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☆♪次なる進路と襲撃

 ミルダも落ち着き教会へ帰って行き、僕とフーリエは食事会会場に戻ったところ、シャムロエとマオに助けを求められました。


「トスカ、悪いんだけど助けて欲しいのよ」

「……この男、しつこい」


 何事かと見てみると、長い金髪で白い肌の『いかにも高貴な所の生まれですよ』と言った風貌の男性がいました。


「あの方は……ゲイルド魔術国家の女王の……いえ、『元』女王の弟様ですね」


 隣でフーリエが僕に小さな声で教えてくれました。というか『元』ということは今は違うのですね。


「麗しき乙女と少女。我は二人に恋をした! どうかここは一つ我と踊りませんか?」


 何でしょう。僕ってそれほど好戦的では無いと自負していましたが、今一瞬拳が飛びかけました。


 少し気になってフーリエに問いかけました。


「元女王の弟ということは今の立場は何ですか?」

「それが……まだ公表されていませんが、次期王になることが先ほど決まったそうです」


 フーリエの情報網は相変わらず凄いと言いますか、魔術研究所館長だからこそ知っているのでしょうか。


「普段はおとなしいのですが、王に決まったので少し調子に乗っているのかと」

「わかりました」


 そう言ってとりあえず僕は言葉を交わす事を決意しました。とても荷が重いですね。


「あー、二人は僕の旅の仲間ですので、できれば声をかけないでいただきたいのですが?」

「ふっふっふ、そう言っていられるのも今のうちだ。秘密なのだがこの先我は偉大な人物へとなる!」


 王ですよね。さっきフーリエに聞きました。


「我の権力を持ってすればこの先二人は安泰。君がその友達というならそうだな……召使いにでもしてあげよう!」


 とても不愉快ですね!


「権力を言うならば、僕の背後には『静寂の鈴の巫女』と『魔術研究所館長』と『ガラン王』がいるので、今のお話をそのまま相談しに行っても良いですか?」

「なっ! 魔術研究所館長ならまだしも、静寂の鈴の巫女とガラン王だと?」


 フーリエが一瞬殺気を出しましたね。寒気がしましたよ!


「ふ、ふん。いずれは偉大な国家になるゲイルド魔術国家だ。そんな言葉に屈する我では無いわ! それにこれから我は二人を手中に収めるためにとある趣向を考えている」

「と言いますと?」


「見るが良い! 我が演奏を!」


 そう言って次期ゲイルド王は金色に輝くラッパを出しました。これは……。


「……トスカ、目に物を見せるとき」

「ここであいつをトスカの演奏で黙らせてくれるかしら? パムレットおごるから!」

「……なっ!」


 何故マオがショックを受けているかわかりませんが、良いでしょう。

 久々にクラリネットを出して僕は次期ゲイルドの前に立ちました。そして二人の熱い演奏が始まりました。

挿絵(By みてみん)

 ♪


「何だあの旋律は!」

「ラッパとクラリネットの違いです。この楽器はさらに細かく出せますよ」

「ラッパでは無い! トランペットだ!」


 細かいところを指摘し少しでも優位に立とうとする次期ゲイルド王。その姿は少し見苦しいモノでした。


「ゲイルド様。ここはワタチに免じて見逃して欲しいです」

「フーリエ殿。だがこんな男に」


 フーリエはその場でため息をつきました。そして僕と何故かゴルドを引っ張り出してゲイルド王に突きつけました。


「あまり大声では言えませんが、この二人は『原初の魔力』を持っています。この意味がわかりますか?」

「げん……しょ! な、なにいいいい!」


 急に叫んだゲイルド王に僕は驚きました。ゴルドはそれほど驚いていませんね。


「まあ、ボクは『心情読破』で反応を先読みしていましたから」

「時々ゴルドのその能力が羨ましく思いますよ」

「ま、待て、原初の魔力って」

「ゲイルド様。あまりこの話は大事にできません。ここだけの話しに」

「だが!」


「ゲイルド様……いえ、『ゲイルド次期……』」


「は! わ、わかった! わかった! それ以上は言わないでくれ! フーリエ殿!」


 急に弱気になるゲイルド王。その場から逃げるように去って行く姿は情けないものでした。


「なんで逃げるように去ったのかしら?」

「国内の最重要秘密は漏れた時点で撤回されるのです。ワタチは偶然あの人の知られてはいけない秘密を知っているので、脅しただけです」


 と言うことは僕が街で言いふらしたらあの人の王位は無くなるのですね。



「そしてそれをボクも知ってしまった」

「……そしてそれをマオも知ってしまった」



 もう魔術師なんて苦手です!


 ☆


「今後の方針は『海の地』と呼ばれる場所。つまり大陸を逆方向へ進むことになりますね」


 僕がミルダ大陸の地図を開いて皆で囲んで見ていました。


「……ミッドガルフ貿易国は外せない。パムレットが定期的に呼んでいる」

「生き物じゃないですよ!」


 僕の突っ込みにシャムロエは笑いました。


「まあ良いじゃない。ついでに寄るくらいなら何も問題はないと思うわよ?」

「……シャムロエのそういう所、マオは好き」

「あら、私も好きよ?」


 この姉妹の様なやりとりは何なのでしょう。いつも置いてきぼりというか何というか。


「……ん? 寂しいならトスカもゴルドとすれば良い」

「嫌ですよ。千歳年上の兄なんて」

「トスカ、案外酷いこと言いますね!」


 そんな談笑をしていたところ、フーリエが部屋をノックしました。


『トスカ様、よろしいですか?』

「はい、どうぞ」

「失礼します。今ミッドガルフの兵から伝言を預かったのですが……」


 何やら不穏な空気を醸し出しています。


「ミッドガルフ王が何者かによって襲撃されたそうです」

「なっ!」

「あっちの『ワタチ』が不穏な魔力を察知して偶然近くまでいたのでなんとか命をつなぎ止めましたが、緊急事態には変わりありません。できることならトスカ様に事件の解決を依頼したいとミッドガルフ王が」


 ミッドガルフ王って……ああ、あの楽器屋!

 そういえばゲイルド王と言い合いになったときにミッドガルフ貿易国には知り合いがいないなーと思っていましたが、楽器屋は王になったんでしたっけ!


「すっかり忘れてました」

「まあ無理も無いわよね。商人が王族ですもの」

「それにしても襲撃ですか。ずいぶんと物騒ですね」

「ミッドガルフ貿易国は商人が行き交う街ですが、それなりに警備も整っています。ですが今回は少し例外と言いますか……」


 そう言ってフーリエはゴルドを見ました。


「ゴルド様、『ネクロノミコン』は現在どこにありますか?」


 聞き慣れない単語に僕はゴルドを見ました。


「あはは、残念ながら今は持っていません。ですが『ミッドガルフ貿易国のどこか』にあります」

「おそらくですが、それが関係しています」

「と言うと?」


 次の言葉に僕は言葉も出ませんでした。なんせあのとき倒したと思った名前が出るとは思ってもいませんでしたから。


「『レイジ』らしき姿が確認され、手には『本の様なモノ』を持っていたそうです」


 その場で全員が立ち上がり、空気が凍りました。

  第三部はここで終わりとなります。次回からは歩んだ道を引き返す形になりますが、予定通りに物語は進んでいる感じです!

 また、今回のお話の劇中曲は以下のurl(Twitter)となります。よろしければどうぞ!

https://twitter.com/kanpaneito/status/1136372910182899712

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