴルドの心を読んで聞いた話だとフーリエのお姉さんだそうですね。


「まさかミリアム姉様をワタチが演じるとは」


 そして親しい女性と身長が近い人が英雄ミッドが良いだろうということで、マオが英雄ミッドを演じることになりました。


「……マオ、がんばる」


 特に役を割り振られていない僕は楽だなーと思ったら、『音・音楽・その他』が僕に。つまり一人で色々な音を出すことに。って……。


「理不尽じゃないですか! クラリネット以外の音って!」

「トスカならできるでしょ」


 軽く言ってくれますね。


 とは言え、実際この面子で僕だけが剣や魔術が使えないのと、音は僕にしかできないということで適材適所と言われれば言い返せません。


「ほら、まもなく始まるわよ」


 そう言って舞台裏に待機する僕たち。

 マオは男装し、フーリエは頭の布を取り、キューレは黒いマントを着込んでますが、ゴルドとシャムロエはそのままで良いのでしょうか?


「むしろ当時とほぼ一緒ですね。ボクはこの服装でしたし、シャルドネ……いえ、女性冒険者も今のシャムロエの服装と似ていました。髪の色も一緒ですし」


 今一瞬シャルドネって言いかけましたよね! それって転生前のシャムロエの娘ーみたいな話をしてませんでしたっけ!


「む? シャルド……何か言ったか?」

「いえ何でもないですよ。ゴルドが言い間違えただけですよー」


 何で焦っているのか自分でも分かりませんが、やはりこの面子で劇をするのは色々と複雑そうですね!

 ゴルドは本人だし、シャムロエは記憶こそ消えているものの転生前の娘役。フーリエは今は亡き姉の役。千年前の伝記の劇なのに、役者の半数が本人や親族って!


「……パムレットの代償としては十分。むしろ再現性抜群で高品質の塊」

「何を言っているかわかりませんが、パムレットを暴食したのはマオですからね!」

「ほら、ミッドガルフ王が合図を出したわよ! はじめるわよ!」


 シャムロエが合図を出して、会場は暗くなりました。

 そして何かの術で壇上だけが光り始めます。


「トスカ様! 緊急事態です!」

「どうしました! 台詞を忘れましたか?」


 真顔のフーリエ。台詞忘れくらいならフーリエだけにしか聞こえない『音』で台詞を伝えることは可能です!



「あの光を浴びたら、ワタチは灰になります」



 って、この光って以前ゴルドが話していた『聖術』を使っていたのですか!


「あー、『光球』は普通人体に影響はありませんからね。普通は」

「笑えませんよ! 何とかしてください!」

「何か問題発生か?」

「キューレはとりあえず目先の台本に集中してください! ゴルド、何か良い案はありませんか?」

「とりあえずフーリエにはこれを貸しましょう」


 そう言ってフーリエに『ネクロノミコン』を渡しました。


「魔術などを反射する『魔力反射』をこの『ネクロノミコン』を使って唱えればとりあえず大丈夫でしょう」

「なるほど! 『光珠』を跳ね返すのですね」


 そう言ってゴルドはフーリエに本を渡すと、キューレが興味深そうに眺めていました。


「どうしました?」

「うむ? いや、なにやら見覚えが……いや、気のせいだろう」


 ゴルドの推測ではカンパネと同族。実際カンパネという自称神は怪しい存在であり、キューレもまた同様です。


「魔術の書物よ。それよりキューレ、台詞は大丈夫?」

「あ、ああ。すまない」


 注意を引いたのはシャムロエでした。さすがです。


「じゃあお客さんも心配しているし、皆……行くわよ!」


 そして僕達はお客の前へ出ました。

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