☆♪楽器屋再来
今回もおまけで劇中曲を作成しております。url(Twitter)はあとがきに記載しております。
悪魔と言っても、色々種類があるそうです。
フーリエの場合は元々人間で、とある事情で悪魔になったとか。
『理由はいずれ知るでしょう』と言って今は話してくれませんでした。
ですが一つ言えるのは。
『ワタチは悪魔ですが元々は人間です。悪魔にならざるを得ない状況があっただけで悪さしようとは思っておりません。それだけは信じてください』
とのことでした。
ゴルドからもお願いしますと頭を下げられ、こちらとしては宿が無料になるので断る理由はありませんが……。
それよりも別な問題が登場したので、そっちをどうにかしたいです。
「笛吹きの兄さん! 探したぜ!」
「また貴方ですか。楽器屋さん」
以前鉄琴という楽器を使って一緒に演奏したお兄さんが僕の目の前で腕を組んで立っていました。
本当はこの先のミッドガルフ王のいる城へ行きたいのですが、道の中央に立たれては止まるしかありませんよね。
ゴルドが戸惑いながら僕に質問をしてきました。
「この人は誰ですか?」
「この人は楽器屋です。僕のこの『クラリネット』の様な演奏できる道具を売っていて、以前ちょっと演奏しあったことがあるのです」
あの時は僕の変な意地が先行して演奏をしました。結局シャムロエの謎の一定のリズムに負けて、二人とも息を切らしてしまいましたが。
「笛吹きの兄さん。俺は強くなった! そして強力な仲間を連れてきたんだ!」
「仲間ですか?」
「紹介しよう。低音の獣と呼ばれた男。それもテューバラーだ!」
楽器屋のお兄さんの名前も知らないのに、低音の獣の名前を先に知るとは思いませんでした。
それにしても大きな金属で作られた楽器ですね。
「この楽器は低音で心地の良い音が出るんだ。テューバラー、ちょっと音を吹いてくれ」
「おうよ」
『ブオオオオオオン』
おお、これは凄いですね。
見えた音も力強く分厚いです。これは面白い音ですね。
「ふふふ、こっちは鉄琴と管楽器があるんだ。前のような押されて引き分けになる要素がねえぜ。さあ勝負しようぜ!」
「勝負って……こっちはクラリネット一つしか無いのですが……」
そこで僕はゴルドと目が合いました。
鉱石精霊。
あ、鉄くらいなら作れますよね?
「トスカ、ちょっと待ってください。鉄の生成は疲れるのですよ?」
「心を勝手に読んだのならそれくらいしてください。これは僕にとって譲れない戦いです。ゴルドもこれから僕と旅を続けるなら、これくらい乗り切ってください」
「もう一つ、ボクは演奏経験無いですよ!」
「心配いりません。全部音を『掴んで』『それっぽく』『良い感じに』するんで」
「ぼ、ボクは鉱石精霊なんですが……」
ボソッと言ってゴルドは影に隠れました。
「どうした笛吹きの兄ちゃん。お仲間と喧嘩か?」
「ふふふ、僕にも味方が一人増えたので、紹介しますよ。鉄琴を司る奏者です!」
そしてゴルドが、楽器屋とそっくりな鉄琴を持ってきて僕の方へ来ました。
「なっ! 俺の鉄琴は珍しい分類なんだが、それがそっちにもあるだと!」
「さあ、勝負ですよ!」
「あ、タンバリン。今回も入るわね」
♪
「はあはあ」
「なかなかやりますね」
「トスカ、貴方は前もこんな熾烈な戦いを?」
「こふーこふー(酸欠)」
四人はその場で膝を地につけていました。
意外にもゴルドは僕が操るまでも無く、その場で即興の演奏をしてくれました。演奏経験が無くても自分で生成した鉄だから何となくできたのでしょうか。
とはいえ、時々僕が音を掴んで調整はしましたけど、これは将来に期待ですね。
低音の獣テューバラーもなかなか凄い演奏をしてくれました。
楽器屋のお兄さんも相変わらず支えと主旋律の切り替えが凄いです。
そして。
「「「「どうして貴女はブレずに叩けるんですか!」」」」
「いや、だから私に矛先に来るのは変だと思うわよ!」
シャムロエがタンバリンを持って苦笑していました。
「……この世は理不尽の塊。今回は四人にとっての理不尽がシャムロエだった。マオはそれをそっと見守ることとする」
「パムレットをあげても?」
「……ぐ、ぱ、パムレット一つじゃ足りないほど今回の状況はシャムロエが理不尽だった」
二つならシャムロエの味方に行ってたのですね!
「笛吹きの兄さん。良い勝負だった。次に会うときはもっと人を呼ぼう」
「もう呼ばないでください。ゴルドが倒れます」
「ボクを巻き込まないでください!」
そして、謎の握手を交わして、僕達はミッドガルフ王の城へ向かいました。
王に合う前の余興にしてはなかなか楽しかったですよ。
おまけの劇中曲です!(Twitter)
https://twitter.com/kanpaneito/status/1116697250032340993




