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英雄ミッドの英雄譚

 待つこと十分ほど。

 その間フーリエはひたすら紙に文字を書いていました。

「終わりました。ざっと文献に残っているミッドガルフの歴史はこんな感じですね」


 魔術研究所の書庫にあるミッドガルフの歴史が書いてある資料をフーリエ(ゲイルド)からフーリエ(ミッドガルフ)を通じて模写してくれました。

 商人を通じて手紙を渡すよりも早いので、これが広まったら一部廃業ですね。



「というか数名は千年前から生きているんだし、資料に頼らなくてそのまま教えてくれたら良かったんじゃ無い?」



 相変わらずシャムロエの発言は鋭いですね!

 僕も思ってはいましたけどね!


「シャムロエ様、それは違います!」

「え!」

「ワタチやゴルド様は確かにミッドガルフ貿易国が建国される前から生きていますが、求められているのは『催し物』です! ドロドロな事実を教えるよりも美化された言い伝えの方が喜ばれるのです!」

「そう……言われてもねえ」


 ちなみにフーリエの模写した資料を見ると、英雄ミッドがとても格好良く書かれていますね。


 闇の力によって支配された岩の地。そこへ英雄ミッドは逃げること無く闇の根源に立ち向かい、やがて岩の地から闇の力が振り払われました。

 しかし英雄ミッドの受けた傷は深く、闇を断ち切った代償としてそのままこの世を去ったと書かれています。


「ずいぶんあのミッドが美化されてますね」


 ゴルドの一言にシグレットが問いかけました。


「そういえば館長よりも年上なんだっけ? 英雄ミッドとは知り合いなのかい?」

「ええ。知り合いというか、何というか……色々と複雑な関係ですね」


 実際の言い伝えとゴルドの知っている英雄ミッドの違いが少し気になりますね。


「……なら言い伝えとゴルドの知っている英雄ミッドを混ぜて、マオ達が演じれば良い」

「混ぜるのですか?」

「……結局は演劇。全部を表現する必要は無く、多少の嘘も面白くするための調味料」

「まあそれもそうですね」


 そう言ってフーリエのお茶を少し飲み、ゴルドが話し始めました。


「では英雄ミッドについて少しお話ししましょう」


 ☆


『当時岩の地と呼ばれていたミッドガルフ貿易国に、とある冒険者二人が足を運びました』

『……なるほど。一人はゴルドで、もう一人はシャルドネという少女……シャムロエのむぐっ!』


 ☆


 ん?

 目を閉じてその光景を想像していたら急に現実に戻された感覚です。

 目を開けるとゴルドがマオの口を塞いでいました。


「マオ、ゴルドのお話の邪魔をしちゃダメでしょ。ほら、私の膝においで」

「……む、なかなか興味深いから展開が気になって『心情読破』を使ってしまった」

「あはは、魔術師のお嬢ちゃんは面白いな。それにしてもシャルドネという少女か。シャムロエに名前が似ているな」


 ……別に隠している訳ではありませんが、話がこじれそうですね。


「シグレット、すみませんが時間も限られているのでゴルドの話を優先で聞きましょう」

「あ、ああ。それもそうか」

「あはは。では……こほん」


 ☆


『岩の地に到着した冒険者はミッドという少年と、仲の良い少女がいました』

『……驚き。その少女はフーリエにお姉さん』

『ゴルド様! 詳しく! ミリアム姉様に恋人が!』


 ☆


 ……また現実に戻されました。


 目を開けるとフーリエがゴルドにぐいぐいと迫っていました。


「あはは、あんな館長見たこと無いな」

「そうですか? 僕は時々見かけますが」

「はあ、このままでは話が進まないわ。フーリエ、お姉さんの話は後で聞いて貰っても?」

「ああ、すみません。取り乱してしまいました」


 深呼吸して落ち着くフーリエ。あれ、そういえばマオの声が聞こえませんね。


『パムレット……私が食べるわよ?』


 ボソッと小さい音が『見えた』ので、その方向を見るとシャムロエがマオの耳元で呟いていました。


「……マオはお利口さん。もう何も悪さしない」

「うん。それで良いのよ。私の言うことだけを聞いていれば良いのよ」

「シャムロエ、その発言は色々と怪しい気がしますよ。マオの教育のためにも今日だけにしてくださいね」

「わかってるわよ」

「えっと、じゃあ続きを話しますよ?」


 そう言ってゴルドのお話が始まりました。

 一体いつ終わるのでしょうか。

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