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薬師とレイジのつながり

 既に倒したと思っていたレイジという存在。それはガラン王国では極秘に済ませていましたが、フーリエを通じて重要人物には知られていました。

 その中にはシグレットも含まれているそうです。やはり長生きをしていれば偉くなれるのでしょうか。


「おいおい、魔術研究所は年功序列じゃないぜ?」


 シグレットが苦笑し、フーリエから注がれたお茶を飲みながら話し始めました。

 というかさりげなく『心情読破』で心を読む辺り、やはり魔術師は苦手ですね。


「……トスカ、マオの事苦手だったんだ……」

「あ! いや、そういう意味じゃ無くて!」

「あらあら、マオ、こっちおいで」

「……超心に傷ついた。これはパムレットが無いと立っているのも辛い」

「変な茶番を挟まないでください! ゴルドも何『出遅れた』という顔をしているんですか! 今度腰痛が酷くなる曲でも披露しますよ!」

「ええ! それは辛いですよ!」


 僕達のやりとりを見てシグレットは笑いました。


「はは、面白い人たちだ。さすがは館長のお気に入りなだけあるな」

「そんな認識で広まっているのですか?」

「ああ。最近は館長との会話に必ず『音操人』という単語が入っているさ」

「おと……あやつりびと?」

「ああ。名前では無く二つ名の様なもので君たちは呼ばれているんだ」

「ほほう。ではボクは一体なんでしょう?」


 ゴルドが珍しく興味を持ち始めました。


「確か『鉱石精霊』だったな」

「まあ、そうでしょうね」

「私は?」

「『転生者』だな」

「……マオは?」


「『パム……転移者』だな」


 今絶対『パムレット』って言いかけましたよ! 二つ名にお菓子の名前が入るってどういうことですか!


「……む、シグレットは心を読まれないように『心情偽装』を使っているから真実が読めない」

「ふふふ、伊達に数百年生きているわけでは無いからね」

「数百年生きている部分についても気になりますが、今はレイジについてです。何か知っているのですか?」


 そう問うとシグレットは答えました。


「俺の知っている限りだとレイジは死んだと言われていた。館長も各地の情報屋を頼ってレイジの存在を探しているらしい」

「シグレットはレイジの事を知っているのかしら?」

「ああ。昔、ガラン王国の近くの森で薬を作っていた時、何度か会っていた」

「な!」


 全員が驚きました。まさかレイジの?


「あ、いや。当時は悪い人とは思わなかったんだ。いわゆる俺は騙されていた側なんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。だが、レイジのおかげでこの薬が作れるのも事実」


 そう言って先ほど見せた綺麗な薬を出しました。


「製法の中には『ろ過』という技術が使われている。仕組みは単純だが、当時はまだ技術が発展していないため、その製法は画期的だったんだ」

「……ろ……か?」


 マオが考え込みました。


「マオ、大丈夫?」

「……ん、大丈夫。ただ、なんとなく聞き覚えがあるような、無いような」

「ああ。『転移者』の魔術師ちゃんならもしかしたら心当たりがあるかもな。この『ろ過』は異世界の技術だ」

「な!」

「……多分知っているんだと思う。だけど今のマオは記憶が無い」

「ああ、そうだったな。魔術師ちゃんが今すぐ答えを出す事でも無いし、思い出そうとしなくて良いぜ」

「……そうする」


 異世界の技術? しかしどうしてそれを?

 その疑問に答えたのはシグレットでは無くゴルドでした。


「心当たりは二つあります。一つは『ネクロノミコン』ですね」

「ゴルドの持っていた書物ですか?」

「はい。あの書物は異世界の書物とも言われていました。だからそこに製法や技術が書いてあってもおかしくはありません」

「もう一つの心当たりは?」

「おそらくですが、レイジはマオの世界に転移しているのでは無いかと」

「異世界に?」

「はい。『ドッペルゲンガー』の特性を利用すればあちらの技術をこっちに持ってくることは可能です」

「記憶の共有……ですか?」

「考えにくいですが」


 珍しくゴルドも頭を悩めました。

 そしてシャムロエはというと。


「う……む、難しい話しはなかなか入り込めないのよ! 私を見てとりあえず場を繋ぐのは止めて貰える?」

「いや、別にそこまでは言ってませんよ?」

「ううー、それよりも今後よ。レイジは生きていた。いや、もしかしたら数体いるかも知れない。それをなんとかしないといけないのよね?」

「はい。その目先の目標としてまずはゴルドの所持していた『ネクロノミコン』の奪還から始めましょう」


 方針は決まりました。あとは……。



 バン!

 強く開けられた扉の先には目を真っ赤にしたフーリエが立っていました。


「トスカ様、伏せてください! 『深海の邪神』!」


 大きな揺れと共に地面から海の生物のような触手が何本も現れました。


「がああああ!」

「うううう!」

「ゴルド様、シャムロエ様、耐えてください! 奴です。『レイジ』です!」


 え、今、何て。


 次の瞬間でした。


『風爪』


 そう声が聞こえた瞬間、フーリエが召喚した触手は綺麗に切り刻まれて行きました。



「ずいぶんと大げさな歓迎ですね。寒がり店主の休憩所の店主。いや、『フーリエ』殿?」



 一度は倒したと思っていたレイジが、少し離れた場所に立っていました。

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