☆トスカ達 対 黒き邪神
「これが外に出ると大変です。この場で倒しましょう! 『投石』!」
「……『セイクリッド・レイ』」
『ガアアア!』
全く効いた感じがしません。と言うより怪物は最初に見た時よりも大きくなっています!
焦っていると、後ろからうめき声が聞こえました。先ほど気絶させた魔術師の声です。
「目が覚めたのなら答えてください! これは何ですか!」
「うう、あ、あはは、封印が解けたか。これで我々はようやく解放される」
「どういう意味ですか!」
「この邪神を消滅させず、しかし外には出さない様に押さえる事が我々へ命じられた使命であり、後十年はこの部屋で生活を余儀なくされる予定だった。それがこうなってしまっては終わりだ……終わりだあああ!」
完全に理性を失っています。軽くクラリネットを吹き、魔術師の心を落ち着かせます。
「あはは、あは……あ、不思議だ。何故か心が。我々がその楽器を吹いたときは変な音しか出なかったのに」
「答えてください。どうやったらあの怪物は封印できますか!」
「そんなの知るわけが無い。あの邪神は数百年もここで閉じ込められていて、何代も引き継がれた化け物だ」
「そうですか。ではもう一度眠ってください!」
強めに手を叩いて、その音を魔術師にぶつけます。魔術師は気絶し、その場で倒れました。
「トスカ! 何か良い方法は無いの? おっと!」
暴れる怪物の攻撃に三人はなんとか耐えていました。
何か良い方法と言われましても、僕の音一つでは相手を怯ませるしか方法は……。
ふと、周囲の音を見てみました。
音の反射が凄いです。よく見ると壁は全て鉄で覆われています。
「そうです、鉄を利用して音を一時的に溜め込んでで放てば!」
「良い案が出たのね! 早く!」
「ゴルド、鉄の柱を六本生成してください!」
「無理です! 今の腰痛から大きな鉄の柱を六本も生成できません!」
「でしたらシャムロエ、周囲の壁を思いっきり破壊してください。ゴルドはその鉄を利用すれば負担が減りますよね?」
「わかりました!」
「マオは中央の怪物の足止めをお願いします!}
「……なかなかの高難易度」
「パムレッー」
「……マオの本気の二割を出す日が来たみたい」
単純ですね!
「てえい!」
シャムロエが周囲の壁を破壊し、壁からは大きな鉄の塊が出てきました。
「溶解して……不純物を取り除き……縦に伸ばす!」
ゴルドが鉄の柱を生成していきます。
「……『火柱』『雷針』『プル・グラビティー』!」
『があああああああああああああ!』
マオが怪物を倒しに……え、このままだとマオの魔術で倒せるのではないのでしょうか?
「……トスカ、過大評価は嬉しいけど、相手は邪神。回復速度がマオの攻撃を上回っている」
「現実はそう甘くないですね。ゴルド、準備はできましたか?」
「今できました。やってください!」
「では……」
そして僕は思いっきりクラリネットを吹きました。
悪魔の封印。いえ、邪神の封印と念じて、音は六本の柱に向けて放ち、鉄の柱は大きく揺れています。
そして。僕の『音を操る力』により鉄に溜め込まれていた音が一気に放たれます。
『ぐ……があああああああああああああ!』
邪神の禍々しい声が鳴り響き、腹部には大きな穴が空きました。
そして徐々にその穴が広がり、やがて邪神の姿が全て消えました。
「……なんとか勝てた?」
「はい。腰痛も無くなりました」
「同じく無くなったわ」
あの、腰痛の有無で相手が消えたかどうかを確認するのは止めて貰って良いですか?




