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寒がり店主の秘密

 魔術研究所。


 ここはこの大陸のありとあらゆる魔術について研究している場所ですね。


「そして検問がまたあるのですか」


 この国の重要箇所なので、ここでも手荷物検査などが行われています。


「……最初の検問より厳しい。神術以外にも聖術、魔術、精霊術に似た術を使って怪しい物が無いか確認している」

「凄いですね。通れるかどうか」


 凄く不安な状態のまま一歩、一歩と歩き出しました。



「フーリエ様! 今日は何用で?」


「ワタチの部屋に行きます。この人達はお客様なので丁重に」


「はっ! ようこそ!」



「「「え!」」」


 フーリエが先ほどから先頭を歩いていましたが、一体何が!


「あ、言い忘れていましたが、ワタチはこの魔術研究所で『館長』をしています。実は偉いのです」

「あのフーリエが!」

「シャムロエ様! 失礼ですよ! ここではワタチが一番……ほっぺをくにくにしないでくあはい!」

「予想以上にモチモチしていて面白いわ……」


 真顔でシャムロエはフーリエのほっぺたを触っています。マオがその後ろで『……マオも触りたい』と今にも言いそうです。


「フーリエが次の代表者。納得はできますね」


 ゴルドだけが驚いていませんでした。


「理由があるのですか? 大陸中にフーリエがいることが原因とかでしょうか?」

「いえ、それ以前にフーリエは『増える前』から優秀でした」



 ……増える前?



「あ、今のは忘れてください」

「無理です!」

「ゴルド様! 何さらっと言っているのですか! あと少しでワタチについてお話をしようとしたのに!」

「あはは、すみません。ボクには隠し事がどうも苦手なので」


 フーリエが怒りながらゴルドの手を掴んでいます。一見するとただ手を繋いでいるように見えますが、あれってきっと魔力を吸っているのですよね。ゴルドにとっては地味に辛い仕打ちですね。あ、なんかゴルドの顔色がみるみる悪くなってきました。


「こほん。その話はワタチの部屋で話しましょう。そこではシャムロエ様やマオ様の話もできるので」

「私の?」

「……マオの?」


 まさかフーリエから色々話されるとは思っていませんでした。


 ☆


 フーリエの部屋と呼ばれる場所は『館長室』でした。つまり偉い人の部屋ですね。

 沢山の本や道具があって、中には見たことも無い物も多く存在します。


「さて、まずはゴルド様が言っていたワタチについてですね」

「はい」


 椅子に腰掛けフーリエを見ます。


「まずワタチは『元人間』です」

「人間……え、どういう事ですか?」

「ゴルド様が『増えた』と言ったのは、とある闇魔術を使って『自分を増やしたから』なのです」

「自分を増やす……」


 そんな魔術がこの世に存在するのでしょうか。召喚術などで似た何かを呼び出すなら聞いたことがありますが。


「千年前、ゴルド様がとある難敵と戦う為、手助けをしようと思い行った『ドッペルゲンガー召喚』という闇魔術を使って自分を増やしました。単純な戦力の増加です」

「でもゴルドが『認識阻害』で封印されていたのよね?」

「そうです。ワタチは最終的に手助けが出来ず、『沢山のワタチ』が残った状態でこの世を生きなければいけなくなりました」

「え、つまり千年間ずっと沢山のフーリエが存在していたの?」

「そうです。千年間全てのワタチと記憶の共有を行いながら、ずっとゴルド様を待っていました」


 それは途方も無いというか、どうしてそこまで。


「……記憶の共有は負担が大きい。一カ所にまとまることはできないの?」

「『ドッペルゲンガー』は同じ自分と遭遇すると、互いに自我を持ち始めて互いの存在を消し合うという欠点があります。つまり今ここで別なワタチを呼べば、ワタチはワタチでなくなり、別なワタチはワタチを倒しにかかります」

「戦力の増加のつもりで使ったのに、結局一人しか一緒にいられない。意味が無いんじゃ?」


 シャムロエの言葉はもっともです。もしかして何か大きな理由が?



「あの頃は……若かったのです」



「いや、若いから許される何て思ってたら牢屋とかは必要ありませんからね!」


 真剣に聞いていたのに、急に転びかけましたよ!


「ということで、ワタチは元人間です。そしてゴルド様も納得と言ってましたが、この魔術研究所の館長はワタチで、その前はワタチの姉のミリアムなのです」


 なるほど。姉妹揃って優秀だったのですね。


「フーリエも色々苦労しているのね。だからこんなにほっぺたもプニプニして」

「それは関係あひはへん! しゃふほへはは、ふにふにしないへふははい!」


 シャムロエの時々空気を読まずにマオやフーリエにいたずらする精神、実は嫌いじゃないですよ。


「でも、その話と私やマオの話はどうつながるのかしら?」

「そうですね。最初にマオ様の話をしましょう」


 そう言ってフーリエは一冊のボロボロの本を取り出しました。

 そこには僕が見たことの無い文字が書かれています。


「……理解。マオの出身地は把握した」


 それだけ言ってマオは引き続き本を読みました。


「フーリエ、この本は?」


 僕が質問をすると、フーリエは答えてくれました。


「これは魔術研究所の初代代表の『マリー様』による日記です。そして『マリー様』はこの世界へ転移し、帰還した人物でもあります」

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