黒き怪物
「何者だ!」
「ボクは中央、シャムロエは左、マオは右でお願いします!」
「分かった!」
「……ん」
そう言ってシャムロエ達はバッと移動して、部屋の中にいた魔術師を倒しに向かいました。
僕のクラリネットは……ありました!
ゴルドが狙っている人間がクラリネットを持っています!
「『プル・グラビティ』!」
「うお!」
「おっと、トスカ。受け取ってください! 『ウインド・マッド』!」
「はい!」
クラリネットを取り戻したゴルドはそのままクラリネットを投げるかと思いましたが、風の魔術を使ってクラリネットを僕の所まで渡してくれました。落とす心配もあったので助かります!
「『投石』!」
「があ!」
そしてゴルドは魔術師を一人気絶させます。
パシッ!
何かが割れる音が見えました。音の波紋を辿ると……中央の怪物です。でも一体何が?
そもそも中央の怪物は苦しんでいるようにも見えますし、その場から動きません。
「……『火球』」
「むう、『水柱』!」
「……遅い、『雷針』」
「早っ! があああ!」
雷の様な物がマオの手から発せられ、魔術師に命中しました。
パシッ!
また見えました。それも同じ場所からです。これってまさか……。
「シャムロエ! その魔術師を気絶させないでください! 嫌な予感がします!」
「え!」
「がはっ!」
既にシャムロエの拳は相手の魔術師の顔を殴っていました。
そしてシャムロエが相手をしていた魔術師は不気味な笑みを浮かべて、その場で倒れました。
パリイイイン!
何かが割れ、砕ける音。一体何の音が。
「これはまずいですね。腰痛が酷くなりました。あの三人は中央の化け物を束縛していた鍵か何かだったのでしょうか」
「立ってるのがやっとね。トスカ、腰痛治療お願いできる?」
「のんきなことを言う前に中央の怪物をなんとかする方が先です!」
「……トスカの言い分が正しいかも。『グランド・ウォール』!」
中央の怪物は口から黒い炎を吐き出し、僕達に向けて放ちました。
マオがとっさに土の壁を魔術で生み出し、それを防ぎます。
「あはは、土の壁はボクの専門なのに先を越されましたね」
「……何を言っているかわからないけど、あの怪物をなんとかする方法は無いの?」
「トスカ、レイジに使った悪魔を封印する音を出せない?」
「やってみます!」
僕は思いっきりクラリネットに息を吹き込みました。
悪魔を封印するという念を込めて、一直線に音を鳴らします!
ぴいいいいいいいいい!
その音は大きな怪物の腹部を貫きます。
が。
一瞬怯んだ様に見えましたが怪物は生きています。
「な、何故!」
「トスカ! しっかり念じたんでしょうね!」
「レイジの時よりも強く念じましたよ!」
「言い争いは後にしましょう! 『土壁』!」
怪物が再度口から黒い炎を出しましたが、ゴルドが四角い土の壁を生成して、怪物の攻撃を防ぎました。
「……む、やっと分かった。あれは悪魔だけど悪魔じゃない」
マオの目が黄色く光っています。おそらく怪物の魔力や能力を使う術を使っていたのでしょうか。
「……あれは悪魔だけど、それよりも高位な存在。強いて言えば『邪神』」
『ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
中央の怪物は大きな叫びを上げると、背中から翼の様な物が生えてきました。
これは……もしかしてなかなか危険なのでは?




