☆転生少女と転移幼女の秘密
千年前にゴルドが大陸を歩いていた時期があったそうです。
その間に出会った人物で名前が『マリー』という人物だそうです。
彼女の特技は特化しすぎた『心情読破』で、悪魔だろうが精霊だろうが、誰でも心を読むことが出来る優秀な魔術師だったとか。
「この文字はマリー様の世界の文字です。マリー様がこの世界に来て遭遇した出来事をあっちの世界の文字で書かれたそうです」
「そして、その文字をマオが読めるということですね」
「……まさか『もう一人』いるとは思わなかった」
「もう一人? マオとマリーという人物ですか?」
「……違う。マオと同じ場所から来た人物はマオとマリーと、トスカの育ての親マーシャ」
唐突にマーシャおばちゃんの名前が出てきて驚きました。
「え、どうしてマーシャおばちゃんの名前が?」
「……マオは最初にここへ来たとき、トスカの言葉が理解できなかった。でもマーシャがマオの世界の言葉で少しだけ教えてくれたおかげで今こうして話ができる」
「そういうことが……」
まさかあのとき、マオの世界の言葉を知っていたのは単純にどこかで知ったのかという軽い考えでしたが、マーシャおばちゃんも異世界から来た人だったなんて!
「……記憶を戻す手段は乗っていないけど、どこから来たかが分かった。ありがとうフーリエ」
「いえ。この本はここにありますから、必要なときは言ってください」
「……うん」
ぺこりと頭を下げるフーリエ。
「次は私ね」
そう言ってシャムロエは一歩前に出ました。
「シャムロエについてはボクが話します」
フーリエではなくゴルドが話し始めました。
「隠していたわけではありません。ここで話すつもりでした。シャムロエ、記憶を戻す手段ではありませんが貴女の情報をボクの知る限りの範囲で教えましょう」
そしてゴルドは術を唱えました。
そこには金髪の少女の姿が映っていました。
「これは神術『過去投影』という記憶を映し出す術です」
「私にそっくりな人物がいるわね」
「はい。この少女の名前は『シャルドネ』。シャムロエの娘です」
その言葉に場の空気が凍りました。
☆
千年前にゴルドがこの大陸を旅していた時、共に行動していた人物がいました。
その名は『シャルドネ』。
かつて母親を目の前で殺されてしまい、心を失った彼女はゴルドと出会い、様々な出会いを繰り広げたそうです。
「母親を目の前で殺され、心を失った『シャルドネ』は人間離れした力を得てしまいました。しかしそれを悪用せず、大陸で起きていた問題を解決していました」
「母親というのは私のことかしら?」
「そうです。残念ながら千年前にボクがこの大陸へ来たときは既にお墓の下で眠っていました」
「私がそのお墓の下の人物だって知っていたの?」
「すみません。ずっと知っていました。その理由がシャムロエに秘める『鉱石精霊の魔力』です」
マオが首を縦に頷いています。
「シャルドネにお墓を見せて貰い、そこへボクはお供え物として『金の塊』を墓石に埋めました。当時はこうなることを想定せず、本当に埋めただけでした。ですが、『何か大きな魔力』と反応して今に至るのかと思います」
大きな魔力。
「マオがこの世界に来たときの魔力でしょうか?」
確か目を開けることすら困難な輝きを放っていましたね。
「それが原因でしょう。そしてシャムロエは転生した。それがボクの知る限りの貴女の情報です」
「そう……」
そしてシャムロエは少し黙り込みました。そしてしばらくたった後声を出しました。
「私には娘がいたのね」
「はい」
「ふふ、娘の存在すら知らなかったなんて、何て言えば良いのかしら」
残念がるシャムロエに僕は話しました。
「シャムロエは生まれ変わったのですから仕方が無いと思います。貴女の見た目は僕と同い年くらいですし、ゴルドの映像の少女も同い年くらいです」
「トスカ……」
「トスカの言う通り事情が事情です。生まれ変わった以上は知らないこともあるはずです。責任に感じる必要は無いと思います」
「ゴルド……」
「……そういうこと」
「マオ……」
例え娘がいたとしても、今のシャムロエは生まれ変わったシャムロエであり、千年前のシャムロエではありません。
今のシャムロエを生きて欲しいと素直に感じました。
「そうね。娘の事は少しだけ気にかけるとして、今の自分を生きることにするわ!」
いつもの笑顔のシャムロエにほっとする僕。
「それに、ここにいる平均年齢を考えると私の悩みなんて些細なものよね」
「「どういう意味ですか!」」
ゴルドとフーリエが突っ込みました。
あ、そういえば二人は千年以上生きていますし、そもそもフーリエは沢山いるので全員合わせると平均年齢が凄いことになりますね。
「……実はフーリエ、年齢を気にしていたことに驚きが隠せない」
「気にしますよ! 悪魔とはいえこの肌を保つにはどうするべきかをいつも考えています!」
「どうしているの?」
「……悪魔なので……動物の血液を少々」
思ったよりフーリエって怖い人物なのでは!
「じょ、冗談です! 悪魔的冗談ですよ!」
「悪魔なので冗談に聞こえませんが、まあ良いでしょう。とりあえず二人の記憶は見つかりませんでしたが、情報は得ました。これが『カンパネ』のやりたかった事なのでしょうか?」
そう呟いた瞬間でした。
突然本棚が光り始め、一冊の本が輝いています。
「あれは……」
ゴルドが手に取ると、突然ゴルドは苦しみました。
「が、がああああ!」
「ゴルド!」
床に膝をつき、光が少し落ち着きました。
『大丈夫です』
「でも、結構苦しそうでしたよ」
『ちょっとだけの間なので。それに今はゴルドではありません』
「へ?」
僕はゴルドが何を言っているのか分かりませんでした。
『僕は『カンパネ』。久しぶりです。トスカ、シャムロエ』




