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目的の達成と復讐

 初めて出会った時と変わらない表情と姿の男が目の前に立っていました。

 白い肌に老いた肌。ガラン王国で出会った『レイジ』です。

 そして右手には本の形の何かを持っている……『気がします』。


「なるほど、アレが『ネクロノミコン』ですか」


 僕がそう答えるとシャムロエとマオは首を傾げました。


「え、何? 何かあるの?」

「……レイジしか見えない」


 二人がそう言うのも当然でしょう。レイジの右手には『何も無いように見える』のですから。

 ですが僕だけは見えました。

 音の反射でそこだけ不自然に四角く音が跳ね返ってきます。つまり四角い何かがレイジの右手にあるのです。


「おや、誰かと思ったら『女王』じゃないですか。お久しぶりですね」

「会いたくなかったわよ。というか何の用よ」

「ふふ、用はすでに済みました。今はただ『復讐』をしているだけです」


 そう言ってレイジは何かを唱えました。


「『雷矛』!」

「くっ! 『鉄柱』!」


 ゴルドが瞬時に地面から鉄の柱を生成しました。すると空から降ってきた雷が鉄の柱に命中します。


「おや、貴方は……『鉱石精霊』ですか」

「久しぶりですね。レイジ」


 そういえばゴルドはレイジの事を知っていたと言ってましたね。千年以来の再会ですがそこに感動はなさそうです。


「ゴルド様、レイジの手には『あの本』があります! 気をつけてください!」

「わかりました。『投石』!」

「無駄ですよ。『土壁』」


 ゴルドの攻撃も土の壁で防がれました。『土壁』って確かゴルドの技ですよね?


「……ネクロノミコン。大体理解した」

「え?」

「……アレは多分どんな魔術・精霊術・悪魔術でも、誰でも使用を可能とする危険な本。取り返さないと危険」

「なら手っ取り早く行くわよ!」


 風の如くシャムロエがレイジに走っていきました。そして。


「てえええい!」

「ふん」


 シャムロエの目の前にはレイジがいたはずでしたが、気が付けばそこはただの何もない空間でした。


「なっ! ど、どこに!」

「右です! シャムロエ!」

「はっ!」


 すぐに姿勢を低くした瞬間、鋭い攻撃がシャムロエの頭をかすめました。


「そうでした。貴方は確か音が見えるのでしたね。『認識阻害』が使えないのは厄介です」

「なっ! に、『認識阻害』ですか!」


 フーリエが驚きました。え、一体何が?


「……本来悪魔は『神術』を使うことができない。だけど今のレイジは一瞬『神術』を使った」

「それは重要なんですか?」


 あくまで相手の攻撃の幅が増えるか減るかの違いだと思うのですが。


「……あの『レイジ』が『人間』なのか『悪魔』なのかわからない。さっきの技も『ネクロノミコン』のお陰なのか、そうじゃないのかもわからない。つまり、対策しようが無い!」


 マオが突然右手を前に出しました。


「……『氷壁』!」


 パリーンと割れる氷の壁。レイジはいつの間にか僕たちの方へ何かを放っていました。


「強いわね、このままだと」


 シャムロエも所々怪我をしています。ゴルドも息を切らしています。というか二人はフーリエの悪魔術で最初から弱っているのでしかたがないのですが、フーリエも限界を迎え始めています。


「いや、時間稼ぎお疲れ様。皆は休んで良いぜ?」


 そんな音が飛んできました。

 振り返るとシグレットが両手にビンを持っています。


「貴様は……薬師か?」

「おうよ。久しいな。そしてお別れだ」


 ニッと笑ってビンを投げると、あたり一面光り輝き、あまりの眩しさにまぶたが勝手に閉じてしまいました。

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