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村と城下町の違い

 武装国家ガラン王国。


 ミルダ大陸の国と呼ばれる組織の中で、一番人間が多く、一番武術に長けた国とも言われています。

 中でも剣術と体術は大陸一強く、相性の悪い魔術に対しても遅れを取らないとか。


 そんなガラン王国に到着してまずシャムロエが第一声を放ちました。



「おっきー! そして腰痛い!」



 ガラン王国には大きな城があり、それも大陸一大きな建築物とも言われています。

 魔術が盛んなミルダ大陸でも、ここまで大きく、そして強く成長した国家は凄いとしか言えないでしょう。


「……(くいっくいっ)」


 マオが僕の服を引っ張って呼びました。珍しいですね。


「どうしました?」

「……『眠れる森の腰痛治療』を演奏して欲しい」

「何で僕が心の中で適当につけた曲名をマオは知っているのですか!」


 何だかとても恥ずかしいのですが!

 腰痛治療なのにやたら変に名前を格好良く(自画自賛)してしまったので少し変えたいです!


「えっと、どうして今なのですか?」

「……何か変。演奏すれば分かるかも」


 とりあえずマオの言う通りに『クラリネット』に息を入れて音を出しました。


「あー。腰痛が無くなるわー」

「……うん、無くなった」

「え、マオも腰痛だったのですか?」


 演奏を止めるとシャムロエの表情が笑顔から徐々に曇っていきます。本当に表情豊かですね!


「……違う。濁った魔力。正確には『悪魔の魔力』の事。この国は悪魔によって支配されている」

「え……それって」


 さらっと重要な事を言った気がします。悪魔によって支配ってどういう事でしょうか?


「……詳しくは分からないけど、この空気中の悪魔の魔力が証拠。おまけでシャムロエの腰痛もこれが原因」


 衝撃の事実その二ですよ!


 まさかただの腰痛が、悪魔の魔力の影響だなんて!


「許せないわ……この腰痛地獄。二人とも! 解決しましょう!」

「嫌ですよ」

「……通り過ぎれば良いと」

「問答無用よ! どうせガラン王国を通らないといけないわけだし、道中の魔物退治だと思って悪魔も倒しちゃいましょう!」


 一直線なのは良いことだと思いますが、無謀という言葉も覚えた方が良いと思いますよ?


 ☆


 ガラン王国城下町。


 そこには商人や住人が沢山いて、色々な音が飛び交っていました。

 時間制の割引や新商品の宣伝。それを買い求めて叫ぶ声。色々な声や音が聞こえます。


「凄い活気ね。悪魔がいるとは全然思えないのだけれど」

「そうですね。でもマオには悪魔の魔力が見えているのですよね?」

「……広範囲に存在しているのが見えている」

「まあ、腰痛も酷いし、その悪魔の魔力というのはあるみたいね」


 いい加減腰痛という言葉から逃げたい僕です。だって一定時間が経つと『眠れる森の腰痛治療お願い』って言ってくるのですよ?


「いらっしゃい! そこのお兄さん。彼女と……その妹さんかな? に食べ物はどうだ?」

「か、彼女!」


 唐突に話しかけてくる店員さんに驚きつつも、咳払いをして冷静さを戻します。こほん。


「結構です。今は他の用事が」

「だが、そちらの妹さんは凄く見てくるんだが」

「え?」


 妹さんと呼ばれたのはきっとマオの事でしょう。凄く見るって言うのは……。


「……甘くて美味しそう。これはきっと嫌なことを忘れさせてくれるお菓子と思われる」

「ああ、そうさ。これは『パムレット』と呼ばれるパンとクリームのお菓子さ。一つどうだ?」

「……トスカ」


 普段無表情のマオが凄く目を輝かせています。まあ野宿では火をつけて貰ったり、木の実の選定もしてもらいましたし、これくらいは。


「銀貨二枚だ」


「高!」


 いやいや、おかしいですよ。

 銀貨二って、銅貨二百ですよね! それって、二週間はご飯が食べれますよ!


「え、兄さん、まさか最近来たばかりの旅人かい?」

「そ、そうです」

「あはは、それなら仕方がねえ。ここは物価が『少し』高いんだ。稼がないとこの場所から追い出されるんだよ」

「それってどういうことですか?」

「ゼイキン? ってやつで、定期的に国へ金を納めないとダメらしい。ガラン王の側近のレイジってやつが決めたそうだがな」


 まさか村と城下町ではこれほどの違いがあったとは思いませんでした。

 これだったら集団墓地の掃除も当番制でやって皆から感謝される方が気持ちが楽かも知れません。


「となると、非情に困りましたね」

「何が?」


「今日の宿、どうしましょう?」

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