☆ミッドガルフ城侵入作戦
「うう、ごめんなさいです」
フーリエは目に涙を流しながら僕達に謝っていました。
「どうして黙っていたのですか? それほど秘密にすることでも無いでしょう?」
「そうなのですが、既に予約は一年以上も埋まっていて、謁見は難しいのです」
「でも、それならそうと言ってくれれば」
そう言うと、フーリエは僕の目をまっすぐ見ました。
「トスカ様なら何かやってくれるかなと」
「ゴルド、もう一度『砂壁』お願い出来ますか?」
「わかりました。『すな」
「ごめんなさい! 本当に反省していますし、今のも本音なので許してください!」
『砂壁』でくすぐられる刑がどれほど苦しいのかわかりませんが、それほど辛いのですね。
「じゃあ普通に会う以外の方法となると、忍び込むしか無いわよね?」
「警備は厳重です。また、『ゲイルド魔術国家』から派遣された魔術師もいるので、魔術を使ったらすぐにバレてしまいます」
「……『認識阻害』でも無理?」
「それが、門には『特別な訓練を受けた人』という人物がいて、その人のせいで『認識阻害』もバレてしまいます」
確かゴルドに使われていた術ですよね。使われると『そこにある』という概念を消し、『見えなくなる感じになる』という術ですよね。でもどうやってそれを見破るのでしょう?
「あとは最悪一つ、可能性の高い方法が……」
「早くそれを言いなさいよ」
「門の前で悪いことをすれば捕まって、城の地下の牢屋に行くことが出来ます。敷地的には侵入ということになりますね」
「牢ですか、あまり良い思い出は無いですが」
「ただ、捕まる際は鉄で作られた手錠がかけられます。身動きも取れないので侵入してもその後上手くいくかどうか」
ガラン王国の牢は寒かったです。何も無い状況で、初めての牢屋。正直とても怖かったですね。
そんな事を思っていたらゴルドが一つ提案をしました。
「ふむ、ボクに一つ提案があります」
「何ですか?」
「鉄で作られた手錠なら、ボクが壊せば良いだけです。牢屋に入れられたらすぐに手錠を溶かし、行動に移りましょう」
……ああ、そういえば鉱石の精霊ですものね。それくらいはできますよね。
「トスカ。念のため言いますが、ボクも『心情読破』が使える事を忘れないでくださいね?」
「知ってますよ。どうして僕の周囲は皆心を読むのですか!」
まあ良いです。ゴルドが手錠を溶かすなら大丈夫でしょう。
マオも鉄の柵を曲げた実績がありますし、心配ありませんね。
「だとすると、どうやって捕まるかね」
「それなら良い方法があります」
フーリエが右手を挙げました。いや、あまり期待はしていないのですが。
☆
「何のようだ」
全身フルプレートの兵士に声をかけられました。
僕達は今、ミッドガルフ王がいる城の門にいます。
「実は王に会いたいと思いまして」
「予約者なら話は別だ」
「予約はしていません。ただ、緊急の用事でして」
門番が次々と現れ、僕達を囲っています。
「要件を話せ。場合によってはここで始末をする」
「それは困ります! ただ、『鉱石を備蓄している』という情報を入手したので……」
僕の話に門番は武器を取り出しました。
「戯れ言を……だが、その情報がどこから入手したか聞く必要があるな。今すぐ逮捕しろ」
「は!」
「これも没収だ! 珍しい武器か?」
「ああ、それは!」
予想するべきでしたね。逮捕されたら手持ちの武器や道具も没収されますよ。僕のクラリネットは門番によって没収されました。
大切なクラリネットが没収されたのは悔しいですが、とりあえず後ほど奪還するとして、今はゴルドの作戦を信じましょう。
門番が鉄の手錠を持ってきて、僕たちの腕に近づけます。頼みましたよ、ゴルド!
そう思いゴルドを見ました。
「腰が痛いです」
「なんか腰が痛むわね」
あ、何かこれ、嫌な予感が凄くします。冷たい鉄の手錠がガシャリとはめられ、ゴルドは苦笑しました。
いわゆるこれ、作戦失敗ってやつですね!




