ネクロノミコン
今回から第四章となります。引き続き楽しんでいただけたらと思います!
レイジという名前。そして聞きなれない単語『ネクロノミコン』。これらは一体何なのでしょうか?
そう疑問に思っているとゴルドが僕の心を読んだのか説明を始めました。
「ネクロノミコンはボクがかつてこの世界にたどり着いた際に手に入れた本ですね」
「本ですか?」
「その本を使えば人間や精霊という概念を覆して誰でも記載されている術が使えるのです」
つまり、僕のような人間でもゴルドの『土壁』が出せるということでしょうか?
「……疑問」
「何でしょう?」
マオが手を挙げて質問をし始めました。
「……ゴルドは最初に出会ったとき、『鉱石精霊の術』では無い術を使っていた。あれは『ネクロノミコン』のお陰?」
「よく覚えていますね。実はミッドガルフ貿易国では別の精霊の術を一度だけ使っていました」
「本当は使えないのですか?」
「はい。本来ボクの使える術は鉱石精霊の属性。魔術。神術。聖術。一部召還術です」
結構色々できることに驚きです。さすがの今の言葉にマオも驚いていました。
「でも本来使えない術がミッドガルフ貿易国では使えていた。それって『ネクロノミコン』を持っていたからということかしら?」
「少し違います。正確には『近くにあったけど認識できなかった』が正しいのです」
近くにあった。そういえばゴルドって最初に強力な認識阻害によって『そこにあっても意識しない限り認識できない』のでしたっけ。
つまりそのとき所持していた書物にも同様の術がかけられていたら、近くにあっても探し出せないのですよね。
「どうしてその時言ってくれなかったのですか?」
「深い理由はありませんが、単純にトスカでは探せないと思ったのです。トスカはボクの何かの音を聞いて探し出しましたのですよね? しかし『ネクロノミコン』は本です。音を出すことはできません」
「え、ゴルドを見つけたときって『ゴルドの音を見た』わけではなく『周辺の反射する音が変だったから見つけた』のですが」
全員が黙りました。あれ、僕って何かまずいことを言いました?
「……トスカは悪くない。ゴルドが勝手に解釈して勝手に間違えただけ」
「あはは、トスカの『心情読破嫌い』が少しわかりましたよ。マオに読まれてしまいましたか」
鼻息を鳴らすマオ。それを見てシャムロエがため息をつきます。
「はあ、それで? ねくろのみこん?がレイジらしき人物に取られたという情報だけど、レイジって確かガラン王国で倒したはずよね?」
「それなんですが……」
フーリエが苦い顔をして答えました。
「レイジはかつて『ネクロノミコン』を解読した人です。ワタチと同じく『ドッペルゲンガー』を生成していたら生きていてもおかしくありません」
「それを早く言いなさいよ! レイジもフーリエと同じくたくさん居るの?」
「いえ、ワタチの知る限りではガラン王国に一人だけだと思っていました。しかしもしかしたら一人隠していたかもしれません。増えるということはその分記憶を共有するわけですから、負担が大きいのです」
何人もこの大陸にいるフーリエが言うと全く説得力がありませんが、とりあえず納得しておきましょう。
「ミッドガルフ王はとりあえず命に別状はありません。ただし不穏な魔力の流れは変わりませんので、至急援護に来てほしいと『ミッドガルフ王』の依頼です」
一時は一緒に争った楽器屋店主。怪我をしているとなると少し心配ではありますし、何より……。
「ゴルド。お願いがあります」
「はい?」
「マオに『心情読破』を使ってください」
「え? は、はい」
そう言ってゴルドの目が金色に光りました。次の瞬間
「ぬ、ぬああああああああああ!」
「な、何事よ!」
その場で倒れるゴルド。そしてゴルドの放った言葉ですべて理解しました。
「ぱ……パムレットが……パムレットがああああ!」
『心情読破』。それは使う相手によっては自身を危険な目にあわせるとても危ない術だと思いました。それとミッドガルフ貿易国に行かないとマオから何かいたずらされそうなので、ここは素直に行きましょう。




