混じり合う影
魔獣と魔力の混合物って、どういう意味でしょうか。
「……なるほど。理解した」
マオだけが真剣な表情で試合を見ています。
「……魔獣の血にはまだ未知の力がある。それをあのハーツという青年は研究し、それと人間の持つ魔力を組み合わせて『何か』を作り出した」
「何か……ですか?」
「……そう。『まだこの世界には広まっていない何か』。マオの言語変換と同じ」
「つまり、あの『火球』が強いのは……」
「……『火球』が強いのではなくて魔獣の血と魔力の相性の問題。魔獣の血が混入していることで、通常の魔術で作られた壁をすり抜けるって思って良い」
ですが、ゴルドの土の壁は傷一つついていないですよね?
「……ゴルドは『原初の魔力』の持ち主で、あの土の壁も通常の魔術とは異なる『精霊術』の類。だから大丈夫だった」
「魔術にも相性があるということはわかりました。となるとこの試合は」
そう言っている間に会場は突然盛り上がりました。
「『投石』!」
ゴルドが手から小さな石を飛ばして、相手選手に当てます。
「がはっ! くそ、詠唱が間に合わない!」
「ハーツ、俺が時間を稼ぐからあの男を何とかしろ!」
「そうはワタチがさせません!」
「ぐっ! フーリエ様……」
フーリエの援護もあり、ゴルドは精霊術を続けて放ちます。そして。
「がはっ!」
小さな石が頭部に直撃し相手選手は気絶。残るはハーツだけになりました。
「さあ、あきらめてください」
「降参ですか?」
ゴルドとフーリエは構えながらハーツを見ます。
「ふふふ、まだあきらめるわけにはいかないのでね。俺の研究をここでやめればすべてチャラになる!」
「一体何を」
「フーリエ様。残念ですが俺はあなたの正体を知っています。あなたは『悪魔』なんですよね?」
その一言に会場がざわつきました。
そしてマオが突然焦り始めました。
「……マオはトスカに謝らなければならない」
「え?」
試合会場にいるフーリエは構えるのをやめました。
「どこにその根拠があるのですか?」
「それは……これだ!『光球』!」
光り輝く球を避けようとせずにフーリエは受けました。
「はっはっは! 悪魔にとって『聖術』は最大の弱点! フーリエ様……いえ、悪魔フーリエ! あなたは今まで俺達を騙し続けたんだ!」
高笑いするハーツ。
え、でも今のフーリエって確か……。
「大勢の前で大声を出して、何をしたいのですか? 名誉毀損ですか?」
フーリエは埃を払うように手で服をぱっぱっと叩き、ため息をもらしました。
「え……あれ? だが俺の研究では」
「どこでその『嘘』の情報を聞いたのかはわかりませんが、気が済みましたか?」
「馬鹿な! 確かに悪魔だと!」
「はあ、じゃあこれで良いですか? 『過去投影』」
フーリエが唱えると、目の前には先ほどハーツが叫んだ映像が出現しました。あの術は……。
「……『過去投影』。自分の記憶を大まかに投影する『神術』。つまり悪魔ならあれは使えない」
「なるほど。ではあれでフーリエが悪魔ではないということを証明したわけですね」
「ば、ばかなあああ! そんな、だが『レイジ』は!」
「!」
その言葉を聞いた瞬間でした。
ゴルドは凄まじい速さで移動し、ハーツの首の後ろを叩き気絶させました。
「これは、尋問の必要がありそうですね」
パタリと倒れるハーツ。しばらくして会場はドッと盛り上がり、試合はゴルド・フーリエの勝利となりました。
「えっと、それで、どうしてマオは僕に謝罪をしようと思ったのですか?」
「……ネタバレは大罪。『今のフーリエ』は悪魔ではないという情報を知らなければ、フーリエが先ほど『光球』を打たれたとき、トスカはスリルと熱い展開で興奮を味わえた」
「そんな心臓に悪いスリルは必要ありませんよ!」




